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世界樹の呟き 〜チートを創れる可愛い神々と、楽しく世界創造。まぁ、俺は褒めるだけなんだけど〜  作者: 渋柿
最終章 起点回帰【邪神と呼ばれた少女は世界から溺愛される】
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ようこそ★シアン御一行様

「シアーン! 終わったよ!」


 オレがキアラと世間話をしていると、背後から元気な声が聞こえてきた。

 オレは振り返ってそれに答えた。


「おぉ、お疲れ様イヴ。それにクロ」

「シアン、私ねお皿25枚も洗ったんだよ! クロはね3枚だけなんだけど」


 そう言って得意げに胸を張るイヴ。……ただその真相は、おそらく雑に洗った食器をクロが全てこっそり洗い直したんだろう。

 チラリとクロを見れば、クロは頬を膨らますどころか、そんなイヴに「よかったね」と言いながら笑っていたので、オレも何も言わない事にした。


「頑張ったんだなイヴ! それからクロも、準備に片付けまでありがとな」


 オレの言葉に二人は満足げに顔を見合わせ、イヴが笑顔でオレに尋ねてきた。


「ねぇ、シアン。片付け終わったからクロとまたマストに登ってきていい?」

「あぁ。いいけど何するんだ?」

「内緒ー」


 イヴはそう言うとクロの手を引いて、マストの方へ駆けていった。

 以前、人前で魔法は使わないように念押ししておいたから大丈夫だと思うけど、……オレには()()なのか。これはかなり堪えるな。


 マストを登り始めた二人の背中をじっと見つめていると、キアラが笑いながら言った。


「イヴちゃんにクワトロ君か。可愛い子達だよな!」

「まぁ、うん。生まれた時からオレが懇切丁寧に磨き上げてるから当たり前だけど」


 言っておくが、この返しは別に親馬鹿だからではなく、当然の事実だ。


「しかも運動神経もいいし、手先も器用で性格もいい。将来有望だな」


 そう続けられたキアラの言葉に、オレはまた、さっき悩んでいた事を思い出し、暗い気持ちになった。

 ……そう。イヴが20歳になるその日の事を。


「将来ナー。将来とかぶっちゃけ今はまだ考えたくないんだよな。今が幸せなら十分だし、イヴについては何処にも嫁にやる気ないし……ってか、絶対やらんし? いつまでも子供でいて欲しいよ、ホント。……クロもさ、何ならオレが死ぬまで一緒にいてやるから、悲しい思いはして欲しくないんだよなぁ……二人の為なら何だってしてやるよ。オレは」


 オレが溜め息混じりにそう言えば、何故かキアラがかなり引き気味にオレに言う。


「あ、あのさ、シアン。人の家庭事情に口を挟む気はねーんだが、……親馬鹿が過ぎんのはヤバいぞ?」

「ん? 別に今のは親馬鹿とかじゃないけど?」

「……分かった。カウンセリングを紹介してやる」


 そして何故かオレはキアラに病院を紹介されてしまった。


 それからオレは必死に紹介状を渡してくるキアラを宥めたあと、マストの上で何かをしているイヴとクロを見上げると、思い立って【鑑定】を掛けてみた。




 ■■■■■■


 種別 半獣人(キメラ) [属性【聖】【魔】]

 名前 クワトロ(8歳)

 Lv  12


 職業 【テイマー】

 ※従獣 【キール/ディスピリア】【ラーガ/フェンリル】【テン/ウェルジェス】【ドル/ガルドルド】【ルナ/サリヴァントール】【フィー/フェニクス】


 HP: 72/72

 MP: 6,210,755/210,955


 筋力:62

 防御:45(猫目石のブレスレット+6,210,755)

 敏捷:89

 知力:115

 器用:492

 魅力:66

 幸運:81


 スキル【禊の鈴Lv4】【テイムLv9】【トリミングLv3】【獣医Lv2】【調薬Lv1】【解体Lv2】【シェフLv1】【パティシエLv1】


 称号 【獣に愛されし仔】


 加護 【獣王の加護】(聖獣の呪い無効・闘気)【ウェルジェスの加護】(水属性ダメージ無効・MP+1,000,000)【ガルドルドの加護】(土属性ダメージ無効・MP+1,000,000)【サリヴァントールの加護】(雷属性ダメージ無効・MP+1,000,000)【フェニックスの加護】(光属性ダメージ無効・MP+1,000,000)【フェンリルの加護】(熱ダメージ無効・MP+1,000,000)【リリマリスの加護】(風ダメージ無効・MP+1,000,000)



 ■■■■■■




 ………過保護に守られ過ぎて、隙がねえ。





 ■■■■■■


 種別 人間

 名前 イヴ

 Lv  覚醒 8


 職業 【武神】


 HP: 1653/1653

 MP: 999/999(※龍脈術発動時 外部補填+50,000)


 筋力:521(※龍脈術発動時 +120,000)

 防御:395(※龍脈術発動時 +120,000)

 敏捷:824(※龍脈術発動時 +120,000)

