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神は、神の計画を立て賜うた

テロ投稿です

 始まりは、1つの純粋で、とても強い愛だった。


「真実の愛というものを、そなたに見つけた。シェリフェディーダ・ローレン・リリサレーナ。そなたになら、私の2000年の全てを捧げられる」


「私もです。ダッフエンズラム・ガラディス・フェリアローシア。私は、ハイエルフを一手に取り仕切る、我らが長として、貴方を心より尊敬しております。そしてそれ以上に、私も貴方をお慕い申し上げておりました」


「抱き締めたい、と言っても良いか?」


「‥‥。いいえ。ハイエルフである私達は、繋がらなくとも種を残す事が出来る。ーーーつまり主神は、私共にそのような行為を望んではいないと言う事でしょう」


「禁じてはいない! 触れ合うことが罪だと、神は仰らなかった。ーーーそれどころか、私は見てしまった。創造神ゼロス様とレイス様が、ーーーく、……口付けをしようとしていた所を!」


「!?」


(見間違いだよ)


「神は、お赦しくださる。ーーーだからどうかシェリー、私を受け入れてくれ」





 こうして、この世界に初めて、エルフが産まれたんだ。





 ◆





 聖域の奥に、明るい幼子の声が響く。


「ニルーー? どこ行ったの? もう隠れんぼはおしまいだよ。もうすぐ母様の機織りを手伝う、約束の時間だよ!」


「ーーーニシシッ、こーこだよっ! コレでオイラの2316勝目だねっ。ルフルは本当に弱いなぁ」



 あれから、8年の月日が流れ、産まれてきた兄弟たちはスクスクと大きくなっていた。


 1番上が、双子のニルと、ルフル。その下が長女のシャンティと、更に末娘のティニファだ。

 他のハイエルフ達に比べて名が短いのは、いずれ聖域を出ていったとしても、他の種族達に早く名前を覚えてもらい、仲良くできるようにと、両親からの気遣いからだろう。


「まったく、本当にニルは、隠れるのだけは上手いよね。他はまるで駄目なのに」 


「オイラ達はエルフだ。ハイエルフじゃない!母様達のようにやろうとしたって、無駄なことさ。それよりオイラは、いつか森から出て、精霊達の言う、冒険者って奴になりたいんだ!」


「またそんな夢みたいな事言って。この間は、ルドルフ様の元で、サンタ様の手伝いをするエルフになる! とか言ってなかった?」


「いや、オイラだって、サンタ様の元への終身雇用を真面目に考えてたさ。だけど、……越えられない壁ってやつにぶち当たっちまったのさ」


「……な、なんだよ? それは」


「ーーー。 ルドルフ様な、カブトムシが好物なんだ……」


「……。」


「信じらんねー! 虫を食うってどう言う事!? 聖獣はマナ啜るもんだろ、普通! あーー、無理無理無理ムリムリムリ!! 思い出しただけでサブイボ立ってきたよ!」


「……はぁ。森で生きるエルフとしては、ソレも致命的だよね。ニルの()()()


「うるせー! あーぁ、あれさえ無けりゃ、絶対そこに就職して、初代クリスマスエルフとして、オイラ、超有名になったのになぁ」


「まだ立ち上がっても無い会社に、夢を見過ぎだよ」


「でも、社長が創造神のレイス様だぞ!? 絶対倒産無いって!」


「はいはい。どうせルドルフ様がいる限り、ニルには無理だからね」


「あー! ニル兄しゃまに、ルフ兄しゃま! お帰りなしゃい」


「ティニファ! ただいまー。相変わらず可愛いな!」


「きゃふぁー!」


「ふふ、ただいまティニファ。母様達は?」


「えっとねぇ、シュシンしゃまがたがこられて、お外に行っちゃったの」


「「ゼロス様とレイス様が?」」


 二人はティニファの言葉に、顔を見合わせた。




 ◆



「おや? ゼロスにレイス。ハイエルフ達の所に出産祝いに行ったんじゃなかったのかい?」


 俺は、手持ち無沙汰に肉を捏ね、新たな神を創っているゼロスと、何やら仮面(マスカレード)を付けたり外したりしながら、ポージングの練習をしているレイスに聞いた。


 レイスは無言で、黙々と鏡を睨み続けていたが、ゼロスは困ったように、頬を掻きながら話してくれた。


「実はね、行ったんだけど、なんか初出産どころか、もう子供が4人も出来てたんだよね。ーーー2万8千年以上、子孫を作ろうとしなかったハイエルフ達が、たった6年の間に、4人だよ!?(ハイエルフの妊娠期間は2年) 信じられる?」


