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世界樹の呟き 〜チートを創れる可愛い神々と、楽しく世界創造。まぁ、俺は褒めるだけなんだけど〜  作者: 渋柿
最終章 起点回帰【邪神と呼ばれた少女は世界から溺愛される】
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旅の予定

途中からシアン視点に切り替わってます

 船の旅は正に順風満帆に進んだ。


 大陸間の移動は風任せであれば2ヶ月を要するが、獣の助けを借りればその3分の1程しかかからない。しかし逆にそれ以上の速度を出せば、今度は逆に船本体に負担をかけ過ぎてしまい、大陸間を渡り切る前に船が大破する恐れがあった。


 シアン達は約3週間の船旅を存分に楽しんだ。

 海竜達に守られながら、海洋を渡る鯨やイルカ達と戯れたり、イヴが『ちょっとお花摘みに……』と言って、大海の怪物クラーケンと対峙したり。

 他にも、シアンとクロが乗船員達にご馳走を振る舞い船上パーティーを開いたり、イヴが『ちょっとお花摘みに……』と言って、5体居た海竜達の3体を海底に沈めたりといったところだ。



 そして明日にはジャックグラウンドから南西に位置する世界最大のガーロン大陸に到着しようかというそんな日、シアンは夜の甲板で乗船員の一人と何気ない話をしていた。




 ◆


 《シアン視点》


 食事を終え、オレは甲板のヘリにもたれかかって暗い海を眺めていた。

 船での食事は当番制になっていて、作る担当と片付ける担当に分かれる。

 本来それは交替制の筈だが、オレとクロは交替する事なく作る担当枠に固定で入れられていた。イヴはまぁ……ちょくちょくお花摘みにも行っていたし、枠に縛られることなく自由にやっていた。

 そして今日のイヴは片付け組に回ったのだが、クロは調理組だったにも関わらず『イヴを手伝う』と言って、一緒に片付けに行っている。

 ……本当に、仲のいい子達だ。



 オレはじっと暗い夜の海を見つめた。



 仲がいいのはとても良いことだと思う。

 互いに支え合い共に歩んでいくことは人生に於いてとても尊いことだ。

 例え個々のレベルが違い、その歩みが遅々として進まなかったとしても。

 そう。その()()()()は決して無駄じゃない。寧ろそれこそが“優しさ”や“思いやり”といった、人間として生きる上での美徳を積んだ証明なのだから。


 美徳を積むことは、人生の中で間違いなく素晴らしい記憶となる。……だけどオレは考える。




 ―――もし、人間じゃなかったら……?




 人は優しさや思いやりを美徳と考え、手を差し伸べ、また差し伸べられた手を掴もうとする。

 だけど魔物や聖物、そして神々はそうじゃない。


 そんな人間達の(さが)を魔物達は愚かだと嗤い、聖物達は微笑みながらも手出しはせず見過ごすだけ。そして神々は気まぐれで無頓着なのだ。


 突然取り残された時、クロはそれを受け入れられるのだろうか?


 そしてイヴは……―――全部忘れてしまうんだろうか……? 



 その時ふと隣に人の気配が現れ、なんとも当たり前な素振りで気さくな口調でオレに声を掛けてきた。


「ようシアン。なに海なんか見つめて、物思いにふけってんだよ」

「あぁ。えー……と……」


 顔を上げるとそこに立っていたのは茶髪の……特に特徴のない男。……何度か会った筈なんだがどうも名前が出てこない。


「キアラだぜ」


 あぁ、そうだった。確か試験会場で斜め後ろに座ってたとかいうキアラだ。


「すまんな。喉の所までは出かかってたんだ」

「いいんだよ。昔っからなんか人に名前を覚えてもらえなくてさ。酷い時は存在すら忘れられた事もあった。ツアーの旅行になんて乗った日にゃ現地に置き去りにされちまうから、今じゃこうして一人旅するようになったんだ」


 カラカラと笑いながら、とんでも無い事を暴露するキアラ。

 オレは心の底から、キアラの名前を即答出来なかった事を申し訳なく思った。


「ま、体質だよ。ほんで、こういった所ではコミュニティーの中で一番存在感のあるやつの近くをウロウロしてんのさ。少しでも自分がここにいる事を主張したくてさ。シアンの邪魔はしねぇから、ま、気にしないでくれ」

「……」


 ちょっとなんだか泣きそうになった。

 ……なんだろう、このキアラは新手の呪いにでもかかってるんじゃないのか?


 オレはこっそりキアラのステータスを確認してみた。


 ■■■■■■



 種別 人間

 名前 キアラ(27歳)

 Lv  31


 職業 テイマー


 HP: 102/102

 MP: 31/31


 筋力:115

 防御:83

 敏捷:125

 知力:80

 器用:99

 魅力:23

 幸運:18



 スキル【隠遁(自動発動):覚醒Lv1】【索敵:覚醒lv2】【テイム:Lv2】


 称号 【孤独なる探索者】


 加護 【なし】



 ■■■■■■




 ―――え?


 ……覚醒? 称号持ち? マジで?



