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世界樹の呟き 〜チートを創れる可愛い神々と、楽しく世界創造。まぁ、俺は褒めるだけなんだけど〜  作者: 渋柿
最終章 起点回帰【邪神と呼ばれた少女は世界から溺愛される】
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歴史を巡る旅 3 ー人と生きる魔物の国④ー

 

 ―――大きな人族(ジャイアント)達の居住区を抜け、牧草地や魔獣舎を通り抜けると、彼方此方に手入れされた畑や小屋が見え始めた。

 作業をしているのは、オークやミノタウロスなどの魔物達だ。

 そんな長閑な僻地を過ぎると、徐々に家が増え始め、大きな川を超えると、そこはもう、都市と言っても過言ではないほどの賑やかさとなった。


 石や木で組まれた、個性的で統一性のない家々が、隙間なく並ぶ町並み。

 それらの家は、ちょうど身長が高めな人間の大人が暮らすのにほど良さそうなサイズである。

 そしてこの区域こそ、トゥーリノの中間区にして、混雑する大小全ての種族達が踏み入る事のできる中心地なのであった。


 馬車から降りたシアンは、早速イベントの特設会場とやらへ向かおうとしたが、それを子供達が一丸となって阻止した。


「だから見てる間、ただ待っててくてればいいんだって! 別にルシファーはシアンと関係ないのに、なんでそんなに嫌がるの!?」


 そう言われてしまえば、赤の他人で知らない人と言い張るシアンは頷くしかなかった。


 そして彼らは街を散策しつつ、まず向かったのは北住居区の端にある薄暗い公園。

 まるで墓場のような薄ら寒い公園だったが、キャンペーン中もあり、シアン達以外にも多くの観光客や冒険者達が集まっていた。

 集まった人々は皆、公園の中央に設置されたその石像を眺めては感嘆の声を漏らしている。


「おおこれが……。まさに冥界の統治者って感じの像だな、恐ろしいぜ」

「あぁ、像だとわかっていても震え上がっちまうぜ……」


 彼等が囁やき合いながら見つめる先にあるのは、骸骨で出来た玉座にドカリと脚を組んで座る男の像。

 その表情は険しく、まるで悪鬼の如き修羅の顔で、像の正面に立つ者達を睨みつけていた。

 そしてその両サイドと背後には、7匹の悪魔長が跪いて控えており、その足元や玉座の下には踏みつけにされ、苦悶の表情を浮かべる亡者達が累々と重なっている。

 そしてその像の下には、黒いプレートに金文字でこう記されていた。


【英雄№6:冥界の統治者・ルシファー像 〈正教会本部寄贈〉】


 ……そう。それは普段はふざけてばかりだが、実は照れ屋なデーモン達による理想の提示。


 だが当然そんな事は欠片も気づかないシアンは、ただ凄まじく手のこんだイタズラだと勘違いして頭を抱えたのだった。


 ―――そして、やめておけばいいのに更に二体目。

 シアンはフラフラと覚束ない足取りで、地図を頼りに最後のルシファー像を見にやってきた。

 そこは東住居区にる、陽当りの良い美しい噴水公園。

 そこでも集まった人々がその像を見上げ、ヒソヒソと囁き合っていた。


「なんて美しい……まるで心が洗われるようだわ……。だけどなぜ闇の申し子である冥界の統治者ルシファーが、このような聖なる存在として讃えられているの?」

「それは、ルシファーにあるもう一つの言い伝えのせいでしょう。憤怒の化身であるルシファーは、清らかな魂達を前にするとその身が浄化され、天使と成ってその魂を楽園(エデン)に導くと言われているのですよ」

