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メカ令嬢とメイドロボ  ~ ニルヴァーナの宝珠  作者: 洞窟王
第一章 モーカムへの旅
14/24

あまりにも素敵な贈り物 ~ 因果の道化回し

※ あまりにも素敵な贈り物


「君に見せたい物がある、だがその前に話さなければならない事がある」

エルマーとイサベラはそれに(ウナズ)いた。


「あれは作戦行動中の事だった、移動中にガラクタの山の中に埋もれていた朽ちかけた木箱を見つけたのが総ての始まりだった、箱が妙に気になって持ち帰ってしまったのだ」


「箱には、古ぼけた羊皮紙の様な断片と、気味の悪い呪物の様な物が納められていただけだった、私が学者だったら興味を惹かれたのかもしれない、多少は調べたがそのまま帰国して手持ち金庫に入れたまま地下室に長い間放置していた」


「たいした価値が無いと判断していたのですが?」

「なにせゴミの山の中から拾った物だった、軍に引き渡さずに私物化してしまった」


「それを君に譲りたいと思うのだ、専門家になら価値が解るかもしれない、君なら伝手(ツテ)があるのではないか?」

「それに関心を持ちそうな人なら知っていますよ、私の研究の後援者は考古学の支援もしています、彼から研究者を紹介してもらえるかもしれません」

「それは良かった、正直言うと途方にくれていたからね、素人の悲しさだ」

「しかしなぜ今になってそうなさるのでしょうか?」


「そうだな、非常に話にくい事なんだが」

ハーバートは急に口ごもる。


「三ヶ月程前からだ、私は時々不思議な夢を見るようになった、夢の中でこの家の廊下を奥に進んで歩く夢だった、それはたまに見る夢だが、夢を見る度に少しずつ先まで進んで行く事に気がついた、やがて廊下の奥に到達しそこから階段を降り始めた、夢を見る度に降りる段数が増えていく」


『ひっ』イサベラが小さな悲鳴を上げた、彼女は怪談や幽霊話が好きだが、ものすごく怖がりなのだ。


「その夢がいったい?」

「すまないな、もう少し聞いてくれ」


「そして夢を見た翌日に屋敷の周囲で不思議な事が起きていた」

「それは、植木鉢が倒されるとか、庭が荒らされるのでしょうか?」

「良く観察しているな、庭が荒らされていた、何かの生き物の足跡も残されていた、番犬を飼って対抗しようとしたのだが番犬が消えた」

「何が起きているか確認できましたか?」

「それが起きる夜、私は必ずあの夢を見ているのだ、何が起きているのか見た事はない」


イサベラが席を外し、そそくさと走り去っていく、たぶんトイレに行くのだろう、顔色があまり良くない。

しばらく会話が休止した、気まずい雰囲気が募る。

『ギシッ』

家の壁か柱からか音がした、エルマーは何事かと見回したが。

「この家も古くてね立て直すか改修工事が必要なんだ」

しばらくするとイサベラが戻ってきた。


「さて、その夢はやがて地下室に到達したがそこで終わらなかった、地下室にある手持ち金庫に手を伸ばし、それを手にして地下室から出始めた、そして今度は階段を少しずつ昇り始めたのだよ」


「夢を見る度に屋敷の周囲で異変が起きる、それも少しずつ酷くなって行くようだ、だが不思議な事に館の中まで荒らされた事は無い」

冷静に語るハーバートの表情から疲れとその下に恐怖の影が潜んでいる、エルマーはそう感じた。


「夢の中で私が運んでいた手持ち金庫の中身こそ君に譲りたい物なのだ、これを信用できる研究者の手に渡してもらいたい」

「そう言う事でしたか、僕には先程の人物を介して専門の研究者の紹介を受ける事ができるかもしれません」


「わかった、では今からそれをお見せしよう、しばらく待っていてくれ」

ハーバートは席を発ち廊下の奥に向かって歩いていく、やがて階段を踏しめる軋む様な音が聞こえてきた。


イサベラは止めようとしたのか、彼女の手が空中であわあわしている。


二階への階段はエントランスにあった、ならばあの音は地下への階段を降りる音だろう。


エルマーは思わずイサベラと顔を見合わせる。

「み、み、見せたい物ってニルヴァーナのルビーかしら?」

「わからないよ、僕もなんとなく止めたい気分だったよ、ははっ」


ふと窓の外を見ると屋敷の外は既に暗くなっている、ふと昼間の海の幽霊の話を思い出して少し身震いした。


やがてハーバートは鉄製の手持ち金庫を携えて戻ってきた。


「またせたね、これがその実物だ」

イサベラは動揺したのか、その時ティーセットのスプーンを弾いてしまった、スプーンがテーブルの上に転がる、だがそれを見たハーバートは硬直してそのスプーンを見つめている。