 オレは表示された内容を二度見した後、内心の動揺を悟られないよう静かな声で尋ねた。


「なぁキアラ。【隠遁(自動発動)】スキルって、もしかして生まれつきか?」

「ん? 【隠遁(自動発動)】? ……あぁ! 小さい頃はそんなスキル持ってたそうだな! だが成人する前に消えたと教会に言われたぞ。俺が昔そんなスキル持ってたって、よく分かったな!」

「あぁ、うん。なんとなく……」


 ……それ多分、神父の鑑定レベルが足りなくて“覚醒レベル”を鑑定仕切れなかっただけだ!


 じゃあこのもう一つのバグスキル【索敵】も気付いてないって事か。


「ついでに聞くけど……もしかして探しものとか得意だったりする?」

「おう得意だぜ! 昔っからギルド依頼の迷い猫や迷子探しでしくった事ないんだ! ……それにほら、影の薄い奴の気持ちを俺はよく知ってたからさ。見つけ出して、“お前はちゃんとそこにいるんだぜ”って声を掛けてやりたかったんだ」


 おま、メッチャいい奴!


「―――ま、昔は苦労もしたし、寂しい思いも随分したけどさ。ある時俺はこう思ったんだ。こんな体質に生まれついたのは、もしかしたら神様が俺に“同じ寂しがり屋を見つけてやりなさい”っつって与えてくれた一種の奇蹟の力なのかもしれねぇ、なんてよ。なぁ、シアン。そうだったら凄くないか!?」


 そう言ってカラカラと悲観なく笑う……えっと、誰だっけ? ―――……そうだ、キアラだ!


 ……駄目だ。なんかもう、涙が止まらねえ……!


「ん? どうしたシアン。何泣いてんだ?」

「……いや、ちょっと目にゴミがよ。春先とはいえまだまだ空気が乾燥していけねーな」


 オレは袖でぐいっと涙を拭くと、懐から予備のコインのペンダントを一つ取り出しキアラに渡した。


「キアラ、これをお前にやるよ」

「ん? 何だこりゃ。魔石の付いたペンダント?」

「あぁ、クリスタルを回して立ち上げると、世界中の匿名の仲間達と繋がれるアイテムなんだ。パンチの効いた冗談をよく言う奴等だけど、皆いいやつだから。―――忘れんな、キアラ。お前も間違いなくオレ達の仲間だからなっ。強く生きてくれ!」

「あぁ! よく分からんけどサンキューな、シアン! 俺たちゃ仲間だぜ!」


 キアラはそう言って力強くオレの肩を叩いた。

 それからペンダントを首にかけると、キアラはまた世間話しを始める。


「しかし楽しい船旅もいよいよ終わりか。明日の昼にはガーロン大陸に到着だろ? シアンは船を降りたら何処に向かうんだ?」

「ま、気ままな家族旅行だから確定的な予定じゃないけど、先ずはディウェルボ火山の方に向かおうと思ってる」

「あぁ、世界一美しいと謳われる【水上都市カロメノス】か。案外ベタな名所巡りをするなぁ」


 オレは苦笑した。

 そう。この一年を旅するにあたって、ベタベタな有名どころを巡るつもりだった。


 この世界には4つの大陸と数百を超える島々から出来ている。

  先ずは言わずと知れた獣達の大陸ジャック・グラウンド。それに土と水の大陸と言われるガーロン大陸、光と風の大陸と呼ばれるシェニアリス大陸。そして始まりの大陸と呼ばれるノーグ大陸だ。

 ガーロン大陸はドワーフを始め、アニマロイド等の亜人が多く分布し、その懐に【黒い森】と呼ばれる世界の禁忌を抱いた暗黒大陸。

 そしてシェニアリス大陸は最も人間達が多く住み、正教会と冒険者ギルドの本拠地である【シュノック】、それに【グリプス地下大迷宮】や学園都市【ノルマン】や浮遊山【崑崙】等を抱える文明大陸だ。

 そして始まりのノーグ大陸には、エルフ達の聖地にして神々の住まう入らずの森【聖域】があった。


 オレはこの一年の間に残り3つの大陸を回り、ノルマンに復職するつもりであった。



 オレが先の旅の予定に思いを巡らせていると、キアラが思い出したように指を立ててオレに言った。


「あ、そうだシアン。カロメノスに行くなら気をつけろよ」

「ん?」

「カロメノス湖の周りに広がる黒狼王の森に、魔王軍の幹部のダークエルフが出没するらしいぞ。近付くなよ!」


 ……あぁ、ローレンさんの事か。ってか日々のお礼も兼ねて寧ろ会いに行くつもりだったんだけど……。


 オレは頷き返しながら、人の世の【常識】をあの二人に教えることが出来るのかどうか、少し不安になった。

ここに来て初めて世界各所の名前と全体像が公開!


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― 新着の感想 ―
[一言] シアンさん…ルシファーさん…ガルシアさんも常識学ぶのに結構苦労した口だからねー てか名前多すぎるよね? マスターも、もう一個生前の名前が…賢者…賢者…思い出せない… そうだ!賢者レイルさん!…
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