表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界樹の呟き 〜チートを創れる可愛い神々と、楽しく世界創造。まぁ、俺は褒めるだけなんだけど〜  作者: 渋柿
最終章 起点回帰【邪神と呼ばれた少女は世界から溺愛される】
458/582

ピクニック

 イヴとクロが長年育ったジャック・グラウドの大地を後3日程で去ろうかというそんな天気の良い日。


 シアンはイヴとクロ、そしてクロの契約獣達を連れて、馴染み深い湖畔へとピクニックにやって来ていた。


 フェにクス……では無くフェニクス(フィー)はピヨピヨと囀りながら、黒の頭に埋もれている。ガルドルド(ドル)サリヴァントール(ルナ)はクロの鞄の中で丸くなっていて、ウェルジェス(テン)はクロの体内の水分と同化して、時たまクロからぴちょんと飛び出して遊んでいた。

 皆手の平サイズで、サリヴァントール(ルナ)ウェルジェス(テン)はクロの小指ほどに細いので、ただひたすらに可愛らしかった。

 クロもそんな可愛らしい新たな仲間に、満面の笑みを浮かべ、嬉しそうに歩いている。

 フェンリル(ラーガ)はもう中型犬程の大きさになっているのだが、そんな雛たちに嫉妬する事なく、先人の貫禄を見せつけ、クロの前方を歩いていた。

 ……それから相変わらずクロに抱えてもらっているキールだけど、雛たちの生まれた当初は、フェンリル(ラーガ)と同じく先人の貫禄を見せようと頑張っていたのだ。しかしキールは能力的にはただのレベルの低いスライムでしかない。