「まぁ、それでこんな……」


 そんな話をする観光客達の前には、慈愛に満ちた眼差しで彼らを見下ろし、空に手をかざす男の像が建てられていた。

 像の男は丈の長いキトンをゆったりと身に纏い、その頭上には輪光が乗せられている。

 更に背から伸びる翼は骨ではなく、柔らかな羽毛が美しく並ぶ柔らかな天使の翼だ。


 そして像の下の黒いプレートにはこう刻まれていた。


【英雄№6:魂の導き手・聖ルシア像 (ルシファー) 〈ギルド組合総本部寄贈〉】


 そう。それは清らかな魂達の、遥かなる願望が詰め込まれた幻の救世主。

 見る者達を思わず跪かせ、祈りを捧げたくなるようなその像だが、それを見たシアンは絶望と悲しみに瞳を染め上げ、どこかのカエサルのようにポツリと呟いたのだった。


「―――……マーリス、お前もか!」


 普段おとなしい子ほど、行動を起こした時には凄まじいものが出来上がるのであった。



 ◇◇◇



 そうして命からがらにも666のスタンプを集めさせたシアンだったが、結局彼は市場(マルシェ)の奥にあるイベント特設会場に到達することは出来なかった。


「イヴ、クロ……。すまん。俺はもうこれ以上先には進めない」


 シアンがそう言ったのは、まだ市場(マルシェ)の熱気を僅かに感じる程度の広場の端。

 クロは心配そうにシアンの顔を覗き込んだ。


「どうしたの父さん。顔が真っ青だよ」

「ちょっと……な。悪いが宿に先に戻っていてもいいか?」

「いいよ!」


 そう答えたイヴにシアンは弱々しく微笑み掛け、子供達に言い聞かせ始めた。


「そうか。ならよく聞くんだ。もし危険な奴らが現れたら、イヴとクロがソラリスちゃんとミックを守ってやるんだ。そしてソラリスちゃんとミックは“ちょっとそれ、普通じゃない”って事を二人がしてたら止めてくれ……頼む……」


 そして、日が暮れるまでに4人も宿に来るように、後絶対にルシファーグッズは購入しないようにと付け加えて、少しの貨幣をそれぞれに握らせると、シアンは逃げるように市場(マルシェ)の反対方向へと消えていった。

 4人はシアンの背が見えなくなると、早速市場(マルシェ)へと踏み込んで行った。


 市場(マルシェ)には様々な看板の店が軒を連ねるが、その店内に商品はない。それでも店頭では店主と客達は、楽しげに交渉や世間話をし、一風変わった賑わいを見せていた。

 だが更に奥に進み4人の目指すイベント特設会場に近づくに連れて、その賑わいはまた違う異様な賑わいへと変化してきた。

 特設の露天商のテントが所狭しとひしめき合い、商魂逞しい商人達が、厳しい規制をくぐり抜けて商品化した品々を並べて、売り捌くべく声を張り上げている。


「キャンペーン限定! ルシファー様クッキーはいかがですかぁ!!」

「ルシファー様茶のご試飲はいかがですかぁ? 只今キャンペーン中につき、ご購入の方にはルシファー様マグカップを漏れなくプレゼント中ですぅ!」

「ルシファー様人形にルシファー様の肖像画! 伝説を綴ったタペストリーも人気になっておりまぁーす! お土産に最適ですよー!」

「ルシファー様ぬいぐるみ・限定百個はまもなく終了しますよぉー! お求めの方はお早めにっ!!」

「“るしふぁー・さ・まんじゅう”! 眼帯マークがかわいい、コロコロもちもちの“るしふぁー・さ・まんじゅう”をお待ちの方は、こちらが列の最後尾になりまぁーす!」


 そう。彼等こそが、シアンを本丸(イベント会場)から遠退けた最強の兵士達なのであったのであった。


 そしてそんな事など知らない4人は、間もなくイベント会場に到着し、集めたスタンプとプレゼントを無事交換してもらった。

 因みにスタンプを集めて何を貰ったかといえば、種族の好みに合わせたスイーツである。

 人間用にはチョコレート・ケーキ。そしてエルフ用にはハーブキャンディといったもので、4人は会場の一画に用意されていたカフェスペースに座ると、貰ったお菓子を食べながら感想を言い合っていた。


