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メカ令嬢とメイドロボ  ~ ニルヴァーナの宝珠  作者: 洞窟王
第一章 モーカムへの旅
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父の戦友 ~ 星辰の扉

※ 父の戦友


「あそこなら舘の窓から死角になりそうだね」

エルマーは自動車を舘の横側に滑り込ませて停車させた、エンジンを切るとあたりは静寂(セイジャク)に包まれる。

「さてイサベラ行こうか」


イサベラの後ろからルルが例の奇妙な歩き方でトコトコとついてきた、エルマーはルルが舘の壁に張り付くのをみて密かに微笑んだ。

「ご主人様どうかお気をつけて」

ルルは壁際から頭だけ出して玄関に向かうエルマーとイサベラを見守っている。


ドアの前に立ったエルマーは一瞬だけ躊躇(チュウチョ)したがドアを思い切ってノックした。

「エルマー=ワイルドです、アーウェル=ワイルド中尉の息子です、先日のお手紙の件で参りました」


やがて内側から靴音が聞こえてきた。

「アーウェルの息子なのか?」

やがてドアが開かれた。


「私がハーバート=ウェストスミスだ、思ってたより早く来たな、中に入りなさい」

エルマー達の前に現れたハーバート=ウェストスミスは50代のはずだが、それよりもはるかに老けて見えた、体格は軍人らしく鍛えていたのだろうが、僅かに曲がった腰と白髪、皮膚は土色で全身から疲労と、その表情から心労の蓄積を感じた、エルマーは彼が何かの病気ではないかと疑った。


