神は、咎人に罰を与え、強欲の邪竜を創り賜うた①
誤字報告ありがとう御座いました!_(_^_)_
すべて適用させて頂きました。
オイラを迎えに来たのは、ドワーフの親子だった。
親子はとても似ていて、浅黒い肌に、後ろで器用に編み込んで纏め上げた、ドレッドヘアが渋い。
初めて見たけど、ドワーフと言う種族はとても小さい。
父様達ハイエルフの、3分の2程しか身長が無く、同い年だと言う子供のドワーフも、オイラより頭一つ分小さかった。
だけど、妖精たちのように、身体全体が小さいわけじゃなく、ここだけの話、頭身比率がおかしい。
大人のハイエルフ達が8頭身とすると、大人のドワーフは、6頭身位。子供に至っては、4頭身のギャグみたいな比率だ。しかも、親子共に、足が短くて太い。
「初めまして! ボクはルボルグ。ニル君とは同じ6歳だよ。ディウェルボ山脈の里では、同じ家に住むことになるんだ。よろしくね」
ひと通りの大人達の挨拶が済むと、子供のドワーフが、元気に名乗りあげてくれた。
大人のドワーフの名前はガーランドさんと言うらしい。ガーランドさん程、髪が長くないルボルグのドレッドヘアは、ちょんまげみたいだ。子供らしくて良いんだけどね。
どうやら、このルボルグとは、今後の同居人となるらしい。オイラも第一印象最高になるよう、笑顔で元気に応えた。
「こっちこそ、よろしく! オイラは、ニルって言うんだけど、もう知ってるみたいだね。森の外に出たことが無いから世間知らずで迷惑をかけると思う。色々教えてね、ルボルグ君」
「……。……ボク、女なんだ」
「ーーー……え!? うっそ!?って、あ、ごめん……」
だけど見えない! 太い眉、カッコイイドレッドヘア、短い足、骨太の逞しい体付き。おいらの知ってる女(妹達)の特徴である、可愛さや可憐さと言ったものが、欠片も見当たら無い。
オイラは思わず我を忘れ、失礼な感想を叫んでしまった。
ルボルグは困ったように、笑いながら言う。
「あはは。まぁボク達の種族は、人型の種族の中では少し特殊だからね。神は我等ドワーフに“渋く、ダンディーであれ”、と仰られたんだ。だからボク達は、女も男も成人する頃には、筋肉がムキムキに付くし、酒には強くなるし、髭も生える。ドワーフの性別はドワーフ族以外、きっと区別なんか付かないと思うよ。だから、気にしないで」
オイラは更に驚いて、目を見開いた。
「女にも、髭が生えるの!?」
「そうだよ。ボク達にとっては、如何に渋くてカッコいいかが、モテの基準なんだ。だからみんな、思い思いに髭を伸ばして、お洒落するよ」
「ーーードワーフすげぇな。えっと、……ルボルグ……ちゃん?」
「……ちゃんはやめよう。鳥肌立った。ルボルグでいい。いや、ルボルグにして」
「分かった。オイラもニルと呼んでくれ」
こうして、オイラに友達ができた。
しかし、世の中は不思議で満ちている。女に髭が生える種族とか、何がどうなってそんな事になったんだろう?
