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世界樹の呟き 〜チートを創れる可愛い神々と、楽しく世界創造。まぁ、俺は褒めるだけなんだけど〜  作者: 渋柿
最終章 起点回帰【邪神と呼ばれた少女は世界から溺愛される】
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赤髪の少年

 家を取り巻くグレイッシュパープルの光。それは、輝く極小のルーン文字で描かれた魔法陣の集合体だった。

 幾億の難解な魔法陣は絶えず流動し、まるで光の渦のようにも見えているのだが、イヴはその光の渦から違えることなく一つの魔法陣を抜き取った。


「これが忌諱と認識阻害の魔法陣だよ。何か条件を満たさないと解除されないようになってるみたい」


 イヴはそう言って抜き取った魔法陣を手で握り潰つと、手で払うような仕草で建物を包んでいた光の渦を消した。

 同時に、三人が感じていた建物に対する不安や焦燥が嘘のように消える。

 だが、手をニギニギと動かすイヴを見詰めるクロの表情は、まだ不安気であった。


「ね、ねぇ……イヴ。それ、レイルさんがわざわざ仕掛けまでして付けてた魔法って言ったよね? 握りつぶしてよかったの?」

「え? だってここは喫茶店だよ。こんなのない方がお客さんは入ってきやすいよ」

「それはそうだけど……」


 そんな二人の後ろではソラリスとミックがぽつりぽつりと喋りながら、その様子を放心気味に眺めていた。


「今なんかすげーもん見た気がするんだけど……」

「イヴが変なことしてるなんていつもの事でしょ。やっちゃったものはもう止めようもないわ。それよりレイルって誰よ?」

「確か、クワトロに薬出してる薬剤師とか言ってなかったかな?」


 そして制止しようとする者のいなくなったイヴは、意気揚々と扉に手をかける。


「もしかしたらマリーちゃんにも会えるかな?」

「マリーか。しばらく会ってないな。元気かな」


 だがその時、ふとイヴの動きが止まった。


「……あれ、開かない」




 ◇◇◇



 それから四人はその店の扉を押したり引いたり、上下左右にスライドさせたり、果ては体当たりまでして開けようと奮闘した。

 だが変哲のない木の扉は頑として開くことはなく、4人が肩を落として諦めようとした時だった。

 突然、後ろの歩道から少し高音の澄んだ声がかけられた。



「そこはね、ただのお店じゃなくて“ダンジョン”って呼ばれる場所なんだよ。だから鍵となる特別な条件を揃えなくちゃ、扉は開かないんだ」



 四人が驚いて一斉に顔を上げて振り向くと、いつの間にか一人の子供が立っていた。

 その子の年齢はイヴ達と同じ8歳くらい。白を基調とした上等な服を着ていて、その背には慎重に見合わない大剣を背負っている。

 風に揺れる燃えるような赤い髪と、吸い込まれそうな金の瞳、それに透き通るように白い肌をした美しい容姿を持つ少年だった。

 4人が驚きに目を見開いていると、その子供はイヴ達に気さくに話しかけてきた。



「や、こんにちは。はじめましてだね。僕は一応“勇者”なんて呼ばれてたりもする者なんだけどぉ、今後は“ユウヒ”って呼んでね♪ よろしく」



 だが直後、突然イヴが凄い勢いでクロとソラリスの間を駆け抜け、ユウヒの前に立ち塞がる。

 そして激しくユウヒを睨みながら唇を噛んだ。


「皆……下がってて。―――この子強い。多分私より……!」




 《クロ視点》



 一瞬、俺は何故イヴがユウヒに向かって威嚇の構えを取っているのか分からなかった。

 俺やイヴと身長も然程変わらない子供。大きな剣のようなものを背負っているけど、敵意など欠片も見えない。

 俺はミックやソラリスと同じく、ポカンとしながらイヴに睨まれ困惑するユウヒを見詰めていた。


 するとユウヒは慌てて押し留めようとするかの様に、手を上げながらイヴに抗議をしてきた。


「ちょ、ちょっと待って! 何で急に戦闘態勢に入っちゃうわけ!? ぼ、僕はただ君達に挨拶したかっただけなんだけど!?」