「改めて、私たしはエルマー=ワイルドです、こちらは助手のイサベラ=オブライエンです」

「イサベラ=オブライエンですよろしく」

「まあなんだ、とにかく中に入りたまえ、もっとも今は私一人しかおらんから、まともに持て成す事はできないがね」

ハーバートは疲れた表情で自嘲気味に笑うと家の中に二人を招き入れ、二人は応接間の古びたソファーに案内された。


「私がお茶を用意しましょうか?」

そこで何を思ったかイサベラが給仕を申し出た。


エルマーは驚いたがイサベラの好意を無にしたくはなかった、だが家主の勝手にはできない為ハーバートの顔色を伺う。

「客人に給仕をさせるなんて逆さまだな、だがお言葉に甘えてお願いしたい、キッチンは好きに使ってくれ」

「イサベラにお願いしていいかな?」

「もちろんですわ」

イサベラは大いに張り切ってキッチンに進撃していった、進撃と例えて良いぐらいイサベラには勢いがあったのだから。


少し驚いた顔をしたハーバートはイサベラを見送り少し寂しそうに微笑んだ。

「ひさしぶりだな、この家に若い者が居るのは、そうだ、たしか君は博士だったな、彼女は君の助手なのかね?」

「そうです、いろいろ事情があったので旅に同行してもらいました」

「ところで彼女に話を聞かせても良いのかね?」

「はい」


ハーバートは何から話しを初めたら良いのかしばらく悩んでいるようだったが、やがて話し初めた。


「アーウェルが死んだのは一年前なのかね?」

「そうです、貴方の事は父の残したメモがなければわからなかったと思います」


「我々がこちらに戻って来てから、7年前にアーウェルと一度だけ会っているのは知らなかったのだな」

「今始めてお聞きしました、父も何度か旅行に出たり仕事で出張した事もあるのでその時でしょう」

「そう言えば、奴は任務のついでに来たと言っていたな」

「私とアーウェルは気があったからな、他の者とは連絡が付かなくなった、全員が元々の所属部隊がバラバラだったのだ」

「何か普通では無いようですね?」

「現地で編成された我々の部隊も他の部隊との交流がほとんど無くてね、むしろそうさせられていたのだろうな」


ハーバートはそこでまた考え込み始めた、エルマーは彼の思索を妨げない様に静かに見守る。


「手紙ではアーウェルが持ち帰ってきた宝石の出処を知りたがっていたな、そして私やアーウェルがインドで何をしていたか知りたいと?」

「そうです」

「我々はインドでの任務に関して箝口令(カンコウレイ)がしかれていた」

「やはりそうでしたか」

「作戦行動の全貌は上と大隊司令部要員だけが知っていたはずだ」

「何か特殊な任務だったのですか?」


そこにお茶の準備を終えたイサベラが戻ってきた、さっそく給仕を始める。

「ありがとうお嬢さん」

「イサベラでお願いしますわハーバートさん」

「ご苦労さまイサベラ」

ハーバートは複雑な表情でティーセットを眺めている、そしてイサベラもそのまま席に戻った。


「そうだな、なぜ箝口令(カンコウレイ)を破り君に話す気になったのか、それを含めて話をしたい」

ハーバートは何か意を決したかのように話し初めた。




※ 星辰の扉


「今にして思えば、我々の部隊は初めから特殊な任務の為に編成されたのだ、オブザーバーとして大隊司令部に付けられていた軍属の者達は明らかに軍人とは思えなかったよ」

「それはどのような人達でしたか?」

「学者の様に見えたな、詳しいことは機密だったよ、まず我々の部隊はインドのラージコートで編成された、一年程は訓練に追われていたが、ある教団を掃討する任務についたんだ、かなり奇妙な宗教でね、そいつらを掃討する任務を帯びた」


「もしかしたら宗教が絡む反乱でも鎮圧していたのではと予想はしていました、あの石は仏像の頭部から取り出したようなメモがありました」

「あれは既存のインドの宗教の像では無いらしいな、地元では邪教して恐れられていた連中で、住民は奴らの討滅を見て見ぬふりをしていた」

「それはどんな宗教なんですか?」

「彼らは本当の教団の名前も神の名も秘しているらしい、外部には『星辰の扉』と称していた」


「なんか幻想的で素敵な名前ですわね?」

大人しく聞き役に徹するつもりだったイサベラがつい口を出してしまった。


「彼らは夢の種を撒き夢を収獲すると言われていた、夢を収獲するときに魂を連れて行くとね、それを神に捧げるらしい、信徒は大道芸人や詩人や芸術家に紛れ、夢の種を撒き夢を収獲するのだと、我々は教団の教義や活動に関しては最低限しか説明を受けていない」

「恐れられていたとは言え、わざわざ掃討すべき邪教とは思えませんね」


「だがな部隊が結成されて2年目の事だ、奴らが武装蜂起を起こした、武装蜂起を起こした理由も知らされていない、彼らは既存の宗教の寺院などを乗っ取っていてね、想像以上に面倒な事となった」


「我々は駐屯地から数百キロも南に移動させられ、作戦行動には支障がない精密な地図や情報は与えられていたが、インドのどこなのかは当初は曖昧にされてた」

「それで問題は無いのですか?」

「大隊規模の軍事行動にはあまり問題はなかった、大きな編成だと自分たちが何処にいるのか知らぬでは済まされない問題だがな」


「インドにマドゥライと言う都市がある、その東側にある森林地帯だろう、鉄道を使った移動経路や記憶と地図を照らし合わせて推理した、アーウェルも同じ推理をしたよ」


「そこで戦闘になったのですね」

「ああ、幸いな事に奴らは住民から支持されていたわけではなくてな、大きな広がりにはならなかったのだ、点の戦いだった、奴らの拠点を虱潰しに潰していった」


「あれは不愉快極まる戦いだった」

「愉快な戦いなんて無いでしょう?」

「説明しにくいが、奴らは確かに狂信者の様に抵抗した、我々を憎み殺意を滾らせていたと思うが、何か、何といったら良いのか、違和感を感じさせる戦いだった」

「かなり異常な連中だったと言うことですか?」

「そうだな、どう表現したら良いのか、上手く説明できずにすまないな」


「その作戦のどこかでアーウェルはあの宝石を見つけたのだろう」

「詳しい事はわからないのですか?」

「俺も奴も中隊を指揮していた、直接目撃する機会はない」


「廃寺院に隠されていた仏像の頭から取り出したと父のメモに残されていました」

「アーウェルはまるで石に魅入られたように持ち出したてしまったと言っていた、そのままこちらに持ち帰ってきてしまったらしい」

「石に魅入られた・・・」


「そして私も奴の事は言えないのだ、発見した物は軍に引き渡す事になっていたからな」


エルマーとイサベラはその言葉から彼が引き渡したいある物を連想した。




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