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世界樹の呟き 〜チートを創れる可愛い神々と、楽しく世界創造。まぁ、俺は褒めるだけなんだけど〜  作者: 渋柿
最終章 起点回帰【邪神と呼ばれた少女は世界から溺愛される】
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歴史を巡る旅 ー平原の一本松10ー

 

 カイロンが異次元試合を終えた二人の少年達を抱き締めた。


「マルクス! ビスマルク!! 無事か!」

「お、お父さん……っ」

「うええぇーん」


 ミックもダッキーに跨りソラリスに駆け寄る。


「そ、ソラ! 大丈夫なのか」

「ええ、なんとかね……」


 そんな、まるで大戦の最前線へ送られた者達の奇跡の帰還を出迎えるような感動の抱擁をする面々に、イヴが弾む声で言った。


「楽しかったね! またやろうねっ」

「っやだよ!」

「うあぁぁーんっ、パパぁ! ごめんなさいっ、ボクいい子になるから! 好き嫌いもしないしご挨拶もするよ。我儘も言わないからっ……あの人達のところに行かせないでえぇっ」


 全力で拒否するマルクスと、まるでお仕置き部屋行きを命じられた子供のように泣きじゃくるビスマルク。

 そんな二人にイヴは困惑しつつ、助けを求める様にソラリスに目を向けた。

 ミックがハラハラと見守る中、ソラリスは言った。


「私もやらないわ」

「……」


 イヴは一瞬キョトンと目を瞬かせるが、直にその言葉の意味を理解してしょんぼりと肩を落とした。

 シアンもそんなソラリスとイヴを見て、少し残念そうに……だけどしょうがないとでも言うように、小さなため息を吐く。


 だけどソラリスはそれで終わらず、容赦なく肩を落とすイヴに言い放った。


「だってイヴ。あなた自分が強い事知ってるのに、自分が楽しいからって本気でやったでしょ。何が“またしようね”よ。イヴにそんな気はなくても、周りから見たらそれってただの虐めだわ」


 ソラリスの指摘に、イヴが驚いたように顔を上げる。

 しんと静まり返った中、ふとシアンが「ヒュー」と口笛を吹いた。

 イヴは自分を見下ろすソラリスに、ムッと頬を膨らませて言い返す。


「じゃあっ、ソラリスは私が遊ぶのは駄目っていうの? そういうのは“意地悪”って言うんだよ!」

「言わないわ。“あれでいい”なんて言うのはイヴの身内だけよ」


 イヴは視線を巡らせ周りに目をやる。

 シアン達は優しげに微笑んでいるが、カイロン一家は顔を蒼白にしながらイヴを見つめていた。


「う……、で、でも私だって元々は強くなんかなかったんだよ。でも、みんなを守りたいって頑張ってきたの。みんなももっと頑張れば強くなれるよ。みんなももっと頑張ればいい。―――だから、私は虐めてなんかないっ!」


 だがイヴの言い分をソラリスは鼻で笑いながら否定する。


「あ、そう。ならなんでビスマルクは泣いてるの? マルクスはあなたと目を合わせようとしないの? あなたの努力とか私達は知らないわ。だって昨日会ったばかりだもの。そんな私達から見たイヴって、ハッキリ言って強すぎて怖いのよっ。普通じゃない!」


 そう言い切ったソラリスだが、当人は全然怖がってなさそうな上、寧ろかなり威圧的な態度だ。

 そんなソラリスの押しに、とうとうイヴの目にじわりと涙が浮かぶ。


「うっ、でも……わた、わ……」


 あまり怒られた事がなく、喧嘩など当然やったことのないイヴ。

 カイロン一家から向けられる無言の視線とソラリスの威圧に、最早まともに声を上げる事も出来ず、イヴは言葉を詰まらせた。

 だけどそんなイヴに代わって、今度はクロがソラリスに声を上げる。


「―――ソラリス、もういいだろ。イヴは怖くないし悪くない。今だって皆無傷じゃん。突き指すらしてない」


 そう。確かに誰一人(外傷は)かすり傷一つ負ってはいない。

 だけどソラリスはそんなクロの言い分を即座に却下した。


「っ何がいいのよ!? クワトロやシアンがそうやって褒めておだてて甘やかしてるから、イヴは自分が変だってことに気付いてないの! いいの? このままじゃイヴはずっと一人ぼっちになるわよ! 可哀想だって思わないの!?」


