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世界樹の呟き 〜チートを創れる可愛い神々と、楽しく世界創造。まぁ、俺は褒めるだけなんだけど〜  作者: 渋柿
最終章 起点回帰【邪神と呼ばれた少女は世界から溺愛される】
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歴史を巡る旅 ー平原の一本松⑦ー

 《シアン視点》


 ―――む、無理だ。


 美しいとすら思わせる闘気を立ち昇らせる、5体の獣様方とルドルフを見てオレは悟った。

 昨日苛ついたとはいえ、なんであんなことを言ってしまったんだろうともはや後悔しかない。

 そもそも子供達には“いつも通り”と言った筈だ。それなのにクロの奴、今回に限って何でこんなに気合入ってるんだ? それって既に“いつも通り”じゃないよな!?


 オレは頭にはてなマークを浮かべつつ、この状況でファイブズ家の子供達をどうやって守り切れるかを考える。

 だが状況は、一つの水槽にアロワナとメダカの稚魚が混浴しているも同然なのだ。


 ―――絶対に無理だろ! 



 オレがあまりの絶望に地に肘を突きそうになったその時、天から美しいハミングが響いてきた。


「!!?」


 空を見上げれば、そこには後光を放つ空に浮かぶ雲……。


「ま、まさか……?」


 辺りを見回せば、コート内に立つファイブズ家の子供達が、優しい光を身に纏っていた。

 オレはハッとしてコートの中央に立つ叔父さんに視線送る。

 目が合うと、叔父さんは頼もしくフッと笑い説明してくれた。


「昨夜、丁度お前が席を外した時、シェル達と打ち合わせをしておいたのだ。加護を与える事に対して長けた者達だからな」


 オレはその予想していなかった救済処置に、目に涙を貯めながら胸の前で腕を組んだ。


「シェルさん達、マジ天使ですね……」

「そうだな。あの者達以上の天使などおらんな」


 叔父さんの至って真面目な返答を聞いて、オレはふと一つの疑問を覚えた。


「……でもシェルさん達、よく進んで加護を与えてくれましたね?」


 そう。シェルさん達は笑顔は優しげだが、良くも悪くもプライドが高い。

 主より与えられた力はよっぽどのことが無い限り、主の為に……若しくは主の指示でしか使おうとしなかったのだ。


 オレが首を傾げていると、叔父さんが昨晩の事を教えてくれた。


「シェル達がロゼ様より言い使ったそうなのだ。昨晩はロゼ様の意識が随分ハッキリされていたそうでな。“イヴが楽しみにしている。悲しい思い出にならないように、仔等を護ってあげて”と仰ったという」

