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ネ申は、幼いエルフを、保護し賜うた②

 

 母様の挨拶に、3歳児ほどの美少女が、年寄りのような口調で応える。

 これがロリババアと言うやつか。


「うむ。800年ぶりじゃの」


「はい。ずいぶん、口調も変わられましたね。順調、と言うことですか」


「まぁの。ーーーその節は、すまなんだ」


「いいえ。唯、神にそう創られた者だったという事。ブリキッド様が我等を恨もうと恨むまいと、我等は変わる事など出来ないのですから」


「ふん。言ってくれるの。ワシの駄々等、歯牙にもかけんと言う事か」


「ブリキッド様、その様な言い方をされると困ってしまいます。今回ここへは、主神様方に会いに来られたのですか? 聖域(ここ)に鍛冶技術はありませんからね」


「そうじゃ。ドワーフ達の作った物を、主神様に献上しようと思っての」


 ブリキッド様はそう言うと、タクトを降るように手をふった。


「「!?」」


 そして、ブリキッド様が空中から掴みだした、その献上品を見て、オイラと母様は息を呑み、言葉を失った。


「どうじゃ、よく出来ておるだろう。ヒヒイロカネで出来た鎖じゃ」


 ーーー良くできてるなんてものじゃない。


 真紅に輝く金属で編まれたその鎖は、貴重な宝石の様にキラキラと輝き、その絡み合う一つ一つに、繊細な彫り物が施されている。


 創造神様達が、創造の際に使われる神の文字(ディオス文字)だ。人間達が使う、ルーン文字の初元文字とも言われている。


 ディオス文字は、父様達にいくつか教えてもらったことがあって、知ってはいるけど、組み立て方が複雑すぎてとても扱える代物ではない。


 ハイエルフは、ミスリルの金属器へ付与効果(エンチャント)の際に使うから、多少使えると言ってたけど、そこまで頭の良くないオイラたちエルフには、扱う事は無理だった。


「ーーー驚きました。ここ迄、ダークマター(混じり物)の入ってい無い、純度の高いヒヒイロカネのみで、このような繊細な成型をなされるとは。しかもこの彫り物……徹底的に強度をあげるためのディオス文字ですね。美しい上、実に合理的に出来ている」


「解るか。ここまで来るのに、800年掛かったわ。かつて、ハイエルフたちの献上したものが、たった数日のうちに壊れたと言う話を聞いてな。あぁこれは張り合いなど無いぞ? 何があっても壊れぬものを作ったのだ。それこそ神獣様方が、この鎖で電車ごっこや、縄跳びをしても平気じゃよ! がっはっはっーー」


「神獣様は、その様な事をなさいません」


 見かけによらずオッサン臭い、豪快な笑い声を上げる少女に、神獣様の世話を言い遣っている母様は、冷やかに言った。


 ……だけど、もしかしたら、ゼロス様なら、そんな事をなさるかも知れない。



 ーーー発射しまーす! 次は、帳の外ー、帳の外ー。レイスの発生させたマナ崩壊跡地は、通過しますー。帳を抜ける際の強い揺れにご注意くださいー!


 ーーーよぉーし! 次は千重跳びだよ! いい? 風圧で浮かせながら、縄を回すんだよ。重力操作で飛ぶズルは、禁止だからね!



 オイラは、ゼロス様と、ラムガル様と、勇者様が、この鎖で仲良く電車ごっこや、凄まじい風圧を発生させる縄跳びを楽しげになさる、生々しい姿を想像してしまい、頭を振った。


「どうかしましたか? ニル」


「なっ、なんでもナイです!」


 母様の問いに、オイラは慌てて手を振る。


「そうですか。ーーーたしかに素晴らしい出来ですね。主神様方もお気に召すでしょう。所で、先程仰っていた、“口を出しても”とは、どういう意味でしょう?」


 大人達の挨拶と、難しい世間話が終わり、やっと母様が話を本題に戻した。


「そう。その子どもが、森から出たいと言う事についてなんじゃがの」


 ブリキッド様は、少しどうしたものかと悩むように言葉を詰まらせ、そして言った。


「ドワーフの里に留学させんか?」


「留学、ですか?」


「さよう。わしとて、己のせいでハイエルフとドワーフがいがみ合う姿は、もう見たくないのじゃ。ここらでキッカケを作らねばならぬ、と思っておったのじゃ」


 ハイエルフ達とドワーフの関係がギスギスしているのは知ってる。だけどそれがブリキッド様のせい? どういうことだろう?


「どうじゃ? わしと、ドワーフ皆が、その子の保護者として受け持ち、その子の言うよう外の世界へ出してみればどうか?」


「……。それで口を、と言うわけですか。正直私は反対です。今までの因縁もあり、凝り固まった認識がそう安々と解消されるとは思わない」


「お主がそれをいうか。三万年近くもの間、エルフを作らなんだ者共の常識を破った奴が」


「……。ーーーニルは、この話を聞いてどう思いますか?」


 母様は、珍しく苦虫を噛み潰したような苛立たし気な表情を取ると、突然オイラに話を振ってきた。

 ビックリしたけど、これは、きっとチャンスだ! ドワーフの里なんて、泥舟かも知れないけど、とにかく外に漕ぎ出すための手段であることに間違いは無い!


「お、オイラは、留学したい!」


「ほぅ!」


 オイラの応えに、嬉しげに、顔をほころばせるブリキッド様。


 そして、母様はため息をついた。





 こうして、オイラの外界留学が決まったのだった。





ブリキッド様、ロリババアになってました。戻れると良いですね。

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