 進化や変化は突然訪れるからね。油断してはいけないよ、ゼロス。


「まぁ、それは構わないんだ。そしたら、丁度その子達が遊びに出かけていたようで、居なかったんだ。帰ってくるまで待っていると言ったんだけど、“山刈りしてでも早急に見つけて連れてくるから、どうか世界樹様の元でお過ごし下さい”って、断られたんだ」


 真面目なハイエルフ達の事だ。2柱を待たせる事が不敬とでも思ったんだろう。

 俺達の時間の感覚から言えば、2〜3年待ちぼうけ喰らったって、大して気にする事でもないというのにね。


「なる程。それで、ハイエルフ達に、これ以上気を遣わせないために、俺の近くでこうやって過ごしてるという訳か。……ところで、レイスは、それは何をしているのかな?」


 俺はさっきから、ラムガルの作り出した大きな水銀の姿見の前で、仮面(マスカレード)を外してポーズを取るまでの所作の確認をしているレイスに声をかけた。


「レイスは、エルフ達に、好きになってもらわなければならない。第一印象は、大事」


「レイスは素敵だよ。大丈夫」


 俺はニコリと、レイスに言った。


「……アインスは優しい。惑わされては、いけない」


 だけどレイスは、そう言うと、俺から視線を反らせる。俺は一瞬戸惑い、そして1つの事に思い至り、歓喜した。


 ーーーこれは、まさか反抗期!?

 いいぞ、レイス! 素晴らしい成長だ!

 あ、……だけど、その内にもし、“アインスクサイから、近づかないで”とか言われたらどうしよう? そうなったら、俺はもう立ち枯れるしかない……。


 そんな想像もして、ちょっと泣きそうになった。


「だけどレイス、随分エルフにこだわるね? 他の創造物達は、僕が怒んなきゃ、早く潰したくて、うずうずしてるくらいなのに」


 シャボン玉の神を創り上げたゼロスが、顔を上げレイスに言う。


「そんな事無い。もふもふは保護する。ーーーエルフは特別。レイスの夢、クリスマスプロジェクト“㈱サンタクロース”に欠かせない人材。何としてでもスカウトしなければいけない」


「株式会社なの? 初めて聞いたよ。レイスなら、どんな夢だって簡単に叶えられそうだけどね?」


「……ゼロス、このプロジェクトは、そんな簡単なものじゃない」


 あはは、と笑うゼロスに、レイスは実に神妙な顔で、話し始めた。


「まず、世界中の子供達にプレゼントを配る。これだけならレイスだけで簡単に出来る。だけど問題は、レイス以外の者共に手伝って貰わないといけないという縛りがある事。クリスマスエルフが世界中の子供達の願いをリスト化し、願いの品を、うさぎと野鼠と、栗鼠(りす)が、トンカチやノコギリを手に作り上げる。それらをソリに全て積み込み、空を駆けるルドルフと共に、一夜の内に子供に見つかる事なく枕元か、ノエルの根本に置いてくる。それが、このプロジェクト成功の為の、絶対条件」


「それは……確かに、壮大かつ難題だね。独りでするなら、至って簡単なのに……。うさぎとか、ノコギリをどうやってひくの? 」


「そこはまだ考え中。だけど、解決され次第、神子を創造して、残酷に死なせるつもり」


「そこは省いていいんじゃないかな!?」


 ゼロスが慌ててレイスにツッコミを入れた。




 ーーーリーン、シャンッ、シャンッ、リーン……




 そんな話をしていると、森の中から、美しい鈴の音が聴こえてきた。

 どうやらハイエルフ達が来たようだ。


 しかし、ハイエルフ達は本当に2柱の事を良くわかっている。

 その鈴の音を合図に、2柱は示し合わせたかの様に空の彼方に飛び去った。





 ーーーそう、幼いエルフ達の前に、神々しい登場をするために。





エルフシリーズしばらく続きます。

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