「ロゼが……」


 オレはふとピクニックの荷物置き場に置いてある小さなポシェットに目を向けた。

 オレもかつて一度だけロゼの覚醒に立会った事がある。

 ロゼの覚醒……つまり、ロゼがただの食いしん坊じゃなくなる条件とは、イヴの心が幸福に満たされている事。


 オレはポシェットから今度はイヴに目を向けた。

 まるで獲物を前にした肉食獣のように、目をランランと輝かせるイヴ。

 そんな好戦的なイヴを見て、不意にオレは胸がキュンと締め付けられる思いに駆られた。



 ―――本当に、楽しみにしてたんだなぁ。



 確かに最近は“もう、あの子らの体力にはもう付いていけない”なんて決めつけて、一緒に遊んであげてなかった。

 だけどイヴは昨晩ロゼを覚醒させる程に今日を楽しみにしていたのだと知ってしまえば、その絶対的捕食者の気配を放つイヴを前に、最早愛おしさしか感じない。


 イヴはオレが弱いことを知っている。―――それでもイヴはオレを仲間に入れようとしてくれてる。オレが参加する事を心待ちにしてくれてる。

 だったらオレは、その優しさから逃げるわけには行かない。

 たまに遊んでやるって約束した時くらい、オレだってオレなりに本気で応えなきゃ駄目だろ。


 オレは身を低く構えると、ニッと笑ってイヴを睨む。


「よぉっし。どっからでも来い、イヴ!」


 俺がそういえばイヴもあどけない笑顔で笑い返してくる。

 そして叔父さんとの手合わせより気合の入った覇気を放つオレに、クロは少し驚いたように目を丸くしていた。


 やがて叔父さんがまんまるなキールをイヴに投げて渡し、叔父さんは静かにコートから離れて行く。

 そしてコート外に出た時、叔父さんは低い声で短く言い放ったのだった。



「“プレイボール”」




 ◇



 《ソラリス視点》



 ―――空から、どこか懐かしい歌が聞こえてきた。


 何処で聴いたのかは思い出せない。

 だけどその歌が、私にどんな効果を与えてくれるのかは何故か直感的に私は理解した。


 私の耳に歌声とともに、耳鳴りのような起伏の無い音が響く。


 ―――ピコン 【HP上昇】【MP上昇】【筋力上昇】【防御力上昇】【俊敏上昇】【熱耐性上昇】【毒耐性上昇】【視力上昇】【聴力上昇】【反射速度上昇】【加護:天使長シェルの福音】【加護:天使長クリプトの福音】【加護:天使長ローザンの福音】【加護:天使長ネイルの福音】【加護:天使長ティーガテイの福音】【加護:天使長イノンセラの福音】【加護:天使長ワーシャの福音】※歌が響いている間有効の特殊加護……


 そう。この歌は私を強くする効果を持つ。


 私は加護の光に護られながら、チラリとクワトロの契約獣達に目を向けた。

 とんでもないマナが吹き出し、可視できる程のオーラとなって立ち昇っている。

 あの獣達の力や、私達に与えられたこの力……。私達は何の相手をしようとてるのだろうか? 一体……



「よぉっし。どっからでも来い、イヴ!」



 不安の中で自問している中、突然隣から上がった声で私はビクリと肩を震わせた。

 おそるおそる隣を見れば、そこにはクワトロの契約獣達のように青いオーラを立ち昇らせる笑顔のシアン……。


 ―――……何なの? この人。何笑ってるの?


 ちょっと待ってよ。

 私は……いえ、私達は“ドッジボールをしよう”と誘われていた筈。なのに何なのこの状況。


 困惑にあたりを見回せば、お父様やミックも唖然とドッジボールにしては広すぎるコートを見つめているだけ。

 ついでにジェイクお兄様やエリスにイリアは後退って震えている。

 マルクスは声もなく身を硬直させているし、イヴと同じチームになったビスマルクは涙目で立ち尽くしている。


 ―――つまり、やはりこの人達は私達の理解の及ばない位おかしいということで間違いない。


 私が改めてそう結論を出したその時、シアンの親戚とかいう男が声をあげた。


「“プレイボール!”」


 途端、黒いボールを手にしていたイヴがにやりと笑い、ダンッと踏み込み振りかぶった。



 ―――その威圧に、一瞬私は死というものを直視した気がした……。



「止まるな! ボールから目を逸らしちゃ駄目だっ!」


 私が恐怖に飲まれそうになった瞬間、そう声を上げたのはクワトロだった。

 ハッとして私が構え直すと同時に、クワトロは鈴を鳴らしながら獣達に指示を出す。


「ラーガッ【上昇気流(エア・ギア)】! テンは【渦巻く水の防壁(ウォーターフィールド)】で防御壁の展開だ!!」

「「ウオォォ―――ンッ!!」」

「クルルルルルッ!」


 双頭の白狼と透けて見える不思議なミニ龍が声を上げたかと思うと、私達を中心に竜巻が発生し、その周りを何処からか湧き出した大量の水が渦となって取り囲んだ。

 水圧と気圧の渦が出来たと同時に、イヴが叫びながらボールを投げた。


「先ずはっっ、シアン―――っっ!」


 それは正にレーザービームの如き一球。

 大船すら粉砕させそうな水の渦に突き刺ささり、巨大な牛さえ巻き上げそうな暴風を突き進む。

 それらの防壁により多少球の威力は落ちるが、その先には……


「っつ、あっぶねえぇ!!」


 シアンが身を捻って笑顔でボールを避けた。

 と言うか“あぶねぇ”どころじゃないでしょう!!? 何なのその球威はっ!


