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神はアニマロイド(亜人)と魔族を創り賜うた

 

 レイスの指示によりデーモン達が地上に散って少しした頃。

 入れ替わりで地上に降りていたラムガルが帰ってきた。


「レイス様、ラムガルめがただ今神の下に帰還致しました」


 今回は勇者と鉢合わす事もなく無事帰ってこれたようだ。

 じゃあついでにここで、ラムガルの最近の仕事の様子を少し紹介しよう。


 ラムガルはレイスから魔物達の管理と調整を頼まれている。

 その仕事を円滑に進める為に、ラムガルは地上に降りると先ず増えすぎた魔物達を1箇所に集め始める。

 そして規定数に達した頃、そこに勇者を誘き寄せるというのがラムガルの最近のやり方らしい。

 勇者に使命をまっとうさせてあげられるし、1種族だけを集中して狩り尽くされないように、調整もし易いのだそうだ。

 そうして集められた者達は狩られる運命にあるわけだが、魔王の図らいで勇者との決戦で散った者達は“英霊”として魔物達の中で末永く讃えられる事になっている。

 その為、いつの時代にも死ぬと分かった上で、魔王の下には多くの誇り高い魔物達が集うのだった。


 そして当のラムガルはと言うと、勇者と相対しても戦うことは基本しない。

 ゼロスから勇者を含む“人間”に魔法を使うことを禁止されているし、そもそもゼロスのお気に入りを手に掛けるつもりがないのだ。

 そんな訳でラムガルが勇者が衝突すれば、きっと勇者が寿命で死ぬまで勝負がつかない事態になってしまうだろう。

 なんせラムガルは不死身だからね。


 だからラムガルは“逃げる”という選択をしたんだ。

 勇者が群れを成す魔物達をなぎ払い、魔王城の王の間に到達する直前。ギリギリでその戦線離脱するのだ。


 “おのれ魔王! 逃げるとは卑怯なり! この勇者に恐れをなしたとでもいうのか?!”

 “フハハハハハハハ! 流石は勇者! よくこの城を陥落させてくれたな。だが余はいつか再び舞い戻ろうぞ。その時迄また腕を磨いておくが良い! サラバだー! フハハハハハハー”

 “まっ、待て! おのれぇぇぇ! まーおぉー!!”


 と、言う訳である。


 だけど万が一何かのトラブルで間に合わず、戦闘に持ち込まれても大丈夫なよう、もう一つ仕込みもしてあるようだ。

 その仕込みとは、以前人間を取り纏める教会の責任者である“教皇”の夢枕にこっそり立って“魔王を封印する最強結界魔法(笑)”というものを吹き込んできたんだそうだ。

 だからある程度戦ったら、勇者はもれなく“魔王を封印する最強結界魔法(笑)”を使ってくる。

 そこでラムガルはこう言うのだ。


 “流石は勇者よ! 余をここまで追い込むか。だが余は死なぬ! 必ずこの封印を破り戻って来るぞ!! フハハハハハハハー”


 ……と。


 つまり魔王としては封印(笑)されようがされまいが結果は同じ。

 魔物が増え出すのが約300年スパンだから、その時また復活したていで行くか、再度奮起したていで行くかの違いだけなんだ。

 またそうやって区切りをつけてあげると、人間達もその間の期間は安心して過ごせるんだそうだ。

 皆が安心し満足して暮らせるよう、ラムガルなりに考えたんだね。

 本当にラムガルはとても思いやりのある優しい魔王様だ。



「してレイス様、また新たな魔物を御創りになられたようで。先程デーモンやサキュバスと名乗る者達と、面接をして来ました。今までの魔物達と一線を画する思考の持ち主でしたな」


 レイスの所に戻ってこれて嬉しいラムガルは饒舌だが、当のレイスは俺の根本で背中を丸め、黙々と肉を捏ねているだけ。

 流石のラムガルも少し心配し始める。


「あの、どうかなさりましたか? レイス様」


「……別に。……………敢えて言うなら、レイスがサタンになってしまったというだけ……」


「……成程。しかし以前からなりたいと仰っていたので、それは喜ばしき事なのでは?」

「……」


 レイスは答えず黙々と肉を捏ねる。

 軈てレイスは捏ね上がった肉塊をラムガルに投げ、傷心気味に告げた。


「……もういい。やはり愛は程々がいい。ラムガル、成型をやって。モフモフの人がいい。レイスはもう……癒やしが欲しい」

「は。賜わりました」


 ―――そうして動物の特徴を持つ亜人“アニマロイド”が出来た。



 モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ……


「あの、レイス様。……あんまり耳を触られるとくすぐったいにゃ」


 モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ


「愛も信仰も程々でいい。弱くていい。賢くなくてもいい。……ただ、モフモフであれ」


 モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ


「にゃぅー……」


 後に、このアニマロイド達は人間達と違い女神レイスをメインに程々の信仰を始めるようになった。

 人間達も初めはアニマロイドの存在に戸惑っていた様だが“魔王や魔物が崇拝する女神”と言う情報は、教会のごく一部のものしか知らず、それもその女神が果たしてアニマロイドの言う“レイス様”なのかの確証がなかった為、意外とすんなり受け入れられた。

 ラムガルの人間に似せた成型と、レイスの妥協なきモフモフが良かったんだろう。


 アニマロイド達も生来の人懐っこさと奔放さで、すぐに人間と打ち解け冒険者に参加し、共に新天地の開拓に乗り出す仲となった。


「行ったぞ、ミーア!」

「任せるニャン! くらえ! ねこパンチにゃー☆」

「ギャウゥ!!」


 そんな風にアニマロイド達は、人間より高い身体能力と直感力で、大いに冒険者パーティーに貢献する。

 そしてやや本能と好奇心に従順過ぎる点に関しては、上手く人間がフォローしていたのだった。





 そんな様子を見て、またレイスがポツリと呟く。


「成程。人間は自分と似た姿の者と仲良くなるのか。ならば今度は魔物を人に似せて創ってみよう。そしたら、人間は魔物を受け入れ、皆が仲良くなるだろう」


 ―――こうして人の形をした魔物・魔族が出来た。


 だが魔族は人間達に受け入れられず、魔族も魔物の気が強かった為、なんなら人を食材として扱った。


 その様子をいち早く察したらムガルは、せっかく人間と仲良くなったアニマロイド達が、今後人と不仲になるのを不憫に思った。

 そこで今後、魔族や魔物が信仰するのは“匿名女神”と言う事でその名を伏せるという対策を取ることにしたらしい。


 レイスの創造物とゼロスの創造物の間にある誤解が解けるのは、まだもっと先の話しになりそうだ。









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