 知力:336

 器用:88

 魅力:72

 幸運:54



 スキル【龍脈術 覚醒Lv3】【格闘家 覚醒Lv1】【予測Lv9(MAX)】【見極めLv9(MAX)】【剣術Lv9(MAX)】【槍術Lv9(MAX)】【弓術Lv9(MAX)】【棒術Lv9(MAX)】【投擲Lv9(MAX)】【索敵Lv9(MAX)】【魔法創造Lv9(MAX)】【医療Lv1】


 称号 【ドラゴンスレイヤー】【武の極みを目指す者】


 加護 【なし】



 ■■■■■■




 ……。




 …………………。





 ………………………………ふう。




 オレは何も言わず画面を消した。


 取り敢えず大陸に着く迄に、あいつに貰ったステータスを文字化けさせるドッグタグを必ず付けてもらおう。




 ◇◇◇




 翌朝、青く輝く海の彼方にとうとうガーロン大陸がその姿を現した。

 すっかりクロやイヴと仲良くなった海竜達は進む速度を緩め、最後の船旅の時を惜しんでいる。

 そしてクロとイヴもまた、マストから手を伸ばし、近付けられた海竜の巨大な頭を撫でて最後の交流を楽しんでいた。


「いやー、いい旅だったな、シアン!」


 海竜と戯れる子供達を見上げていると、突然隣から声を掛けられ、オレはそちらを振り向いた。


「よお、えー……と」

「キアラだぜ!」

「そうだキアラだ。そうだな。嵐にも合わず、順調な旅だった」


 キアラはその体質により、気配がない上、殆ど記憶に残らない。

 オレが再三名前を忘れてしまっていたが、キアラは気にせず話を続けた。


「そりゃそうだぜ。なんてったって海竜が船を守ってんだから。そんじょそこらの嵐ぐらい逆に吹き飛ばしてくれるさ。……だが始め5匹いた海竜の内、3匹はどこに行っちまったんだろうな? まさか本当に嵐を沈めに行ってたりしてな!」


 ……イヴが沈めたとは口が裂けても言えんな。


 オレは爽やかな笑顔を浮かべながら、無言でうなずき返した。


「あぁ、それからシアン。昨日貰ったペンダントだけどあれ面白いな!」

「ん?」

「【スレッド】とか言うアイテムだよ! あそこにいる奴ら際どい冗談やぶっ飛んだ冗談書き込むくせに、みんな真剣に乗っかってんのな。笑ったぜ! 俺も書き込んでいいのか?」

「あぁ。構わねーよ」


 オレはまた頷いた。

 だってこのキアラは、神々より与えられた試練に耐えながら、こうやって前向きに笑っているんだ。十分スレを使う資格はあるだろう。



 それからもオレはキアラと他愛ない話をしていたが、その間も船はゆっくりと着実に進んだ。

 やがて大陸が水平線の大部分を締めた頃、オレはイヴとクロに声をかけた。


「二人共ー! そろそろ一度戻って荷物の確認をしようか」

「「はーい」」



 ◆



 ―――そして荷物を纏め再び甲板に戻ってきた時、オレはその光景にビクリと体を硬直させた。


 獣に船を牽いてもらうジャックグラウンドを往復する船は、人間達の港には到着しない。

 例に漏れずこの船だって、自然に出来た入り江にある人里離れた無人の港に到着……の筈なのだが。


「わぁー、何だろう? パーティーしてるのかな?」

「お祭りって言うんだよ、イヴ」


 岸を見つめながらそんな話をするイヴとクロ。

 そう。港にはごった返すほどの人と馬車が並び、幟や旗を掲げながらこっちに向かって何か叫んでいる。

 そして色とりどりの幟には、それは脳天気な文字で似通ったことが書かれていた。



 “★シアン様御一行★ ―冒険者ギルド―”


 “ようこそシアン様御一行! ガーロン大陸へ ―正教会東組合―”


 “シアン御一行様 おいでませ ―テイマー協会総本部―”


 “Welcome! シアン様御一行!! ―商業組合―”


 居並ぶのは数十台の馬車は、小さくシンプルなものから大きく派手な物まであり、形もゴシック調のものやモダンな物、外装をペイントした物や、中には宝石をゴテゴテと貼り付けた馬車や、イルミネーションでライトアップされた馬車まである。



 スレの奴らが情報を漏らすはずがない。……なら、どっから漏れた!?


「すっごーい。あれ、私達を迎えに来てくれてるの? じゃあ、私ね。あのお菓子の馬車がいい!」

「ねぇ父さん。あっちに猫の形の馬車があるよ。俺はあれに乗ってみたい」

「馬車には乗らん」


 ワクワクと顔を輝かせる子供達の意見を、俺は断固として拒絶した。


「えー、乗らないの? 乗りたいよー!」

「せっかく迎えに来てくれてるのになんで駄目なの?」

「あんなもんに乗ってみろ。道中馬車の中で延々と勧誘を受け続けるし、更に馬車に乗らなかった組織の奴らは戦争を始めるぞ」

「なんで?」

「勧誘ってお話聞くこと? お話なら私が聞くよ」

「と・に・か・く!! 駄目だ」

「「えぇー」」


 オレは二人のブーイングを受けつつ、分からずやな頑固親父よろしく、頑として首を縦に振ることはなかった。


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