 ボールはカッと大地をかするようにバウンドすると、コート背後の暴風にとび込んでいった。

 だけどホッと息を吐く間もなく、シアンは身体をバネのようにして高く飛び上がる。

 その瞬発力は世間で噂される“稀代の超人”の名に違わぬ動きだ。

 私がその動きに目を見張っていると、先程までシアンがいた場所にドオォンと大地を揺るがす音をたててボールが飛んできた。

 ボールが大地に轟音を轟かせた直後、そこから3メートルも離れていない場所に立っていたマルクスが悲鳴を上げる。


「う、うわあぁぁ!!」


『―――先ずはシアンを潰せばいいんだな? イヴ……』


 ふと、マルクスの悲鳴に混じって鼓膜を揺する不思議な声が響いた。


 声の主はコート後方の暴風と、荒れ狂う渦の向こうに見える黒い影……シアンの契約獣の黒麒麟だった。

 立ち昇るオーラを身に纏い、完全にシアンを敵視している黒麒麟にマルクスが困惑の声を上げる。


「な、なんで? あの黒麒麟はシアンさんの従獣なんだろ? なんでシアンさんに敵意を向けてるんだよ!?」


 シアンは既に体制を整え、イヴを睨んでいた。

 イヴはバウンドしたとはいえ、大地を揺らす勢いを放つボールを難なく受け止め、楽しそうにボールをドリブルして遊んでいる。

 シアンはそんなイヴから目を離す事なくマルクスに言った。


「従獣じゃない。契約獣だよ、マルクスくん」

「いや、同じでしょ? だって獣は契約した主人に逆らえないんだから!」


 シアンはマルクスをチラリと見ると、苦笑しながら答えた。


「―――少し、勘違いがあるようだね。いいかい、マルクスくん。獣も人も存在的な意味ではどっちが主人なんてないんだよ。能力的な意味でも、神のエゴを受けて創られた聖獣に、オレ達人間なんかが敵う筈ないしね。彼等を服従させようなんて話は、欲と驕りに塗れたフィクションストーリーに他ならないよ」

「な、ならどうやってシアンさんは黒麒麟をテイムしたの? まさか……シアンさんがテイムされたの?」

「はは。まぁ似たようなもんだけど、それも違う」


 シアンがそう言った時、また黒麒麟の“声”が話に割り込むかの様に鼓膜を揺らした。


『おうよ、そうだぜ。シアンをテイムして、契約で縛って言う事を聞かせるなんてクソつまんねー事はしねぇ。そんなんはダセェ臆病者のする事だ。なぁシアン?』

「ま、そだな。オレの言う事聞く従順なルドルフなんて、想像しただけで鳥肌もんだし、あり得ねぇな。―――お互いが気紛れに遊んでやったり遊んでもらったり、世話してもらったり世話してやったりしてつるむ。オレとルドルフは、そんな無二の相棒なんだよ。マルクスくん」


 ……爽やかな笑顔を浮かべ、何かいい事を言ってるっぽいシアンだが、マルクスは怒鳴るように突っ込んだ。


「だけどさっきのは何!? さっきのボールに当たったら、シアンさんだって死んじゃってたよね!? なのに呑気すぎるだろっ!」


 ……因みに私も、マルクスの突っ込みに全面的に同意する。

 シアンはそんなマルクスをキョトンと見つめ、不思議そうな顔で黒麒麟に振り向いて確認を取った。


「―――な事言ってもこの位なら、ルドルフにとっちゃただの普通のコミュニケーションだし。しょうがないよ……なぁ?」


 “しょうがない”で済ますの!?


『あぁ。この程度で怪我しただの言われても、そこまで面倒見切れれねぇ。ただ歩いてただけで恋人が死んだとか言われても、俺にゃどーしようもねぇっつの』


 こっちもこっちで契約相手を守る気はないの!?


「そうそう。ただ運が悪かったとしか言えねーよな」


 さも当然だと言わんばかりに頷き合うシアンと黒麒麟。

 もはや突っ込みきれない。



 ―――そしてこの件以来、マルクスは聖獣に触れたい等と言い出す事がなくなったのは勿論、蹄を持つ4足歩行の獣に対する恐怖症を発症し、騎士への道を諦めることとなったのだった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] シェルさん達マジ天使(ガチ) [一言] 純粋な言葉が一人の子供の心を打ち砕いた……悲しい事件だったなぁ() というか今回の話、一体何人の心を粉砕すれば気がすむのでしょう。いや、それが彼等彼…
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