彼の顔色が一段と悪くなったように感じた。


「すまない、とにかく中を見せよう」

ハーバートは着席すると鍵を開け金庫の蓋を開いた。

イサベラが半泣きな顔で眼を背けているが、ニルヴァーナのルビーを期待していたエルマーには期待はずれな中身だった。


手持ち金庫の底にビロード布が敷かれ、古ぼけた羊皮紙の様な断片と、気味の悪い石の様な物が納められているだけだった。

ハーバートは白い手袋を嵌め、金庫の中身を取り出しテーブルの上に置く。


古ぼけた羊皮紙の様な断片を指し示し。

「この羊皮紙の様な物は石碑拓本の一部だ、石碑にトリオなどを塗り紙などを押し付けて写し取る、版画の原理と同じだ、こいつは何かの皮の様だがね、何が書いてあるかは読めない」


次に気味の悪い呪物の様な石を指さした、それは直径3インチ程度の大きさで、爬虫類の尻尾かタコの足の様な物体を、無秩序に丸く固めた様な不気味な造形を成している。


それは一見無秩序に見えるが眺めていると有る種の法則性があるような気がしてくる、それは人間には理解しがたい悪意の法則性を持って組み上げられている、そんな強迫観念に因われる、いざそれを読み解こうとすると頭痛に襲われ気分が悪くなってしまうのだ。


「これは何かの呪物の様に見えるが、これは転がすと音がするんだ、内部が空洞になっていて何かが入っている、しかしこれを壊さずに分解する方法が解らない」

たしかにハーバートが祭具を転がすと乾いた音がする。

「中身はなんでしょうか?」

「私には解らない」



僅かな沈黙の時間が流れた、ハーバートはエルマーとイサベラを見つめ、そして何か皮肉な笑みを浮かべたのだ、それはどこか力なく諦めた様な疲れた笑みだった。



「君たちに言わねばならない、この金庫を地下室から持ち出したのは、地下室にこれを入れてから今日が始めてなんだ」


イサベラが目に見えて震え始めた。




※ 因果の道化回し


イサベラ達がハーバート邸に到着した時まで少し時間を遡る。


エルマーの自動車がハーバート邸の建つ丘への小道に入った時から緑の馬車は速度を落としていた。

ゆるやかな坂道を登っていく自動車を観察していたダーシャの表情が突如変わる。

「アクシェイあの館から別の宝珠を感じました」


アクシェイの予感が当たったのだ、大魔術団の者達にどよめきが広がる。

「宝珠の状態はあの二つの宝珠と同じなのか?」

「違いますわごく正常で穏やかです」


「よしドルーブ適当な場所で馬車を止めろ」


「我らは二人の英国人を軽視しすぎたかもしれぬ」

「と言いますと?」

「あの者共は宝珠に関して何も知らないと思いこんでいたが、彼らが宝珠に乱れを生じさせている原因である可能性もある」

「そのような事は不可能です!!」

ダーシャは少しむきになって抗議する、アクシェイはダーシャは有能だがあまり柔軟な発想はできないと憂慮していた。

「今まではそうだったかもしれない、だが今は科学が発達しつつある、我々のまったく思いも拠らぬ方法で宝珠に干渉しているのではないか?その可能性を頭から否定してはいけない」

大魔術団のメンバーは衝撃を受けたようだ。

この場でダーシャに意見を言えるのはアクシェイだけであった。


「奇妙な化物を連れ歩く連中だぞ?石の状態と奇妙な化物が無関係とは限らない」


「さてダーシャ殿、他にまだ気になる事はありませんか?どんな細かな事でも構いません」

「はい館から、極めて弱いのですか、主の痕跡に近いものが感じられるように思えます」

「主を(マツ)らう遺物でもあるのか!?」

「この海岸に来てから下賎の神々の眷属の痕跡を僅かに感じていました」


「永劫への扉が開きつつあるのだ、活性化するのは当然の事だろう」

大魔術団のメンバーで言葉を発する者はいなかった。


「宝珠がこれで3つになった、予定を変更してここでまとめて確保しよう」

大魔術団のメンバーは(ウナズ)く。


ダーシャはそれを継ぐように歌うように語り始めた。

「下賎なる者達も単なる障害ではありえません、彼らもまた道化回しとして用意されたのですよアクシェイ、総てはそのように定められているのです」


アクシェイはダーシャが恍惚状態(トランス)に入り初めている事を感じた。








『どうやら新たな涅槃の宝珠と接触したようだな』

『あの娘の(オド)の一部に何かが触れておる』

『これは・・・下賎なる神々の眷属か?』

『まだ何かがあるぞ?邪魔が多くて良く見えないが』

『いったいどうなっておるのだ?』

『扉が開きかけておる、総ての神々が活力を得るのは当たり前の事とはいえ』

『想定外の事が起きすぎる』

『だから面白いのだ、そのぶん我ら下僕が苦労する』


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