エリアルの願い
アリアが迎えに来てくれたのに、お爺様の部屋をノックするのに長く時間がかかった
車椅子を押してもらい、ようやく部屋に入る
私はサミュエルの形見を胸に抱いて車椅子から立ち上がった
「ああ……エリー」
それ以上、言葉が繋がらないお爺様に、私はもっと胸を痛ませる事を言おうとしている
でも、どこか受け入れて頂ける予感はしていた
テーブルに抱いていたペンダントを置いてお爺様を真っ直ぐ見て言った
「サミュエルの最後の手紙です。見てあげて下さい。」
お爺様が椅子から立ち上がり水晶のペンダントをまるでサミュエルを高い高いするようにかざして目を細めた
次の瞬間、目を見開き部屋の温度が下がっていく
サンクフリードの魔力は氷属性だ
室温はそのまま下がり続け、着ていた服もバリバリと氷始める
そこでアリアがいたことに気付いた
寒さで凍えるアリアをさがらせて私は口を開く
「犯人は叔父さまでした。」
部屋の温度がゆっくり上がってきた
お爺様は私を見て今度は言葉を繋げた
「ああ、エリー、そうしているとリアムに良く似ているな」
私も応える
「ええ、お父様の子供ですもの、男前でしょう?」
私を見てお爺様が続ける
「お前が髪を切ったのは、領主になる覚悟があると言うことで間違いないかね」
私は残った一房の長い髪を切りお爺様に差し出した
「はい、ザッケローニ叔父様は我が領地を狙っています。
必ず後継者に名乗りを上げてくるでしょう
承諾されれば、叔父様の統治の下、サンクフリードの民は好き勝手にされ、辛く苦しい生活を余儀なくされます
お父様の領地は私が父の隠し子として守りたいと存じます」
お爺様は差し出された髪をしっかり掴んで下さると、そっと近くのサイドテーブルへ置いた
「エリーすまない、辛い思いをさせるな」
それから静かにドアを開けた
「着いてきなさい」
私の少し前を、お爺様がいつものしっかりとした歩調で歩いている
また地下室に着くと、3人の亡骸を通りすぎ、目視出来ない壁のボタンを押した
促され開いた扉の先を進むと、豪華な小部屋とその真ん中に中に浮いた手のひらサイズの浮いた氷の中で羽根のついた少女が、目を伏せているのが見えた
驚いてお爺様を見る
すると、目線を合わせて喋らないように、と人差し指を口元に当てた
氷の少女はなんと、頭にダイレクトに言葉を流してきた
----ああ、久しぶりだね。エリアル・サンクフリード-----
考えるだけでいいのか解らず、一応声に出さずに返事をした
----私をご存知なのですか?---
----サンクフリードの者は全員知っている。産まれてすぐ私が名前を着けているからね---
それなら……
-----私は何故こちらに呼ばれたのですか?---
氷の少女は瞳を開けた、その美しさに内心見とれながら質問した
---エリアル、お前の願いを叶えるため--
---願いを聞こう---
こんなチャンスもう巡って来ないだろう
私は思いをありったけ込めて願った
--精霊様、甥のサミュエルが、家族がザッケローニに殺されました
今の時代ではまだ男性にのみ、領主継承権があります
叔父から領地を守る為、私を男性にしてください。お願い致します…-----