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世界樹の呟き 〜チートを創れる可愛い神々と、楽しく世界創造。まぁ、俺は褒めるだけなんだけど〜  作者: 渋柿
最終章 起点回帰【邪神と呼ばれた少女は世界から溺愛される】
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歴史を巡る旅 ー平原の一本松⑥ー

 

「ぶっハァッッ」


 直後シアンがとうとう耐えきれず盛大に吹き出し、エリスが黄色い悲鳴を上げた。


「キャアァァッ、賢者様ったら!! 素敵っ! いいわ、許せる!!」


 キャアキャアと嬉しそうに叫ぶエリスに、ミックはまたダッキーを撫でながら笑った。


「ははは。まぁ、最後の台詞は俺の予想だけどね? ただもしそうだったらロマンチック(面白い)かなーと……」

「ミックはロマンチストなんだね」


 子供達が談笑する中、シアンは蹲って息も絶え絶えに震えている。

 カイロンが心配そうにそんなシアンに声をかけた。


「だ、大丈夫ですかな? シアン殿」

「ちょ、まっ、待っ……新訳伝説発足ってか? クフッ、は、腹いてぇ……」


 完全に他人事のつもりだ。

 ガラムはそんな崩れ落ちるシアンを、余裕のある落ち着きを見せながらそっと嗜める。


「―――相変わらず人間達の歴史の解釈には驚かされる。シアンも笑ってる場合ではないのではないか?」


 そうそう。ガラムとシアンだって他人事ではないはずだ。


「クク、ええ、そうですね。笑ってはいけませんね、すみません」

「うむ。……ともあれ、件の解釈については皆に意見を聞き、当人に真偽を確認しなければな」


 そう言ってペンダントのクリスタルを立ち上げるガラム。

 あ、駄目だ。この仔は内心シアン以上に楽しんでしまっている。


「って叔父さん、それ晒しあげ公開処刑じゃ!?」


 シアンは慌てて止めようとするが、ガラムはそれより早く素早くスレを立ち上げると“【新訳伝説】悪魔のプリンス(笑)説についての考察”と書き込んだのだった。


 因みにそのスレは、まとめに載りそうな程に爆発的な伸びを見せたが、5分後には管理人によって抹消されたという。

 またそのスレの中で意外だったのが、それ等の面白がって囃子立てる書き込みに、デーモン達が参加しなかった事。

 率先して騒ぎ立てそうな彼等が沈黙していた理由については、後に亡者と聖者達の間で永きに渡りネタに(議論)される事となる。

 彼等がアリアンヌに一目置いている為か、はたまた愛を重んじる種族であるが故、本能がそれを嗤うことを拒んだのか……そう。“―――そこに愛はあるんか”と。


 まぁ当事者2名は共に沈黙していたので、結局その議論に決着がつくことはなかったのだけどね。


 そして知らず知らずの内にワールドミステリーを産み出した子供達は、相変わらず和やかに話を続けていた。


「ミックって物知りなんだね」

「ま、一応こう見えて“考古学者”の端くれなんでね」

「あ、そうだ。デザートに焼いてきたリンゴとマシュマロのハニータルト食べる? フルーツゼリーもあるけどこれならミックも食べれるかな? 動物由来の凝固材(ゼラチン)じゃなくて海藻由来の凝固材(パールアガー)を使ったんだ」

