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ルル・ホープ=バレーに立つ ~ 天使の絶叫

※ ルル・ホープ=バレーに立つ


 自動車から飛び降りたルルは『インド大魔術団』の去った方角に向かってゆっくりと歩き始めた。

ルルが歩くとき宮殿の近衛兵の様に足を真っ直ぐに伸ばし交互に振り上げて歩く、腕は両脇にピッタリとくっつけて動かすことは無い、だが。


「緊急時走行モードに移行いたします!!」


その宣言と共にアスリートの様な完璧なフォームでルルは加速を始めた。

牧草地を突っ切り最短距離で『インド大魔術団』の追跡を開始する、自動車より早く機関車より早く!!


「僕たちもイサベラを追いかける」

エルマーは自動車を全力で後退させると、三叉路まで戻し誘拐犯の追跡を開始した。


『インド大魔術団』を追跡しているのはエルマー達だけではなかった、スマイリーサーカス団の緑の馬車もまた人智を超えた性能を発揮し追跡していた。


その馬車の中でダーシャが突然叫びを上げた。

「アクシェイ!!後ろから涅槃の宝珠の反応が、信じられない速度で追いかけて行きます!!」

だがそれが曲芸自転車の上のアクシェイ達に届くはずがない。

御者のドヌーブがそれを聞きとがめた。

「ダーシャ様どうされましたか!?」

「涅槃の宝珠を持ったあの者が、もうすぐアクシェイ達と接触するわ!!」



イサベラを人質にした『インド大魔術団』はそのまま道なりに進んでいた。

「奴らは来たか?」

自転車の先頭の席で指揮を取っていたアクシェイが叫ぶ。

「アクシェイ様、左側後方から何かがきます!!」

自転車の最後尾で自転車を漕いでいた団員が後方から接近する影を捉えていた。

「なんだと?道路ではないのか?」

「自転車の速度を上げるぞ!!」

アクシェイが号令を発する。


ルルは『インド大魔術団』との間を急速に詰めていた、暗視野赤外線モードのルルの瞳が赤く輝く、更に機械音を刻みルルの瞳孔が拡大した、ルルの4倍望遠の暗視野が街道上を走る自転車を捉える。


自転車の真ん中のサドル上の大男を土台にして、垂直方向にそれぞれ肩の上に7人の男が立ち並び、一番上の男がイサベラを抱きかかえている。

「器用な方々ですね」

ルルは自転車と並走を始めた、再び機械音を刻みルルの瞳が元に戻る。


だが驚愕していたのは『インド大魔術団』も同様だった、自動車が追いかけてくると予想していたが、まさか涅槃の宝珠の持ち主がこんな形で追撃してくるとは予想もしていなかったのだ。

それも人智を超えた速度でそれは追いかけてきたのだから。


「奴を倒し涅槃の宝珠を奪い返すぞ!!攻撃開始!!」


「これを(モッ)て宣戦布告と断定いたします!!」


『インド大魔術団』とルルは並走しながら戦いの火蓋を切ろうとしていた。


下から3番めの男がルルに向って大きな火の玉を口から吐いた、まったく想像もしていなかった攻撃にさすがのルルも驚き表情が変わる。


「手品ですか!?」

火の玉はルルの体の半分程の大きな物だが、幸いな事にあまり速度は速くない、ルルは姿勢を低くして火の玉を回避する、間を置かず下から5番目の男がチャクラムを投擲(トウテキ)してきた、それはかなりの速度でさらに軌道が曲がりルルに迫る、それをルルは(カワ)しながら蹴りを入れて弾き飛ばした。


「これは投げた者の手に戻るのでしたか?そうはさせません!!」


そこに下から2番めの男が花火の様な光弾をルルに向って放つ、その光弾の一つ一つが脅威と判断したルルは光弾の隙間を見極めながら回避する、そこに下から4番めの男が炎のフレームを吐き出したのだ、ルルは回避するが男は顔を動かしながら炎のフレームでルルをなぎ払おうとした。


ルルはその炎の柱を巧みに飛び越え回避する。


「止まりましたね!?炎を無限に吐けるわけではないようですね!!いやはや非常識な方々です」

だがこれは相手の出方を見る為の攻撃に過ぎなかった。


そこに6番目の男が何か黒い球体を投げつけてきた、それはルルの手前上空で炸裂し内部から無数の光弾が飛び出し四方に散る、それだけではなく光弾の幾つかはルルに誘導されるように向って来た、

そこにたたみかける様に光弾の花火が襲いかかる、ルルは瞬時に一筋の糸のような生存圏を見極めそこに体を滑り込ませていった。

そしてその時ルルに向って火球が放たれた。


「やぁぁぁーーー!!!」


ルルが気合で叫ぶ!!


