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神はルシファーの献身に一粒の愛を赦し賜うた



 

 ―――地の底から亡者の嘆きが聞こえる。




「もうマジ聞いてくださいよルシファー様! ホント一体俺が何をした?! って話っすよ!」


 そしてそんな嘆きにルシファーは片手間に相槌を打っていた。


「うんうん聞いてるよー(……あ、また石版回収しに行かなきゃいけねーな。オレの石版、隠したとこにまだちゃんとあるかな……?)」

「……マジすか? ウンコ座りりながらデーモンのケツ眺めてるようにしか見えないすけど」

「聞いてるってばー! あとケツじゃない。尻尾の造形美を観察していたんだ」

「ケツより俺! 俺の話聞いてくださいッてば!」

「はぁ……ったく。あー……ハデスくん。辛かったねー可哀想にねー……ってか、愚痴ばっか言ってねえで早く土魔法の重力操作覚えろ。お前、弱過ぎ」

「んな?!」


 ハデスは特にゼロスの希望があった訳でもなく、初めてルシファーが独断で魂を再生させた者だった。

 生前ハデスはその純粋だけど少し癖のある性格から、利用され、陥れられ、無実の罪で捕らえられ、闇の中での拷問の末にその生を終えたのである。


「でたー鬼対応。マジでキチー。つーかルシファー様、何で土魔法を俺に使わせようとするんスカ?」

「だってお前復讐したいんだろ? 土魔法が使えたら泥人形とか作って相手を超ビビらせられるだろ。お前のトボケた面の無害な幻影だけで相手がビビるか? ただ殺したとして怨みが晴れるか? マジでヤる気あるの? 復讐なんてビビり泣かせてこそだろが。ってか、これお前に何回話した? 馬鹿の知り合いは居るけど、こんなアホは見たことないよ。ほんとアホの子だね。ハデス君は」


辛辣に畳みかけるルシファーだが、ハデスはまるで応えていない。


「うぃーす。で、土人形で何を作ってビビらすんスか?」

「アホ! 自分の死体だよ! 殺したはずの奴が襲ってきたらビビるだろ! これも何回話してると思ってんだよっ! もうお前のあだ名“迷王”な。マジでアホすぎる」

「うぇ―――い! キングゲッチュー!! だけどいいんすかね? そりゃ殺したいほど憎いすケド、不殺を説くゼロス神様怒んないスか? リアル神の裁きとか俺超ヤベー」

「その点に関しては、ゼロス様は元々“隣人を愛せ”と説かれてるのに、やってねーそいつの自業自得と言える」

「マジスか?! シャーギッタギタにしてやんぜぇー!!」

「但し復習を果たした後、オレがそいつの魂を拾い上げても文句言うなよ。つかそん時は復讐も終わってるんだから怨みは忘れて仲良くしろ。虐めるとか恰好悪ぃ事するなよ。やったらプレスだかんな」

「うっす! 誓うっす! マジでルシファー様鬼優しいスね! 神対応すわ」

「鬼なの? 神なの? ホントにお前は迷王だな……」



 

 ―――こうして光の幻影で姿を保つ聖者達とは違い、冥界に落ちた亡者達はルシファーより土魔法を叩き込まれ、世界へ物理的な干渉能力を身に着けていった。

 そして魔窟を卒業した亡者達は、外に出て“アンデッド”と呼ばれる新たな魔物として認知されていく事になる。


 因みに、あの1癖も2癖もある初代亡者・ハデスは永い時の中で力をつけ、やがて死者達のカリスマ的存在として“冥王・ハデス”と呼ばれ始めるのだけど、それはまだまだ先の話だ。





 ◆◆◆





 それから数百年後のことだった。

 レイスがふらりと、ルシファーの住まう地下にやって来たのである。


「ルシファー調子はどう? 最近“アンデッド軍団がよく働いている”とラムガルが喜んでいるのを聞いた」


 この頃になるとアンデッドの種類も増え、ゾンビ系、スカル系、幽霊なんかのアストラル系と、バラエティも豊かになってきていた。


「レイス様! こっちは絶好調ですよ。 ラムガル様がそんなことを? まぁ、ここを出ていったアンデッド達は皆土魔法が使えるよう仕込んでますから、総じて農耕も得意ですしね。ラムガル様のお力にもなれて良かったです。所でレイス様はこちらにどういった御用で?」

