メルヘン
私は知っているのよ?
あなたはどう?
ほかの人はまだ気が付いていないようね。
私は見ていたわ。あれは、つい最近のことだったから。
町を歩いていると髪型が気になるように、買い物中に窓の外が気になるように、車を運転していて空が気になるように、携帯を開いたときに買い忘れたものが思い浮かぶように、あなたの顔が思い浮かんだんのよ。
それくらい、いつも考えていたんだから。
あなたは知っているの?
まだのようね。
朝になっても起きてこないのに不思議には思わないのかしら。
私は見ているから。あれは、ついさっきのことだったから。
七人の小人と静かに暮らしていくように、お菓子の家を食べ切ってしまうように、魔法のランプが4つ目の願い事をかなえてくれるように、カボチャの馬車が消えないで残るように、あなたの顔を思いもしないところで見つけたのよ。
それくらい、いつも想っていたんだから。
私の世界から探していたウォーりーが消えてしまったのよ。落ちるはずの穴がどこにも見つからないの。
王子様が退治しないでほかの国で幸せに暮らしましたって、そういう話じゃつまらないでしょ?
白鳥だと思っていた鳥はただのガチョウでしたって、交換した魔法の豆は茹でてしまいましたって、井戸からカエルは出られませんでしたって、ガラスの靴は姉も履けましたって、あなたは私を思いもしないところで見つけたのね。
それくらい、いつも考えてはくれなかったようね。
私は見ているわ。これは、今ここでのことだから。