 結局30分も経たない内にキールは己の限界を知り、クロに慰めてもらうことになったのだった。


 ―――大丈夫だよ、キール。今回はちょっと後輩達のポテンシャルレベルが高過ぎただけだから。君は本当に立派な、クロの従魔だよ。


 そうこうしてる内に、ロゼを含めた4人と6体の獣達は湖にやって来た。

 湖畔に到着すると、先頭を進んでいたイヴが楽しそうに振り返って提案した。


「ねぇクロ。クロの獣魔も増えたし、親睦会しようよ」

「親睦会? ハウスで誕生パーティーしたけど?」

「家の中でじゃなくて、外でみんなで遊ぶの!」


 イヴが一生懸命説明すると、頭にロゼを乗せたシアンが深くうなずいた。


「そうだな。レクリエーションは大事だぞ。オレもかつて身に沁みて体感したからな」


 うんうんと感慨深げにそういうシアンだが、それは概ね勘違いである。


「ま、オレとロゼはランチの準備でもしながら見学してるよ。な、ロゼ」

「そうだね」


 笑顔でアイコンタクトを交わし合うシアンとロゼに、クロは口を尖らせてシアンに言った。


「えー? 俺も手伝うから父さんも一緒にしようよ」


 だがシアンは笑顔で断固として断った。


「ふざけろ。イヴやクロの獣達にオレがついていける訳ないだろ」

「ちぇー、最近父さん付き合い悪いよ」

「じゃあ今度は是非付き合える内容で誘ってくれ」


 そしてクロは諦めたようにイヴの方に駆けて行った。


「イヴ、父さんは駄目だ。一緒にやってくれない。俺達だけでやろう」

「いいよー。ねぇ、ボール投げしよう。キール、ボールになってよ」

「キヒッ!」


 楽しげに遊び始めた子供達を見て、シアンが目に涙を浮かべながらポツリと呟く。


「……駄目な父さんでゴメンな」


「シアンは駄目な仔じゃないよ。泣かないで」


 だがすかさず入ったロゼの神優しいフォローのお陰で、シアンが貧血で倒れることはなかったのだった。




 ◆◆◆




 イヴが弾む声を上げる。


「フィーちゃん行くよぉー!」


 そう言って手に掲げるのは、三角耳を収めてまん丸いボールになったキール。

 フェニクス(フィー)は嬉しそうにクロの頭から飛び上がり、投げられたキールをぽんと頭突きで弾き返した。


「フィー上手!」

「ぴよ!」


 フェニクス(フィー)はクロに褒められ得意げだ。


「次ルナちゃん行くよぉ! それ!」

「しゃー!」


 ルナも大地を滑り、転がるキールに追いつくと、ボールを押し返した。


「うまいうまい!」


 手を叩いて喜ぶクロ。とても微笑ましい風景だった。


「次はドルだよ! ……だけどドルはカメだから難しいかな」

「コフーっ」

「出来るの? 分かった。じゃ、行くよー!」


 そう言ってイヴがキールを投げた時、―――突然、大地から岩がせり出したきた。

 勢い良くせり出してきた岩は、そのままキールを弾き返し、見事にイヴの手元に収めさせる。


 イヴとクロは目を丸くしてガルドルド(ドル)を見つめた。


「ドル……今の、魔法?」

「コフー」


 イヴの質問にガルドルド(ドル)が喉を鳴らせて頷いた瞬間、クロとイヴが堰をきったように喜び始めた。


「凄い! ドルは赤ちゃんなのに魔法が使えるの!? クロ、見てた!? 魔法で上手にキールを返してきたよ!」

「見てたよ! ドルは天才だね! こんな凄い獣、見たことないよ!」

「コフッ」


 クロに甲羅を指先で撫でて貰い、ガルドルド(ドル)が得意げに喉を鳴らした瞬間、他の獣達の目つきが変わった。


「じゃあ次はテンちゃん行くよー!」

「クォォーンッ!」


 ウェルジェス(テン)が、そう喉の奥を鳴らすと、突然湧いて出るように、空中に小さな小さな幾億もの水の粒が発生した。

 ―――それはまるで静止した雨粒。

 空は晴れているため、その無数の水の粒は日の光を受け、まるで宝石の様にキラキラと幻想的に輝いた。


「綺麗……」

「これ……テンの魔法? テンも魔法使えるの?」

「キュオォッ」


 ウェルジェス(テン)が喉を鳴らす間に、空中を飛び抜けるキールの周りには、触れた水滴がまとわりついていく。

 やがてウェルジェス(テン)の前にキールが到達した頃には、それはキールを中に閉じ込めた、一つの【ウォーターボール】になっていた。

 ウェルジェス(テン)は尻尾の先でそれをはたき返すと、【ウォーターボール】はゆふよりふよりとゆっくりと前進し、イヴの目の前で弾けて消えた。


 そんな演出に、クロとイヴが絶叫しながら喜んだのは言うまでもない。

 そしてその後「ちょっと難し目に」と言って空高く投げられたキールを、フェンリル(ラーガ)が竜巻を起こして回収キャッチし、誰が取ってもいいと言って投げられたキールは、電光石火でサリヴァントール《ルナ》がキャッチした。

 更に次は、電光石火を上回る光速でフェニクス(フィー)がボールを手にし、皆はそれはそれは楽しそうにキールを追いかけ回していた。




 そしてその騒ぎから離れた木陰で、シアンはバスケットを広げてランチの支度をしていた。

 お皿を並べるシアンが、笑顔でポツリと呟く。


「―――うん。こうなる事は分かってた。……一緒に出来るわけないだろ」


 ロゼもビスケットを食べながら、イヴ達を眺めてうんうんと頷く。


「僕も若い頃はああやってよく遊んであげたものだけどね。……今はもう無理だなぁ」


 感慨深げにロゼがそう言ったのは、ちょっと爺臭いけどよくある台詞。―――……ただ、それの意味する所は【神話】の中での話。


 シアンは無言でそんなロゼに、お代わりのクッキーを奉納……いや、差し出したのだった。 


確認メモです↓


フィー(フェニクス)属性光・不死鳥

テン(ウェルジェス)属性水・龍

ドル(ガルドルド)属性土・カメ

ラーガ(フェンリル)属性熱・双頭狼

ルナ(サリヴァントール)属性雷・蛇

キール(ディスピリア)属性虚無・スライム


……です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