「お! 食べれる! 超うまそう!」

「だったら私達のクッキーもいっしょに食べましょう」

「うん」

「あ、俺バターも卵も駄目だから」

「ええ、エルフは食べなくていいわ。ふふ、ねぇクロくん。私達お菓子を焼くのは得意なのよ。もし一緒に行く事になったら、いつでも腕をふるってあげるわ!」

「ふーん」


 ―――そんな話をしながら子供達は仲良く食後のデザートを食べた。

 そして“別に食べ物なんて食べられれば何でもいい”と語るクロのタルトとゼリーを前に、二人の少女もリタイアしたのだった……。



 やがてデザートもしっかり食べきって、満腹になったイヴが笑顔でシアンに手を振る。


「シアーン! お腹も大きくなったし、そろそろドッジボールをしようよ!」


 シアンとガラムの顔に緊張が走った。




 ◇◇◇





 そしてガラムが描いたドッヂボールコートの上で組分けがされると、クロが口を尖らせシアンにポツリと抗議を行なった。


「父さん、俺あっちのチームが良かった」

「そうか。だけどこれは昨晩オレと叔父さん達が夜を徹して考え抜いた振り分けなんだ。理解してくれ」


 と、シアン。


 クロは小さく「ちぇーっ」と言うと、獣達とコート内に向かって歩いていった。

 チームの振り分けはこうだ。


 Aチーム。イヴ、ルドルフ、ビスマルク。

 Bチーム。クロとその契約獣達、シアン、マルクス、ソラリス。

 そして審判という名目の護衛要因が、ガラムと雲の上のシェル達だった。


 カイロンがジェイクとエリス、そしてイリアに「お前たちも参加してきなさい」と声を掛けたが、三人は口々に「だって、参加したら、一緒に行かなきゃいけないかも知れないんでしょ?」と目に涙を浮かべて切実に訴えてきたので、カイロンはそれ以上三人を押し出そうとはしなかった。


 そして残りのメンバーがドッヂボールコートに入る。

 コートはガラムが描いた物で、肩面20メートル四方と通常のコートより随分大きい。


 クロチームはガルドルド(ドル)が外野の守備に回り、イヴチームはルドルフが外野に回る。

 その様子を見たカイロンは眉をしかめた。


 イヴチームはコート内に幼いビスマルクとイヴしかいない。一方、クロチームは、クロにシアンにマルクスにソラリス。

 明らかにチーム分けがおかしい。


 ―――だが、これでもまだイヴチームが優勢である事は、知る人ぞ知る、周知の事実であった。


 位置についた面々に、ガラムが近付きクロからキールを受け取る。

 するとキールは「任せておけ」とでも言わんばかりに、颯爽と猫耳を引っ込め、真っ黒な球体へとその身を変えた。

 ガラムが硬さと重さを確認するようにキールを3度軽く宙に投げあげ、皆に言った。


「それではこれよりドッヂボールの親善試合を始める。ルールは知ってるな。相手のコートに侵入してはいけない。もし侵入した場合はボール(キール)は相手チームの物となる。ノーバウンドでボールに触れ、それを取り落とした者は外野へと移動する。相手チームを全員外野に出せば勝ち。また30分の時限を設け、それまでに勝負がつかなかった場合はその時点でのコート内の人数で勝敗を決める」

