悪夢の目覚め
次に目が覚めたらベッドの中にいた
なぜベッドにいるのだろう
頭がまだぼんやりとしている
皆で別邸へいく途中で馬車が揺れて・・
見慣れた別邸の天崕を見つめながら徐々に目が覚めていく
お父様達は無事なの?
周りを見渡すと、数人のメイドとお爺様
そして医者がいた
涙で目元の腫れたメイド達、酷く疲れた様子でベッド側で近くの椅子に座っているお爺様に聞いた
「お父様達はどこ?」
言葉を発した途端、メイド達が泣き崩れる
その様子に酷い状態なのだと気付く
私の問いにお爺様がゆっくりと話し出された
リアム達は何者かに殺された
と、馬車の外でお父様は何本もの剣が背に刺さり八つ裂きに、ユリアはサミュエルを守る形で心臓を一突きにされ、その刃はサミュエルにまで達していた
見つけた時には三人とも息をしていなかった
「お前だけでも助かって良かった」
そう話された
私だけが生き残った
その事実に目の前が真っ暗になった
遺品として水晶のペンダントを渡された
サミュエルは亡くなってもペンダントを強く握っていたらしい
まだ新しい血のこびりついたペンダントを渡され、急に実感が沸いてきた
ポタポタと手に水滴が落ちてくる
それが自分の涙だと気づいた時には号泣していた
うああああああああっ
涙が溢れて止まらない
お爺様も顔を手で隠し泣いている
私は血の着いたボロボロのドレス姿の状態で門の前で倒れている所を警備の兵士に発見されたと言う
周辺を確認の為見回ると、短剣が首に刺さった野盗の死体が見つかったそうだ
私は高熱を出しており、丸3日意識がなかったという
お婆様はショックで寝込んでいるそうだ
「お爺様、お父様達に会わせて」
まだ涙が流れるままはっきりそうと
私のお願いでメイドに車椅子を用意させ別邸の地下に運んでもらった
一人になった後、車椅子の車輪を回して前に進んだ
顔に白い縁飾りの着いた布がかかった遺体が3人ベッドに横たわっている
3人とも服が着替えられて傷は服に隠れていた
一番近くの布を捲ってみる
ユリアは長い睫毛を伏せてまるで眠っているようだ
一人一人布を捲る
お父様はいつもの精悍な顔
サミュエルはすやすやと眠っているようだった
その小さな手にペンダントを乗せて呟いた
「サミュエル、あなたを殺した相手を私に教えて」
お父様から頂いた水晶のペンダントはサンクフリードに代々伝わる家宝で、身に付けた者の未来を見通すと言われている
水晶はぼんやり光り、その光の中に映像を映し出した
野盗の一人がお父様の息が無くなったのを確認し、誰かに知らせている
嫌な予感がした
そして映った姿にああ、やっぱりと思った
ザッケローニ、その人がニヤリと笑っている
自分は手を汚さず、兄をも殺し領地を手に入れる
そして集まっている野盗は取り囲まれてザッケローニの兵士に無惨に殺された
そこで映像は消えた
サミュエルはそこまで生きたのだ
ペンダントを近くのテーブルに置くと、その小さな手に私の額を合わせて言った
「ありがとうサミュエル、よく頑張ったわね」
また涙が溢れそうになったが、悲しみより怒りが沸き起こった
私の顔をみた人がいたら、きっと恐ろしくて口が聞けなかっただろう
ザッケローニ、家族を殺したお前を許さない
お父様が守った領地も、何一つお前には渡さない
私が生き残ったのは、この為だったのだ
死神はきっと神の姿をしてやってくるのだろう
神はとっくにいなかったのだ
そうでなければ、皆無事なはずだもの
ふと、昔お母様が話して下さった話を思い出す
我が一族は皆、氷の魔力を持っている、幼い頃、願いを叶えて下さる氷の精霊様の話を、寝物語にしてくれた
その話が本当なら、いや、退路はもうないのだから
--掛けるしかない
車椅子から立ち上がって遺品に混ざった短剣を見つけると、自分の髪を一房残してざっくり肩上まで切った
そしてメイドを呼ぶために、ベルを鳴らした