 イヴは瞬きすらせずユウヒを睨んだまま言い返す。


「私はシアンに皆を守るように言われてるの。それにルドルフが“強い奴との挨拶は、いつだって拳でするもんだ”って言ってた!」

「あんな馬鹿の言うことは真に受けないで!!」


 涙目で必死に言い返してくるユウヒに、イヴは警戒を解かないまでもはて?と首を傾げた。


「……ルドルフの事、知ってるの?」

「知ってるよ! それにシアンの事も! って言うか、シアンから君達の自慢話をよく聞いてたんだ。だから僕も、君達と仲良くなりたくて、今漸くこうして会いに来たんだ! ―――名前だって知ってるぞ。イヴちゃんにクワトロ君、それにソラリスちゃんとミカエル君だろ!」


 名を呼ばれ、呆然と固まっていたソラリスとミックが動き出した。


「わ、私達のことを知っているの? 貴方本当に……勇者様なの? 嘘なら勇者を騙る罪で大変な事になるわよ」

「本当だよ。証拠に聖剣ヴェルダンディだってここにある!」


 ユウヒはそう言って、イヴを刺激しないようにか大剣には触れることなく後ろを向いて、ミック達に不思議な光を放つ剣を見せていた。


「ほ、ホントに本物の……? 伝説の存在じゃないか……」

「やー、それ程でも」


 それからまたユウヒがこちらを振り返った時、ふと俺とユウヒの目があった。

 ……なんだろう? 


 ユウヒは何故かそのままじっと俺を見詰めていて、やがてぽんと手を打つと、思い出した様に話し掛けてきた。


「あ、そうだ。僕ね、クワトロ君に会えたら一つ聞かせてもらいたいことがあったんだ」

「……な、なに?」


 その言葉に、俺は咄嗟に身構えた。

 フェリアホに言われた事を思い出したからだ。

 こいつは父さんから俺達の話を聞いたと言った。父さんが俺達についてどこまで話したのかは知らないけど、こいつもきっと俺の過去を知ってる。……だからこいつもきっと俺を人間じゃないって言いにきたんだ……


「クワトロ君ってさ、凄く綺麗な錫を鳴らすんだって? 是非一度聞かせ欲しいんだけど、どうだろう?」

「……え?」


 ……錫?

 てっきり嫌な事を言われると思っていた俺は、思わず上ずった声をあげた。


「“え?”じゃないよ。聖獣や動物達がいつも噂してるんだ。一生に一度は絶対に聴くべきだってね」


 想定外の話に俺がなんと返したらいいのか言葉を詰まらせていると、漸く警戒を解いたイヴがあぁ、と頷いて口を挟んできた。


「クロは小さい頃から毎日錫の練習してたからね。上手だよ」

「それそれ! ね、ちょっとだけ!」

「まぁ、……いいけど」


 俺は困惑しながらもミスリルの錫杖を手にすると、それを鳴らした。


 俺が錫の音が響かせると、いつも近くにいる動物達が集まってくる

 今日も小鳥達が集まってきたのだけど、木々の枝や屋根の上じゃなく、この時は何故か好んでユウヒの肩で羽を休め始めた。

 小鳥達は2羽3羽とどんどん増えてくる。

 だけどユウヒは嫌がるどころか、肩だけじゃ狭いだろうと両腕を平げ、より多くの鳥達の止り木となってあげていた。

 腕を広げ、両腕と頭に合わせて15匹もの小鳥を乗せるユウヒの姿はなかなか滑稽で、俺はその姿に思わず笑ってしまう。


「あ、やっと笑ったねクワトロ君。やっぱみんなで聞くと楽しいよねぇ♪」


 歌うようにそう言ったユウヒに、俺は更に笑いながら言い返した。


「違うよ。ユウヒの格好が変だから笑ったんだよ」

「失敬だなぁw」


 ユウヒは冗談めかしながらそう言いつつ、それでも小鳥達を驚かさないように気を付けてクスクスと笑っていた。


 ―――多分この時から、俺はこのユウヒと言う子を好きになり始めていたんだ。





寒すぎて隙きあらば家籠りしてしまい、結果筆が進む……!

と言う訳でまだ数日は更新頻度あがります(下手すれば毎日投稿?)


長くなってきてるのに読んでくださりありがとうございます!( ;∀;)

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