「ん。頑張ってるようだし、今度何かお前に差し入れをしようと思っている。何が良い?」


 レイスの提案にルシファーの瞳が一瞬輝く。……が、すぐに肩を落とし首を横に振った。


「えっ! じゃあ、―――……いえ。やっぱりいいです」

「? 言ってみるといい」


 レイスの追求にルシファーはポツリと呟いた


「……いえ、嫁に会いたいな、なんて……」

「―――わかった。会わせてあげる」

「え?! いいんですか!?」

「アレから、レイスもちゃんと真面目に研究して、部位無しで魂の復元が出来るようになった。後で、やり方教えてあげる」

「……―――マジか、やったぁーー!!」


 喜ぶルシファーに、レイスが釘を指す。


「ただし、ルシファーの(つがい)の魂は、今の世代を生きる生き物共に、振り分けられている。回収すれば、41匹が廃人。1匹が死亡する」


「え! えーー……それはちょっと、―――……いや、やっぱりやめときます……。流石に今を生きてる世代を潰してまでなんて、あいつも怒るだろうし。 ……って、まさかオレの時も何人かが……!?」


 冷や汗を流すルシファーに、レイスは淡々と告げる。


「いや、ルシファーは、ありえない確率で、一粒残さずフリーだった。………嫌われてる?」


「それは無いです。……じゃ無いと、まじ凹みますから……」


 ルシファーが、目に涙をためながら笑う。

 少し気まずさを感じたレイスが、話題を戻した。


「―――まあ、だけど一晩くらいなら良いと思う。死亡する者は、それだけ多くマナが含まれているということ。一晩だけ、その者にマナを集結させ、翌朝にはまた元通り散らせば影響はない。他の者にしろ、一晩くらい廃人になってても、誰も気付かない」


「……そうですかね? だけどまぁ、影響がないなら、……会いたいです」



 そうして、ルシファーの日々の頑張りを讃え、50年に一度、一夜だけ、リーナの魂を復活させる事を許された。

 始め、1000年に一度とレイスに提案されたんだけど、ルシファーの泣き落としにより、50年に一度となったのだった。


「その位なら、人間の寿命を考慮しても、一人あたり1回か2回くらいだから平気だろ。……あ。でも、幼女時期に当たったらどうしよう? 人間の肉体に手を出す気は無いが、それでも犯罪じゃね? 後、男になってる時とかも微妙かも…。……ま、いいか!」


 そしてその日は、ルシファーの花嫁が復活する日とされ、後に鎮魂祭と呼ばれる、厳かなイベントの日となる。

 言い伝えでは、鎮魂祭とは、死者に逢える奇跡の日と言うことなんだけど、それはまた、いつか別の機会に話すことにしよう。




 やがて、冥界に亡者の数が増えるにつれ、冥界を統べるのは、ハデスに任せ、ルシファーはサタンの現し身として、魂の回収に勤しむようになる。


 また、悪魔の仲間とされるルシファーや、亡者の王である冥王ハデスに、魔人ガルシアの話を持ち出すと、何故か逃げてゆくという事実から、ガルシア伝説にとうとう尻尾が付き、1匹の魚が完成してしまったらしい。


「―――おのれ、冥王ハデス……! 強敵なり! だがこの命散らそうと、必ずガルシア様の魂を継ぐものがお前を打ち破ろうぞ!」


「マジで!? ルシファー様、怒んの? チョーやべぇ! ずらかんぞヤロー共、プレスされっぞ!!」


 ―――ーードタバタドタバタ……


「……え?」



「―――そうか、お前がルシファーか!我こそは、伝説の魔人ガルシアの……」


「ヤメテッ! もう、何も聞きたくないっ! オレは何も知らない、関係ナイからっ!!」


 ―――ーーピュ―――ーっっ……


「……居たノルマン学園を首席で……って、あれ? ルシファーが逃げ出した? ガルシア様ってもしかして、神……?」




 ◇




「―――人間とは、恐ろしい……いいか。油断をするな。隙を見せれば、たちどころにとんでもない事になるぞ」


 今日も地の底では、ルシファーが、デーモンや亡者達に、戒めの言葉を呟く声が聞こえる。



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