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世界樹の呟き 〜チートを創れる可愛い神々と、楽しく世界創造。まぁ、俺は褒めるだけなんだけど〜  作者: 渋柿
最終章 起点回帰【邪神と呼ばれた少女は世界から溺愛される】
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おままごと ㊤

 

 ―――カイロンと別れたシアン達は、黒狼王の森の中で休憩がてらおままごと遊びをしていた。


 本日のお題は“貴族のお食事会ごっこ”だそうだ。

 切り株のテーブルに葉っぱのディッシュと小枝のカラトリーを並べ、公爵令嬢になりきったイヴが優美に微笑む。


「ほほほ、クワトロン王子殿下は週末はどうお過ごしのご予定で?」

「ああ、森へ狩猟に行くつもりだ。だがご令嬢の予定次第でそれも変わるかもしれないね」

「私の予定、と言われますと?」


 可愛らしく首を傾げるイヴに、クロは流し目で語り始める。


「うん。ご令嬢の貴重な時を少しでも僕に分けてくれるなら、僕は狩猟なんかより澄み渡る湖畔を眺めながらボートに乗りたいね。他愛ない話をしながら本を読み、小鳥達のさえずりにみみをかたむけながら語り合うんだよ」

「まぁ素敵」


 イヴは笑うが“イエス”とまでは答えない。社交辞令と分かっての受け流しだ。

 鮮やかな流しにクロは肩を竦め、イヴの隣でナイフとフォーク(※小枝)と必死で格闘しているソラリスに視線を送ると呆れた声でため息混じりに言った。


「……ところで、そなたの御友人はナイフとフォークもまともに使えないのかい? まったく、これだから平民上がりは……」


 不快げにブツブツと溢すクロに、イヴが悲しげに抗議の声を上げる。


「王子様。私の友達を悪く言わないで。それにソラティスさんのお父様は、とても洞察力のある立派な学者様ですのよ」


 そんなイヴに、クロは優しく慰めるように謝る。


「そうだったね。僕の失言だった。どうか気を悪くしないでおくれ」


 イヴはすぐにまたにこりと微笑むと、ポンと手を打って報告する。


「そう言えば先日、私が幼少の頃お世話になったサリバン先生をソラティスさんにご紹介したの。先生はソラティスさんの勤勉さを褒めてらしたわ」

「そうかい。ならお詫びも兼ねて、サリバン卿と共に彼女を今度開かれる立食パーティーにご招待しよう。まぁ、カラトリーの使い方なんて知らなくても楽しめる筈だから気楽に来てくれればいいさ。あぁでも、ダンスのステップは踏めるのかな?」

「うふふ、リズムに乗れれば問題ありませんわ。ソラティスさんでしたら、きっと引く手数多でございましょう」


 歓談の中に混じる嫌味……。だがカラトリーの使い方すら分からないソラリスは、ただクッと呻いて耐える事しか出来ない。

 だが歯を噛み締めて耐えるソラリスに、クロが小さな声でヒソヒソと話しかける。


「―――ふっ。念の為言っておくが、勘違いしない方がいいよ。誉れに値するのはあくまで君の父上であって、君はこんな所にいるべき人間ではないのだから……」


 ソラリスがとうとう手にしていた小枝(※ナイフとフォークのつもり)をパキンッと折って、彼らの保護者にクレームを入れた。


「ッシアン!! 何なのこれ! このおままごと、クオリティー高すぎるんだけどっっ!?」

「ソラティスさん。シアンとは誰です!? 私の名はサリバン。サリバン先生とお呼びなさいっ!」


 腕を組み、エアメガネをクイッとするシアンにソラリスが怒鳴る。


「しつこいわっ!」


 とその時、ダッキーに乗ったミックがエア髭を撫でながら登場した。


「フォッフォ。やぁ皆の者、楽しんでいるかね」


 クロとイヴがスッと立ち上がり、風雅な仕草で頭を下げる。


「御父上、いらしてくださったのですか」

「うむ。公務が早く片付いてな」

「ご機嫌麗しく、国王陛下。―――金栄の御聖光が降り注ぎますように」

「うむ。そちにも緑栄の実りがもたらされん事を」


 そしてもはや演技すら諦めたソラリスが、騒々しくミックに突っ込んた。


「ってミック! 何普通に馴染んで王様役をこなしてるわけ!?」

「え? 歴史知るには王家(ロイヤル)は必須だから聞きかじり程度にはね」


 そうサラリと答えたミックに、ソラリスは深い溜め息を吐きながら頭を抱えた。


「作法だけならまだしも、上級貴族の嫌味までリアルすぎるわ……」


 ……たかが子供のおままごと。されどそれを追求していけば、その世界観を前提とした即興演技に他ならない。

 そしてこの二人に至っては、各界のトップによる監修がされた、どこまでもリアルに近い前提下での“おままごと”が日々繰り広げられているのだった。


 イヴはうなだれるソラリスを見て、役を崩しクロに声を掛ける。


「でも昔からジョーイさんや薬局のおじさんに、よくこれで遊んでもらったんだよね」

「うん。レイルさんの悪役王子役が凄く上手かったんだよね。俺も頑張って真似してみるけど、全然敵わないや」


 そう。確かに彼の悪役王子はこんなものではなかった。


「うん。クロは全然ゾクゾクしないもん。でもジョーイさんも悪役令嬢の役上手かったよ? シンデレラの継母役になって、シンデレラ役のシアン虐めてる時とか、凄く悪そうだった」


 そう。あれは二人が“いじめっ子役”にハマった頃。よく二人は“いじわるなお姉さん役”になって遊んでいた。

 因みにそのシンデレラごっこは、大抵優しい魔法使いが現れる前に終わる。

 子供達はシンデレラを虐め尽くして満足してしまうので、そのシンデレラストーリーはいつもガラスの靴を貰えず、王子にも出会ない、救いのない物語に終わるのだった。


 ―――まぁ、そんな余談は置いておいて。

 ソラリスがウンザリしたように、折れたフォークのつもりの小枝をつまみ上げて弱音を漏らす。


「だけど、ほんっと貴族って面倒。なんで食事一つにグラス4脚、スプーンやフォークを11本も使うわけ? 規則だマナーだって意味分かんないし」


 そんなソラリスにクロが肩を竦めて言った。


「そんなこと言って、この中で本物の貴族はソラリスだけだろ。それにおままごとは規則があるからおもろいんだ。なんでもオッケーだったら、それこそ意味分かんなくなるよ」

「ふーん……って、あれ? クワトロはもう“おままごと”はしないんじゃなかったっけ? なんでここにいるの?」

「……っ」


 ソラリスの刺々しい言葉に、クロはじわりと目に涙が浮かべる。

 見かねたシアンが、フォローするように慌てて手を打って声を上げた。


「はいはい、気が変わることもあるよな! 皆で遊ぼう、皆で! ―――それにソラリスちゃん。クロは今、凄ぉくいい事を言ったんだぞ?」

「いい事?」

「俺が?」


 ソラリスと、ついでにクロも首を傾げてシアンを見上げる。

 シアンはピッと指を立てて説明を始めた。



突然ですが、入力端末に使っていたスマホが壊れ、投稿に間が空いてしまいました……。

ともあれ、今後もよろしくおねがいします。

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― 新着の感想 ―
[一言] マスターはすごいなー
[気になる点] 「うん。レイルさんの悪役王子役が凄く上手かったんだよね。俺も頑張って真似してみるけど、全然敵わないや」  そう。確かに彼の悪役王子はこんなものではなかった。 「うん。クロは全然ゾク…
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