神様の考えることは、本当によく分からない。
◆
『おい! ハイエルフ達から離れて行くとはどう言うことだ!? これではオレ様が解放されんではないか!? 話が違うぞ!』
ディウェルボ山脈に向かう旅の最中、ナイトメアがギャーギャーと、頭の中でやかましく騒いでいる。
オイラ達はドワーフの里がある、ディウェルボ山脈に向かっているのだが、その手段は徒歩。
馬や、巨鳥にでも乗ればいいのにと思って提案してみたが、ドワーフの二人からは、苦虫を噛み潰したような顔をされた。そして暫くして、「自分の足以外のもので移動するのは嫌じゃ」と、ガーランドおじさんが、ボソリと呟いた。
ま、得意不得意は誰にでもあるって事なんだろう。オイラはそれ以上何も言わず、2人に付いて歩いた。
そういうオイラも、前に森の中で“走り鳥レース”をシャンティとやった時、虫柱に頭から突っ込んでそのまま気絶して落馬したという過去を持ってる。
剥き出しの乗り物での旅じゃなかったのは、逆に良かったのかもしれない。
『おい、オイラ! 聞いてるのか!?』
オイラが返事をしないものだから、尚更やかましく騒ぎ始めるナイトメアに、オイラはやれやれと思いながら言った。
「聞いてる聞いてる。けど、始めから、そんな話はしてないよ。って言うか、言ったでしょ? 世界が滅んでしまうから、出す事はできないけど、オイラと一緒に外の世界を旅しようって」
『そんな事言ったか? 旅とは色んな所に行くことか! それは楽しみーーーっ、……。……フン! そんなの、散歩にもならんわ! とっとと戻って、オレ様を開放しろ!』
「はいはい、散歩にもならん散歩が終わったら、帰るよ」
『よし! 絶対だぞ! 散歩が終わったら、ちゃんと帰るんだぞ』
ナイトメアはそう言うと、満足したように静かになった。
丸め込むのが簡単すぎる。まぁ、そもそも三万年近くも眠ってるんだ。今更、数十年それが伸びた所で、どうって事無いのかもしれない。と言うか、出す気は無いんだけどね。
そんなオイラに、隣を歩くルボルグは、不思議そうに声をかけて来た。
「いつも誰と喋ってるの?」
そう、ナイトメアとの声は、オイラ以外の人には聴こえない。
創造神レイス様にすら聴こえないらしい。
だから、周りから見れば、オイラが変な独り言を言っているようにしか見えない。
ちゃんと、説明しておかなくちゃね。
「あぁ、実はね、オイラ聖域にいるとき、ナイトメアと言う、夢の住人をレイス様から任されたんだ」
「夢に住んでる者が居るの!? へぇー! 世界は広いなぁ。不思議な事がいっぱいだ」
うん。それオイラも、ドワーフに対して、同じことを思った。
まぁナイトメアが、ギドラス様だと知ったら、皆怖がってしまうから、そこは主神様達と世界樹様にしか話さない事にしている。
「ナイトメアとオイラは、闇の力が使えるから、そのせいで声が聞こえるようになったんだろうって、レイス様はおっしゃってた」
「闇の力? 初めて聞いたよ。どんな物なの?」
「オイラもまだ、なんと無くしか分かってないんだけどね。闇ってのは、無限の虚無なんだ。そこに色んなものを取り込んで、別の物にしちゃう力だよ」
「うーん。よく分かんないな。だけどボク達の考える、“錬金術”と似てるね」
「錬金、術? それも何かの魔法か?」
オイラが聞くと、ルボルグはニコリと笑って言った。
「魔法じゃ無いよ。ボク達の間に伝わる、おとぎ話の技術だよ。金って知ってるかい?」
そう言いながら、ルボルグは黄金色の小石を取り出した。
「ううん? 初めて聞いた。その小石が金?」
「そうだよ。ボクが精錬したんだ。金に限らず金属ってものには、全て融解温度が決まってある。火をかけて、その温度をうまく調整すれば、いろんなものが混じってる“鉱石”から金属が精錬出来るんだ」
「へぇ。蒸留みたいなものか。母様たちが、酒や薬を作るときにやってたよ。火は使ってないけど」
「まぁ、似たようなものだね。で、鉱石を精錬して、金属を取り出すわけなんだけど、当然のごとく、鉱石に含まれる金属しか、精錬出来ない。特に金は変質しないんだ。あ。変質ってのは分解と融合と酸化の事ね。だけど、何とかして、他の物質をくっつけたり、変質させたりして金を創ろうとする技術を、“錬金術”って言うんだ」
フフと、夢の話を話すように笑いながら、そう話し終えたルボルグ。その手の上で、今尚キラキラと光る小石を、オイラはまじまじと見た。
「ちょっとその小石借りてもいい?」
「ん? いいよ」
オイラはルボルグの手から、黄金色の小石を取り上げた。
なる程。思ったより重くて、不思議な石だ。
オイラは反対の手で、闇を出し、辺りの土をガッポリと飲み込んだ。
「え!」
突然のオイラの魔法に、ルボルグは大きな口を開け、おもしろい顔をした。
オイラは続いて、辺りの空気や熱や重力を喰らう。
闇の中で、取り込んだ物をバラバラにして、超重力の中でもう一度組み立てていく。
ーーーそして、
「あ。出来た」
「「……。………えぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」」
オイラの両手に乗る2つの黄金色の小石に、ルボルグどころか、ガーランドおじさんまで白目を剥いて叫び声を上げた。
そこまで驚くことなの!?
オイラは、固まって、息が切れては再び大きく深呼吸し、何度も叫び続ける親子に、ドン引きしながら、オイラもまた、固まり続けるしかなかった。
エルフの話、ニル語りになった間だけでも、“番外編にしておけば良かったかな?”と後悔中。
まぁ、もうエルフ編ももう少しで終わるので、いいか!(・∀・)!