「はーいっ!」


 淡々と説明するガラムに、子供達が元気な声を上げた。

 シアンは胃痛を感じているのか、みぞおちを擦りながら笑顔で付け加える。


「イヴ、いつも通りやって良いが、ビスマルク君はまだ小さいし守ってあげるんだぞ?」

「任せてっ! 私はお姉さんだからね!」

「よし。じゃ、クロもマルクス君とソラリスちゃんを守ってやってくれな? オレも出来る限りは守るけれどもっ!」


 胃痛のピークがきたのか額に脂汗を浮かべ、真っ青な顔でそう笑いながら言ったシアン。

 流石にクロもその異変に気付き、首を傾げた。


「分かってる……あれ? 父さんお腹痛いの? お腹治るまで父さんも俺が守ってあげようか?」


 頼もしくも優しい我が息子。

 シアンは堪らずクロを抱擁しようと飛び出した。


「ありがとう! なんていい子なんだ!」

「やめろよ」

「ゴフ」


 だがシアンがクロを抱擁する直前、クロはシアンのガラ空きになったみぞおちに、グーパンを叩き込んだ。

 まぁこのくらいの子達は、人前で親とじゃれ合う事を嫌がるからね。どんまい。


 そしてシアンの話が終わったのを見計らい、ガラムがまた声を上げた。


「それでは各チームの代表で、ジャンケンをして先制を決めるがいい」


 ガラムはこう見えて、場の空気を読んで取り仕切るのが上手い。手慣れているのだ。

 そしてイヴの提案で“こういうのは小さい子が優先”ということで、ビスマルクとクロがジャンケンする事になった。

 結果、ビスマルクが後出しで勝ったのだが、クロは何も言わず勝利を譲り、イヴはそんなクロに「偉いねっ!」と目配せした後、ビスマルクの勝利をチームとして褒めていた。

 ……本当に、立派なお姉さんとお兄さんになったものだ。


 シアンも感慨深げに持ち場に戻ってきたクロを見つめていたが、そんなシアンをクロが突然キッと睨み上げた。


「ん? どうしたクロ」


 シアンが首を傾げると、クロは背中に掛けてあった禊の錫の留め具をパチンと外し、威圧気味にシアンに言う。


「父さん、本気出してよ? 今日は勝つから」

「……ぇ……」


 ――――正直な所、シアンはイヴチームに勝つつもりが無かった……というか、勝てる気がしていなかった。

 困惑に言葉を詰まらすシアンからクロは視線を逸らし、イヴとビスマルクの立つコートに向き直った。

 そして静かに目を閉じ神経を集中させて、その心を鈴の音に乗せる。



 ―――リーン……シャンッ、シャンッ



 澄んだ鈴の音が響いた瞬間


 空気が揺らいだ。



 コート内に散会していたクロの契約獣達から、オーラとなって見える程の闘気が突然溢れ出したのだ。

 フェンリル(ラーガ)からは蒼紫の、フェニックス(フィー)からは黄金の、ウェルジェス(テン)からは青銀の、サリヴァントール(ルナ)からは山吹色の、そしてガルドルド(ドル)からは深緑のオーラだ。

 カイロン陣営とミックは、息をする事すら忘れその光景に目を見張っている。

 そんな中、唯一ソラリスだけが唖然としながらもかろうじて言葉を繋いだ。


「な、何? ……これ」

「―――クロの鈴の音は獣を鎮めるだけじゃない。獣達に野生を呼び起こさせ、眠っている力をも開放させる事ができるんだ」


 と、シアンが頭を抱えながら説明を入れた。


「そう。野生を……って、野生開放したってあれはおかしいでしょう!? 何なのあれ!」


 こんな状況でも輝くソラリスの突っ込みスキル。

 その時、ソラリスの背後でもう一名、野生を開放させようとする者がいた。


「―――クク、根性のある音鳴らしてるじゃねぇかよクロ助。いいぜぇ。俺も本気で相手してやんよっ!」


 それは馬……ではなく、鹿……でもなく、イヴチームの外野担当ルドルフだった。


 ルドルフの身体の筋肉が、黒銀に燃えるオーラを吹きげながら盛り上がっていく。

 これまでは“重量級の立派な馬”程度の体格だったルドルフ。だがその体は今、体高6メートルを超えるモンスター級の身体へと覚醒を遂げたのだった。


「ちょ、ックロさん!? 相手チームまで覚醒させたら駄目でしょう!? ってかルドルフも大人気なくノるんじゃねーよっ!」


 獣王本来の姿を取り戻したルドルフにシアンが叫ぶが、鈴の音に魅了された獣にはもう、シアンの声も届かない。


 クロがフッと笑ってルドルフに言う。


「お手柔らかにね」

「はっ、馬鹿言え。クロ助相手にこの俺が本気になんぞなるかよ

「馬鹿はお前だーっ! 10秒前に“本気で相手してやる”って言ってたろ!? ほんで今尚、めちゃくちゃ本気出そうとしてんじゃん!!」


 もはや涙目のシアン。

 一方イヴはキラキラと目を輝かせている。


「うわー、うわーっ! 楽しみだねぇ!」


 プレイゲームの前から既にカオス。




 ―――こうして楽しいレクリエーションの幕は開けたのだった。


次話、久しぶりの戦闘シーン!?

(いいえ。ただのドッジボールです)



余談ですが先日5歳の子が作った手作りの“くじ”を引きました。

そこに書かれていたことが想像以上に深くて驚愕。

( Д ) ゜ ゜



♡♡おおあたり♡♡


あなたはだいすきなひとを とってもしあわせにしてあげる



大当たりすぎる……。

あなたにも大切な人を凄く幸せにしてあげられる良い一日が訪れます様に!

v(´∀`*v)

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