「あ。美味しい。……けど」

「……えぇ。なんだか食べたことのある味ね」

「これなら俺も作れるよ」

「なんでもこのお菓子、ルシファーが開発したレシピを再現したスイーツとか言ってたな。……エルフの好みを研究するなんて、長い事生きてるとやっぱ暇なのかな……」


 やがて皆がそれらを食べ終わった頃、ソラリスがカタリと席を立って3人に言った。


「さ、それじゃあ折角だから他も見に行きましょう。シアンから日が暮れる迄街の様子を見てきていいって言われてるし、買い物できるくらいの資金も貰ったわ。ミックは歌を集めに行ったりもしたいんでしょ?」


 だがミックは首を横に振る。


「いや、トゥーリノは歴史が途切れ途切れな上、さほど深くもない。大した歌も文献もないからいいよ。それより、ここの人達の暮らし振りや、各種族間に課せられたルールなんかを調べる方が面白いと思うんだよな」


 と、その話にイヴが元気よく手を上げた。


「だったら、さっき気になる喫茶店を見つけたの! シアンが飲食店は社交の場だって言ってたし、行ってみようよ! 色んな話が聞けるかもしれないよ」


 その提案に一同は頷き、早速イヴの案内でその喫茶店に向かう事となったのだった。―――……だが。



◇◇◇



「……こ、こんな所に店なんかあったっけ? さっき大きなカフェがあったし、あっちでいいんじゃないかな?」


 ダッキーの背に乗ったミックが、先頭を歩くイヴに不安げに声をかけた。

 4人が進むのは変哲のない閑静な住宅地。

 なのにイヴ以外の3人の顔は随分不安げだ。

 そしてとうとうクロも眉を顰めながらイヴに声を掛けた。


「ねぇイヴ。あんまり奥に行くと危ないかも知れない。引き返そうよ」

「危なくないよ。ほら、見えたよ。あそこの蔦の絡まった建物がそうだよ」


 イヴがそう言って1軒の建物を指差した瞬間、ソラリスがイヴの前に飛び出し、慌てて声を上げた。


「だ、駄目よ! あそこは駄目っ! シアンにあなた達を任された身として、あそこに行くことは断固として反対するわっ! なんだか分かんないけど、凄く嫌な感じがするのよ!!」


 だがイヴはソラリスの警告に頷きながらも、ソラリスの脇をすり抜けてその建物に近づいて行く。


「―――うん。確かに嫌な感じはすると思う。だってこの建物全体に【忌諱】と【認識阻害】の魔法が掛けられてるから」

「……え?」

「魔法?」


 思わぬ言葉に三人が驚いてイヴを見た。


「そう。今取ってあげるからちょっと待ってね」

 

 そう言ってイヴは建物の前で歩みを止めると、指先で光る魔法陣をサラサラと空中に描き、それを建物に向かってピンと指で弾く。

 魔法陣はそのまま建物に吸い込まれるようにして溶けて消え、その一泊後、突然建物は薄いグレイッシュパープルに輝く光に包まれたのだった。

 

「うわぁ!」

「な、なんなのこれ!?」


 驚きに悲鳴を上げるミックとソラリス。だけどクロはハッとしたように顔を上げイヴに尋ねた。


「イヴ、これってもしかして【マナの可視化】? それにこの色って……!」


 それは以前イヴがつい数ヶ月前に世界をマナ化してしまい、シアンに怒られた魔法。

 今回はマナの種類も範囲も指定しての行使だったが、その光景と色をクロはよく覚えていた。


 イヴは振り返ってクロに頷いた。


「そう。ここは多分“レイルさんのお店”だよ」


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― 新着の感想 ―
[一言] マスタぁー!!!レイルさん!! ((o(´∀`)o))ワクワク
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