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第九話 【荒ぶる鷹女】

エルとリリエルは、向き合う形で20mほど離れて立っている。


二人からさらに数m離れた位置で、リズたちがおり、アニスは二人のちょうど真ん中の位置から数歩下がった場所に立っていた。


「失神などの戦闘不能、もしくは棄権にて勝敗を決します。

上級以上の殺傷力を持った魔法は、禁止です。よろしいですね?」


「ええ、もちろん問題ございませんわ。」


「わかった。」


アニスの確認に、2人は了承を返事をし、魔導具を手に取る。

エルは魔銃イグニスを。対するリリエルは左手を天に掲げ、魔力を注ぐ。すると、人差し指に嵌る指輪が光り輝き、光が消えた頃には小さな盾が装着された小手へと変貌を遂げていた。

互いに得物を手にし、魔力の高まりを感じ、目の前の相手へ集中をする。


「始め!」


アニスの掛け声とともに、リリエルが素早く魔力を篭手型の魔導具に流し込む。

魔力が魔導具内に刻まれたレリーフへ流れ、本来必要である詠唱やイメージなどの魔法発動までのプロセスを省略化する。

彼女魔法によって周囲の空気中の水分が冷やされ凝固する。

その大きさは拳大であり、数は十を超える。


そして、最後に魔法名を唱えることで、魔法は完成する。


氷結(アイシクル)の礫(・バレット)


リリエルがエルに向かって腕を突き出すと同時に、十数個の氷のつぶてが発射される。


装填(リロード)


エルがそう唱えると、空の弾倉にエルの魔力が充填される。

イグニスは弾頭に宝石が装着された弾丸を使用しない時は、このようにエルの魔力を直接注ぎ込んで、無属性の弾として打ち出すことを可能としている。


装填数は六、弾数的にはすべての氷のつぶてを落とし切れないのだが、エルがイグニスに振り抜きながらトリガーを引く。


そうすると、魔力の弾丸は銃口のところで広がり、空中へ膜のような光を形成する。

次の瞬間、氷のつぶての殆どがその膜にぶつかり、霧散したのだった。

その結果を分かっていたのか、エルは他のつぶてを2発の弾丸で消し飛ばす。


「ふふ、やりますわね。では、これでどうかしら!」


リリエルは余裕の笑みを浮かべ、さらに氷のつぶてを作り出し、射出しつつ、エルに向かって走り出す。


「へぇ、距離を詰めに来るんだ。」


エルはリリエルの意図を読み、ニヤリと笑う。


「妥当だな、エルの武器は完全に遠距離武器だからな。彼女がアースリウムの一門なら・・・。」


「ええ、氷のつぶてを飛ばして迎撃で隙をつくり、近接に持ち込む気ね。近接こそあの一門の持ち分だし。」


オリバーの言葉をリズが続ける。


一度の魔法のぶつかり合いで、リリエルは遠距離では決着がつかないとすぐに判断し、得意な接近戦に切り替えたのだ。


二重(ダブル)衝弾(・インパクト)


迫るつぶてを気にすることもなく、エルは足元から1m先の地面へ引き金を引く。

通常一発のところを、二発分弾丸を撃ち込んだことで威力が増し、爆音を上げて地面から石や砂が激しく飛び散った。

リリエルの氷結(アイシクル)の礫(・バレット)は、舞い上がった石などに、ことごとく落とされた。

彼女自体もエルに向かっていたために、自ら飛び込む形で巻き込まれ、足が止まる。


「こんな、嘘でしょ!」


悲鳴を上げながら、リリエルは石をモロに被弾する。


「り、リリエル様ー!」


取り巻き1〜4も、リリエルの被弾に悲鳴を上げ、地面に転がった。


「えっぐぅ〜。って何であの人たちも転がってるの?」


「わからんが、どっちもめちゃめちゃ痛そうだなアレ。」


メリッサとレンジも痛そうな顔をして感想を漏らす。


「こ・・・この私に、よくもよくもぉ!」


「貴女が勝手に突っ込んできただけでしょ。

どうする、まだやるの?ギブアップしてもいいのよ?」


ふらふらと立ち上がるリリエルに、エルは呆れたように答え、続行するか尋ねる。

エルの軽い態度により怒りが増したのか、リリエルから魔力が怒涛の如く溢れ出る。


「アースリウムの名に掛けて!そんな恥ずかしい真似はできなくってよっ!!」


周りから声が上がる。エルたち以外の声だ。エルがふと周囲を見渡すと、校舎から学年問わず、何十という生徒たちが二人の決闘を見ていたのだ。


リリエルは篭手型の魔導具に装着された小さな盾を、フリスビーのように投げ飛ばす。

しかし、その盾は視線が外れていたエルの銃弾によって迎撃される。


「悪いわね、視えてるのよ。」


装填(リロード)】【三重(トリプル)衝弾(・インパクト)


三発分の衝撃がリリエルに当たり、その身体を吹き飛ばして、彼女の意識を奪う。

映像としてではなく、魔力の流れを視ることでエルはリリエルの攻撃を防いだのだ。これは、エルが持つ【魔眼】が可能としているのだ。


「それまで、エルの勝利です。」


アニスは倒れるリリエルを見、エルの勝利を告げた。

取り巻き1〜4たちは大急ぎでリリエルに駆け寄る。

まさか、アースリウムの彼女が敗北をするとは誰も思っていなかったのだ。


「貴女たち!これに懲りたら、平民だろうと何だろうと、ちょっかい出さないのよ!