光の光弾を体を(ヒネ)りながら(カイ)い潜り、そこに誘導弾と火球が迫る、それを限界で見切りルルは高く跳んだ、そして火球を飛び越える、誘導弾と火球がぶつかり閃光を上げ爆発する、その閃光を反射させながら(キラ)めく三基のチャクラムが三方から迫りくる、そこに炎のフレームがルルを薙ぎ払うべく迫りつつあった。


チャクラムの一つを蹴り上げ安全地帯を作り上げると、その反動で体を沈めた、チャクラムはルルのメイド服を切り刻みルルの髪を散らしたが、それらを回避しつつ逆立ち状態で両手で地面に着き、そこから両腕の力で後ろに跳ね炎のフレームをも回避した。


ルルは総てをギリギリの間合いで回避していたが、メイド服は裂け焼け焦げ髪も一部が焼けてしまっていた。


「そんな馬鹿な!!我々の攻撃を総て回避しただとーーーーー」

アクシェイが動揺したように叫んだ。


「人間の脳は二次元的ですね、それが欠点です」


その時、暗闇の向こう側から大きなどよめきと共に笑い声が聞こえてきた。

ルルは一瞬(イブカ)しげな表情を浮かべたが、それを気のせいだとして素早く打ち消し眼前の敵に向き直る。


「では、イサベラ様を返していただきます!!」


ルルは一気に自転車との距離を縮める、人間ムカデの一番下の大男を攻撃するかと思いきや、それは欺瞞(ギマン)だった。

土台の大男を守るべく、火の玉が放たれ、再びチャクラムが襲い来る、だがルルはそれらを回避しつつ自転車の後部座席で自転車を漕いでいた男の方向に跳び上がっていた。

その男の肩を踏み台にルルは更に高く跳び上がり、人間ムカデの最上階にいるイサベラを抱きかかえている男に襲いかかった。


「こいつ俺を踏み台にしやがった!!」

自転車の後部座席の男が吠える。


イサベラを抱きかかえていた男は両手が塞がっていたためその能力は伺い知れなかったが、ルルが怪力で男の腕をこじ開けイサベラを強奪すると、男を蹴り飛ばしそのまま牧草地に飛び降りた。


「イサベラ様の奪還に成功いたしました、速やかに離脱いたします!!」

ルルは気絶したイサベラを抱きかかえたまま、遠くに見える自動車のランプとおぼしき光の方向に向って走り始めた。


後方では『インド大魔術団』が方向転換しルルを追いかけてくる。


「『ガルダの(ギョウ)』よ!!」

アクシェイの号令と共に『インド大魔術団』は人間ムカデを解体し最初の扇子の様な形に組み変わっていく。


走るルルに向って後方から数々の猛攻が襲いかかる、それを総て上下左右斜めに回避していくが徐々にルルも傷ついて行く。


アクシェイが叫ぶ。

「今だ『光の盾よ』!!」

アクシェイの前面に巨大な光の壁が生じルル達に向ってくる、道端の石垣や街路樹と石畳みがその光の壁に粉砕されていく。

回避不能と見切ったルルはイサベラを抱きかかえ守る。


その瞬間ルルの背中が大きく砕けた!!







※ 天使の絶叫


「エルマー様、私も出ますわ!!ルルちゃん達が危機よ!!私にはわかる、二人を見捨てる事なんてできないわ」

「ブリジッド!?」

「鋼鉄の令嬢の名にかけて、賊を討つのが私の使命なのよ!!車を止めてくださいませ!!」

エルマーはそれに応じて自動車を急停車させた。

ブリジットが自動車から降り立った。


「緊急時ローラー走行モードに移行します」

ブリジットの足は巨大な真紅のロココ調のスカートで見えない、そのスカートの中で機械音が鳴り響く。


やがて甲高い機械音が鳴り響き始めた、そのサウンドはしだいに甲高く響き渡り、ブリジットが前進を開始した。

そのサウンドは甲高く狂気のような金属音と化し、狂ったバンシーの泣き声か、天使の絶叫の様な轟音を奏で上げ始めた。

そのサウンドは夜のピーク=ディスクリフトの闇を切り裂き高らかに響き渡った、それは何処(ドコ)はかともなく哀愁すら帯びていた、それは戦いに赴く鋼鉄の騎士達の戦歌の様に。


暗闇の中から感嘆と歓声のどよめきが上がる。


鋼鉄のローラーが石畳を噛み砕き火花を散らし、ブリジットの両眼の二条のビームが前方を遥か遠くまで照らしだした。

ブリジットは更に加速していく、真紅のドレスをはためかせながら突進していく。


スマイリーサーカス団の緑の馬車の中でダーシャが再び叫ぶ。

「アクシェイ!!前からもう一つの涅槃の宝珠がきます!!気を付けて」

だがその声もそこからは届かない。





「やったぞ、奴の動きが鈍くなった、捕まえるんだ!!」

光の盾を受け損傷したルルの動きは明らかに鈍くなっていた、それでもルルはイサベラを抱えてエルマーの自動車の光に向って走り続ける。


「奴はやはり人間ではなかったか!!」

「信じられぬ事だが科学とは恐ろしいものよ」


そこに闇夜を切り裂く金属の叫びが響き渡る。


「なんだこの音は!?」

アクシェイ達は遥か前方を見据える、やがて煌々(コウコウ)と輝く二対のランプと騒音が急激に接近してくるのを認識した。


「警戒せよ、新たな敵が来るぞ!!」







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