 子供は他者の感情に感染しやすい。

 ソラリスの苛立たしげな金切り声に、とうとうクロも苛立たしげに怒声を上げた。


「煩いなぁ! なら、俺がずっとイヴといる。それでいいだろ?」

「煩いのはクワトロよっ、私は今イヴと話してるんだから黙ってて!」

「何言ってるの? 今は俺に訊いてきたじゃん! ソラリスは言ってる事が滅茶苦茶だよ」


 クロとソラリスが怒鳴り合い、イヴは声もなくシクシクと泣き始める。

 それに気付いたクロがソラリスを責め立てた。


「イヴを泣かすな!」

「ちがっ、泣かした原因はクワトロよ!」

「違う、ソラリスだよ!」

「私じゃないってば! そもそもイヴが泣きやすすぎるの! 私だったら泣かないわ! イヴも黙って泣いてないで、なにか言いなさい! あなたはこれでいいの!?」


 と、突然ソラリスにそう促され、イヴはしゃっくりを上げながらも律儀に答えた。


「ヒック……いくない……」


 途端、険しかったソラリスの顔にパッと喜色が浮かび、イヴを指差しながらクロにドヤ顔を向ける。


「ほらっ! ほぉーら見なさいクワトロっ! だからあなたは黙ってなさいって言ったでしょ!? フフーンっ」

「ちっ……」


 クロは小さな舌打ちをこぼし、黙り込んだ。

 イヴが涙を拭きながらソラリスに尋ねる。


「どうしたらいいの? 私、ソラリスや皆とも友達になりたい……」

「簡単よ。暴力的や競技的な遊びは禁止。見せるのも駄目。それだけよ」


 ふんすと鼻を鳴らしたソラリスにイヴは一瞬キョトンと目を瞬かせ、一拍後にまたボロボロと泣き出した。


「―――……。……え? じゃあ、何して遊ぶの? やっぱり私……私はっ」

「って、カードゲームとかなんだってあるでしょ!? 脳筋か!?」


 ソラリスの突っ込みに、イヴは「あぁ、そうか」と手を打った。


「じゃあソラリス、今度おままごとなら一緒に遊んでくれる?」

「別にいいけど言い方が気に食わないわ」


 上から目線のソラリスに、クロが面白くなさそうにポソリと言う。


「ソラリスって小煩いね。自分ルールを押し付け過ぎだよ」

「私は歳上だからいいのよ! ―――あのねイヴ。友達にはね“遊んでくれる?”じゃなくて“遊ぼう”でいいの。それが駄目な相手は友達じゃないわ。わかった!?」

「う、うん。ま、また……遊ぼう?」

「いいわ!」


 力強くビシリと頷くソラリス。

 クロが不貞腐れたようにボソリとソラリスに言った。


「俺はもうおままごととかしないし……」

「ええ。クワトロは誘ってないわよ。言われなくても仲間には入れてあげないわ」

「っ!?」


 クロの肩がビクリと震えた。

 それからソラリスは、もうクロには視線すら送らずイヴに向き直る。


「―――後、さっきはああ言ったけど、あなたの球凄かったわよイヴ。あんなの見たことない」

「ほ、本当!? ありがとう、ソラリス!」

「ええ。さ、じゃあその頭何とかしましょ。編んであげるからこっちにいらっしゃい。そのままじゃ本当に野生児だわ」

「うーん!」


 そして何事もなかったかのように仲良く髪を結い始めた女子達。

 そしてそこから弾き出されたクロは、目に涙を溜めながらミックの方にぽくぽくとやって来ると、ダッキーに抱きつき、その黒い羽毛に顔を埋めた。


「ミックぅ……」

「グワー……」

「っつかそっちはダッキーで俺はこっちだからな。一心同体とはいえ、一応別々の本体があるから」


 普通に代理返事をしてクロを毛づくろいし始めたダッキーに、ミックは思わず突っ込んだ。

 だけどクロはそれどころじゃない様子で、そのまましくしくと泣きながらミックに報告を始める。


「……ソラリスがね、俺の話聞かないんだよ。ソラリスはいじわるだ。もう……っ知らない」


 クロはイヴ程泣きやすい子ではないのだが、イヴと同じく喧嘩や言い合いなどしたことがない。

 初めての刺々しい言葉に耐え切れなかったんだろう。

 そしてそんなクロに、ミックが苦笑しながら説明する。


「なんだよ、クワトロも泣かされてるのか? まぁ、根はいいやつなんだけど、ソラリスって誰を相手にしても通常運転だからさぁ」

「いつもああなの? ミックは大変だね」


 鼻を啜りながら同情するようにそう言ったクロだったが、ミックは首を横に振ってニヤリと笑った。


「いや? 俺は面白いと思ってるよ。まぁクワトロと相性が悪いってんなら、俺としては逆に一安心だけどなー」

「……?」


 クロがよく分からないとでも言う様に首を傾げてミックを見上げた時、そこから少し離れた場所で子供達の様子を見守っていたシアンがふと視線を逸した。

 シアンの胸にかけていたスレ用のペンダントが、薄っすらと紫の光を放っていたのだ。―――端末が紫の光を纏うのは、スレの管理人からの報せの合図。シアンはクリスタルを立ち上げ、送られてきたメッセージを読んだ。


【1件 のメッセージが届きました:その者、かつてロゼ様を魅了した魂の欠片を持つ者。今となっては当事者でないとはいえ、警戒を怠るべからず(レジェンダリーファイル:神は寵愛を与え賜うた 参照)】


 シアンはそのメッセージにフッと笑う。


 なぜならシアンは魂の在り方について、この管理人より熟知していた。

 魂の欠片を持っていたとしても、その感情は今生での記憶に左右される。

 例え欠片の記憶によって好感や嫌悪感を抱きやすいという事はあっても、それが運命の如く惹かれ合うという事はない。

 そしてロゼの中にもまた、寵愛という感情は存在していなかった。


 だからシアンは欠片の不安もなく、ソラリスに再び目を向けると感心した様に呟いた。


「―――神をも魅了した魂、か。なる程。確かにハラハラして目が離せない感はあるなぁ。……うん、思った以上だ」


 それは果敢に脅威に立ち向かう勇敢さを持ち、己の正義を曲げない騎士の卵。

 まだ幼く言葉足らずながら、その信念の強さはイヴとクロすら泣かせて黙らせる、齢11歳の少女。



 シアンは暫く子供達を眺めていたが、ふと好青年スマイルを浮かべて振り返ると、すぐ側でビスマルクの背を撫でるカイロンに声を掛けた。



「―――それで、どうでしょう? 私達の旅に同行してくださる方はいますか? 世間知らずなあの子等と仲良くしてもらって、色々教えてくれるという方は」



 シアンの一言に、カイロン一家の面々がギクリと顔を引き攣らせた。


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