強さに身分なんて関係ないんだからさ。」


エルは銃口を突きつけて言う。

本来王女であることがバレたら台無しなセリフだと、エル自身全く気づいていなかった。


「覚えてなさーい!地味眼鏡!!」


取り巻きたちは、リリエルをかかえて走り去っていった。


「ほんっとふざけた連中よね。そこは私と手を取り合って、認識を改める場面じゃないの?」


「ないですね。考えが甘いですよ、エル。」


「そうは言うけどさ、子供のときからあんな考えだから、真っ当な貴族がいないのよ。」


「耳が痛い言葉ね。」


エルとアニスのやり取りに、リズが苦笑しながら混じる。


「その通りだな、非常に申し訳ない限りだよ。」


オリバーたちのさらに後ろから現れた人物が、そう言い切る。


「・・・何故、貴方がここに・・・?」


そこにいたのは、魔法戦技科のラークであった。


「偶然近くを通り掛かった際に、非常に大きな物音を聞いてね。

来てみれば、ヴィオラ嬢でしたので、少々見学させていただいたのだよ。

まぁ、詳しい話は別室でお聞かせ頂こう。ついてきたまえ、ヴィオラ嬢と・・・、審判もしてたブラッドボーン嬢も同行願おう。」


ラークは一瞬思考をしたのち、アニスにも声を掛ける。


「他のみんなは次の授業に向かいたまえ。では、行こう。」


半ば強引解散させられ、エルとアニス以外は授業に向かわざるを得なかった。


「いやぁ〜、今のは凄かったね。」


覗いていた中庭から視線を戻し、赤髪の男子生徒が後ろに座る友人に声を掛ける。


「あぁ、眼鏡の女子の方はかなりの逸材だな。」


「彼女が我が倶楽部に入ってくれれば、今年の魔校祭は良いとこ行けそうなんだけどね・・・。」


「その辺りは部長に相談しろ、部長が目をつけた候補でいっぱいかもしれんしな。」


「そだな〜。よーし、直談判してくるさ!」


赤髪の生徒と話していた緑髪の少年は、一言を残して走り去っていった。


「授業どうすんだ、あいつ・・・。」


赤髪の生徒は友人の出ていった扉を見て呟いた。





エルとアニスはラーク先導の元、実質授業をサボっていた。

中庭より、いくつか廊下を通る度に、授業のない上級生などとすれ違い、奇異な目で見られたりしていた。


しばらく歩いていると比較的人気のない廊下になり、突き当たりでラークが立ち止まる。

彼の目の前には非常口と書かれた安っぽい木の戸だった。その戸のに左手を突き出し、ラークは中指にはめている指輪に魔力を込め、何かしらの文字を指輪で書く用に、腕を動かす。


エルとアニスは興味津々で彼の両脇からそれを覗き込む。


動作が終わると、扉を下より溢れ出た光が勢い良く扉の表面を滑る。

光が扉をコーティングしたかと思った時には、扉はすでに別のもの重厚な扉へと変身していた。


「こちらだ、ついてきたまえ。」


ラークに促され、二人は再度歩を進める。

扉の中は螺旋状の階段となっており、10段ほど上がった先に様々本が収まった書棚が並んだ部屋だった。

それなりの広さがあるだが、調度品や書棚、部屋の主のものであろうデスクなどでスペースが埋まってしまい、あまり広さを感じられない。


「狭い所で申し訳ございませんな、殿下。」


部屋の主が室内階段を下りながら現れる。

ライティノス魔法学院院長、アウスデウス=ガイ=バルディウスであった。

私は、と言おうしたエルだが、アウスデウスが手を前に出し、それを制止する。


「知っておりますゆえ、ワシの前では普段通りで結構でございますぞ。」


「私は、普段からこの通りよ。

三姉妹の中で一番強くて、一番性格に難がある第二王女よ。」


眼鏡を取り、変身を解いたエルオーネが自虐混じりにそう言うと、すさかずアニスが一言添える。


「ご自覚あったんですね・・・。」



「あとでシバくわよ、アニス。」



「相変わらずでございますね、エルオーネ様。まさか、御身が私の授業にいらっしゃるとは夢にも存じ上げませんでした。」


いつの間にか片膝をついて、平伏のポーズを取っていたラークが口を開ける。


「いや、そこ空気読みなさいよエドモンド。バルディウスもアニスも平伏してないでしょ。

偉そうにするのが好きな姉上と違って、私は堅苦しいの嫌いなのよ。」


「承知。」


エルオーネの言葉に、ラークはすかさず立ち上がる。


「バルディウス、私の事知っているのは貴方たちだけ?」



「左様ですな。ただ、あまり目立ち過ぎるといずれバレますぞ。そこのラークくんのように。」



「私のことをアーモンドと呼ぶのは、殿下ぐらいですからね。すぐピーンと来ましたよ。」



「よっぽど嫌だったのですね。流石王国一性格悪い王女ですね。」


エルオーネがアニスを睨み付けると、アニスはそっぽを向いた。



「今回はご忠告と認識くだされ、殿下。

多少は我々でフォロー出来ますが、あまり激しいと庇え切れませんからな。」


「ご忠告ありがと。でも、私だって降り掛かる火の粉は払うから、あまり保証できないからね。

あ、そうそう、面白そうな本ありだから、また来るね。」


エルオーネは室内をぐるりと見渡したのち、出口へ歩を進めた。


「エルオーネ様、変身してないですよ。」


アニスは焦った素振りを見せることなく、エルオーネの顔をあとを追いかけるのだった。


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