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メカ令嬢とメイドロボ  ~ ニルヴァーナの宝珠  作者: 洞窟王
第一章 モーカムへの旅
12/24

ピーク・ディストリクトを越えて ~ モーカムの異変

※ ピーク・ディストリクトを越えて


エルマーとイサベラは翌朝ゆっくりと起床してチェックアウトすると、ピーク・ディストリクトを縦断し、マンチェスターの東を抜けてランチェスターを目指す。

夕方には目的地のモーカムに着く予定だ。


道路があまり良くない為ゆっくりとした行程になった、見渡す限り人家もほとんど無く森林と草原と丘陵地帯に放牧地が広がっていた、朝の爽やかな空気の中、丘と谷が入り組み、草原、湖や川、城と町、表情が豊かに変化する景色にイサベラは見惚れていた。


「通り抜けるだけなんてもったいないわね」

「そうだね、2~3日かけて見物したい場所だね」


遠くに城の廃墟のような遺跡を見つけイサベラは喜んだ。


「イサベラは廃墟が好きなのかい?」

「昔人が住んでいたのよね、そんな昔を想像すると楽しいでしょ?あのお城も騎士が住んでいたのかしら、騎士様って素敵ね」

「騎士が好きなの!?」

「物語だと都合の良い時に颯爽と助けに現れるのよ?普段は紳士的で安心ですし」

エルマーは夢見がちに見えて妙に俗っぽい発想が多いイサベラに苦笑するしかない、それでもそんなイサベラに満足気にチラチラとイサベラを観察している。


自動車がすこし揺らいだ。

「ご主人様、ハンドルが疎かになっております」

ルルがボソボソと後ろから独り言の様に話す、観光に夢中なイサベラはそのどこか険のあるルルの声に気が付く事はなかった。


「ねえ、今回の旅だけど田舎ばかり通るわね?」

「君がロンドンの生活があまり好きじゃないと感じていたからね」

「ロンドンの生活は面白いですわよ?」

「気分転換にはなったと思うよ」

「そうかしら?」


そんなエルマーの自動車の遥か後方、ダーシャの感応範囲ギリギリの距離に緑の馬車が追走していた、

周辺は交通量が少ないため彼らの馬車はとにかく目立ち過ぎるのだ。


「ここは舞台に理想的だな、余計な見物人もいない、奴らがもし同じ道を通るならここで歓迎してやりたいものだ」

ダーシャがそれに応じた。

「アクシェイ様、美しい景色ですね、それにここならば敵を討つ邪魔は入りません」

「奴らもまた我らの舞台の共演者さ」



※ モーカムの異変


「イサベラ?」

ランチェスターから街道を外れ海岸に向かう道を自動車は進んでいるが、先程からイサベラは少しむくれたような顔をしていた。


エルマーは彼女のランチェスター観光計画を思い出していた。

「ランチェスターを見物するのは帰りにしよう?」

「えっ?別に見物したいわけじゃないわよ?」

彼女は本音が顔に出るから非常に解りやすい、僕はあまり人の心を読み解くのは苦手だからね。


イサベラは顔に文字が浮き出る様に感情が顔に現れる娘だった。


初めてエルマーが出会った頃の神秘的で何を考えているのか解らない、妙に大人びた少女の姿は消え失せ、ごく普通で元気でどこか抜けた処のある娘に成長したイサベラにエルマーは正直ほっとしていた。

だがエルマーはそんなイサベラに悩まされる事もある、イサベラのエルマーへの思いは、よほどの鈍感でも無い限り解りやすい程解りやすいのだから。


自動車はしだいにモーカム湾の海岸に近づいていく、しだいに海鳥の姿が目立つようになり磯の臭いを感じ始めた。

モーカムの中心部は裏寂れた港町だが、近年新しく開発が始まり徐々に活気が蘇りつつあるらしい。

たしかに建設中のホテルがそこかしこに見える。


「さて、少し情報を集めようか」

エルマーは自動車を止め、通行人の中年の婦人に声をかけた、エンジン音が煩いのでエンジンを停止する。

「失礼します、少しお尋ねしたい事があります」

女性はエルマー達に驚いた、自動車はまだまだ珍しいのだろうか?

「僕はアラン=バークマンと申します、保険会社の調査員をしておりまして、最近この近くで、得体の知れない家畜やペットの被害が増えていると言う話を聞きまして」

エルマーが保険会社の人間と知り、婦人は何かしら納得した様な、何か面白そうな話ができそうな期待からか喜色を浮かべた。


この人ならある事無いこと全部話してくれそうね。


イサベラは内心で呆れたが、イサベラ自身が周囲から同じ様に思われているとは夢にも思っていない。


「いやねえ、もう噂が遠くまで広がっているのね?」

「ええ、我々としても会社の利益に関わり兼ねない問題でして、原因を調査しなければなりません」

「もっと海岸のほうですよ、夜になると海の向こうから人の様な姿をした化物がやってきて、家畜をさらっていくと噂になっているのよ」

その婦人は大腕をふって噂話ができるからか大喜びで話はじめた。


「人の様な姿ですか?」

「私は見たこと無いけどね、真夜中に人影がたくさん沖から来て、また海に帰っていくのよ、干潟に足跡が残っていたそうよ、汐が上がると消えちゃうけどね、カエルみたいな足跡がたくさん」

「それは気味が悪いですね」

「海で遭難した船員の幽霊とかいろいろ噂になっているわよ」

「実際に被害が出ているのですか?」

「家畜が奪われたとか、番犬が居なくなったとか、あと一家行方不明とか噂があるわね、警察も動いているらしいですよ」


エルマーと御婦人は次第に脱線し世間話を長々し始めた、先に進みたいイサベラはだんだんイラつきだした。

「ところでその自動車は貴方のものなんですか?すごいですね、あと後ろの席に誰かいるのかしら?」

エルマーは風向きがおかしくなってきたので焦り初めたようだ。


ほんとエルマーもここにルル達がいるのに不注意よね。


「そうだった、我々も海岸地域で調査がありますので、そろそろ失礼させていただきます」

エルマーが急ぐようにクランク棒でエンジンの起動をはじめる。

「いちいちエンジンを起動させなきゃならないなんて急いでいる時には不便ね」

イサベラは小さな声で一人言を零した。


自動車は再び動き始めた、イサベラは車から少し身を乗り出して遥か後ろに遠ざかるおしゃべり婦人を見おくる。

「イサベラ危ないから乗り出さないで」


「ねえ、海のお化けの話がアーウェルさんの戦友と関係あるの?」

「父の戦友が急に僕と話しをしたくなった理由が解らないからね、なんとなく気になったので確認したかったんだ」

「でも海のお化けの噂があることだけは本当だったようね」

「そうだね、でも原因はまったくわかっていないようだけど」


モーカムの中心街を抜け、湾岸の海岸沿いの道路を自動車は進んだ、海鳥が遠浅の干潟の生物を狙って空を騒がしく舞っている、イサベラは鉛色の海と空と海鳥の食事を眺めていた。

エルマーはそのイサベラの横顔を眺め

「疲れたかい?」

イサベラは振り返りもせず

「ここの海はあまり好きになれないわ、プリマスの海はもっと綺麗よ?」

「そうだろうな・・」


自動車が海岸通りに出てから10分ほど経ったころ。

「そろそろ目的地に到着するよ、たぶんあの小さな高台の上の舘だ」

はるか彼方の道路わきの小さな丘の上に灰色の建物が見えてきた、周囲から孤立しているようで近くに民家はない。

「なんか不気味ね」

古い建物で壁は潮風に風化させられ一見すると廃屋のようにも見える。

「道に人がいるな」


エルマーは自動車を寄せて止め、そして通行人のお爺さんに声をかける。

「失礼します、少しお尋ねしたい事があります」

「実は、家を買いたいと思いまして、あの丘の上の舘に興味を持ちました、あの舘は今は使われているのでしょうか?」

「あそこは人が住んでるよ」

「そうですか、見晴らしの良さそうな丘なので、なかなか良いと思いまして」

エルマーってまた平気で嘘を付いているわね?


「ああ、そういう事か、あそこの男は偏屈な奴らしいから苦労するぞ、がはは」

「どのような御方でしょうか?」

「たしかハーバート、ハーバート=ウェストスミスだよ、家族はいたが今は一人だけだ、ワシも名前は知っているが付き合いがほとんど無いから詳しいことは知らん」

「ありがとうございました」


自動車は舘のある丘の下まで進み停止した、丘は低くなだらかだが下から舘を見上げる形になる、詳しく観察すると、舘は十分な整備がされて居ないようだ、漆喰は汚れ剥げはじめ、屋根も傷み始めているように見える。

それでもガラス窓やカーテンの状態から人が今も生活していそうだが、内部に灯りが灯っているようにも思えない。


街道からは丘の上の舘に向かって細い道がある、ちょうど自動車がギリギリ通れそうだ。


「みんないくよ」

自動車は小道を昇り始めた、やがて庭の状態が見えてきたが、ガーデニング用の植木鉢などが倒されたまま放置されていた。

自然に倒れる物ではないはずだ、それでも最近まで手入れはされていたようにも見えた、そして新しい犬小屋があるが犬の姿が見えない。


「なんか嫌な感じがするわ、急に入りたくなくなったわね」

「うん、不自然に荒れているね、良い感じじゃないね」


「ご主人様、先ほどカーテンが動きました、中からこちらを見ている人がいます」

中に人がいる事だけは確定した。

「ハーバート様がどのような御方かまったく不明ですが、警戒した方が良いと判断いたします」

当初はエルマーとイサベラだけで中に入り、自動人形は自動車に待機の予定だった。


「私はいつでも中に踏み込めるようにドアの近くで待機します、イサベラ様お手数ですが今のうちに私の螺を巻いてください」

「わかったわよ・・」

「ルルちゃん気をつけてね、エルマー様をたのみます」

「お任せ下さいお嬢様」




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