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世界樹の呟き 〜チートを創れる可愛い神々と、楽しく世界創造。まぁ、俺は褒めるだけなんだけど〜  作者: 渋柿
最終章 起点回帰【邪神と呼ばれた少女は世界から溺愛される】
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魔境(ジャック・グラウンド)に現れた異次元魔境③

※現在の話は“最終章 起点回帰【邪神と呼ばれた少女は世界から溺愛される】”の“プロローグ”から読んで頂ければ一応分かるように書いています。また、それ以前の話は“裏話”となります。

 

【聖母】達はシアンに簡単な挨拶を思案と交わすと、クロに冒険者カードのような物を渡し言った。


「冒険者カードのレプリカですよ。お誕生日おめでとう、クロくん」

「ありがとうマーリスさん! わぁ、三枚もある。じゃあね、おれこれで父ちゃんとイヴと一緒に冒険者ごっこするね! おれ大っきくなったら冒険者になるよ!」

「あらあら♡」

「お、おいっ、クロを洗脳するな!」


 シアンは慌てて【聖母】に声を上げた。

 その時、不意に厳かな鈴の音が辺りに響いた。



 ―――リーン、シャンッ、シャンッ、リーン……



 俺達は一斉に、鈴の音のする方へと振り返った。

 そこでロロノアが大きく目を見開き、唖然と呟く。



「……うそぉ、……教、皇様……? なんでこんな所に……?」



 やって来たのは大教皇ファーシルの後継者、教皇アスモディア様と、大神官セレン様だった。

 先程鳴った鈴の音は、大神官セレン様の持つ、白銀の錫杖に付いた鈴の揺れる音だった様だ。

 そして何故か、その顔ぶれの中に【ノルマン】の教師ベリルが混じっている。

 ……アイツは何をしてるんだ? 混じってて違和感無いのが逆に不気味だ。


 子供達はぴょこんと跳ね、三人に深々と腰を折ってお辞儀した。


「あ、教会のおじさん達だ! こんばんわ」

「こんばんわ!」


 教皇様と大神官様、あとベリルが進み出て、子供相手に儀式的な美しい仕草で頭を下げる。


「こんばんはイヴ様。こんばんわクワトロ様、体調は如何でしょうか?」

「大丈夫だよっ」


 子供たちが嬉しそうにご挨拶をすると、教皇アスモディアもまた微笑みながら近づくと、膝を折ってクロの頭を撫でた。

 シアンといえば、相変わらず手慣れた様子で小麦を捏ね回しながら、呑気に笑ってやがる。


「おいおいアズー“溶け込める様に”って言ってたろ。めっちゃ浮いてるぞ? 法衣くらい脱いでこいよってんだ」


 ……断じて衣装の問題ではない。後アズーって何だよ、教皇様に向かってアズーって。

 教皇様は困ったように微笑みながら、シアンに謝る。


「ええ、申し訳ありません。野暮用で着替える間がなくなってしまいまして、お恥ずかしい限りです」


 ……断じて教皇様は悪くない。寧ろシアン、お前が口を慎め。

 なんて俺の内心突っ込みも虚しく、場は穏やかな雰囲気のままそれぞれが楽しげに笑い合っていた。

 そして一通りの談笑を交わしたあと、教皇様は胸に抱いていた、きれいに折り畳まれた毛布のようなものを、クロに差し出して言った。


「五歳の誕生日おめでとう御座います。後で【神降りの儀】を行ってあげましょう」

「うんー! わぁ、広げていい?」


 クロがそれを受け取り広げてみれば、それは銀色のハーティー草の刺繍が縁に施されたブランケット。

 その中心には聖葉の模様が、大きく描かれていた。


 一瞬、シアンの顔が引き攣る。


「アズー、……お前それまさか……」

「ええ。【森】に住むシアン様の先生方と私達からの連名で贈らせていただきます。これから寒い季節が来るので、暖かくなさって下さいね」


 そう教皇アスモディアがやわらかい笑顔を浮かべながら、そんなよくある口上と共にブランケットを贈った。

 俺はふと思い立ち、コッソリその品を鑑定にかけてみた。



 ■■■■■■


 種別: 装飾

 名前: 銀糸のブランケット

 防御: +102

 付与: 【熱】


 ※森の深層に住む【ハイエルフ】によって精錬された神銀(ミスリル)を、糸状に加工して織り上げられたブランケット。

 包んだものを三十七度に保つ効果がある。


 ■■■■■■



 ―――……やべえ。

 俺の【竜の革の胸あて】で、“防御+38”とかだぞ?

 後“防御+102”って、絶対に10月2日を狙って設定してるだろ。

 防御力を狙ってとかあり得ないんだよ。


 俺が無表情でその文字盤を眺めていると、隣からのんきなロロノアの声がした。


「はあぁぁー、しかし教皇様といい、セレン様といい、ベリル教授といい、この世のものとは思えないくらい美系ですねぇ。あのシアン教授すら霞んで見えますよ。あんな方達がいるから、僕らみたいな者は結婚できないんですよねぇ。そう思いませんか?」

「俺は結婚してるぞ」


 そう即答してやれば、ロロノアは信じられないものでも見るような目で俺を見上げてきた。

 ブッ飛ばすぞこの野郎。

 俺は溜息を吐きながらロロノアに言った。


「ガキは三人、今年で一番上が十五歳、下は九歳になる。もう三年会ってないがな。だから早く帰りてんだよ。しっかりしてくれよ? 俺の後釜のロロノアくんよ」

「あ、はっ、はい!」


 何故かロロノアは敬礼しつつそう答えた。

 俺はククッと笑い、またあの魔境の中心に目を向ける。

 そこではベリルが楽しげにシアンに話し掛けていた。


「いやぁ、ホントは俺達も本丸を狙って行ったんだけどな、周りが強いのなんのって! 本気で行ったんだけど八回達磨にされた所で、もう駄目だっつって諦めたんだ。そしたらシアンの先生方が俺等を拾って手当をしてくてれてさ。話してたら……」

「待て待て。なんの話をしてる? 達磨?」

「あぁ、そうだ。ベリル兄さん、シアン様は例の流れを見られていないんだよ」


 大神官セレン様の一言に、俺は思考は一瞬固まった。

 ……は? ベリルの奴、ただの調子の良い美形の後輩だと思ってたら、セレン様のお兄様なの? まじかよ。聞いてないんだけど。

 ……いやでもまあ、確かにベリルならあの集団に混じっても、違和感は無い。 


 俺がそんな脱線した事を考えていると、シアンは首を傾げ、セレン様に尋ね返していた。


「流れ?」

「ええ、例のお誘いのレスを読み返して頂ければ把握出来るかと」

「そうなのか? 後で見とくよ」


 だんだん話についていけなくなったので、俺はふと子供達に目をやった。

 子供達はいつの間にか、目に包帯を巻いたエルフの少女と仲良く話をしていた。

 ……あの娘はなんて言ったか、……そうだ。シアンの知り合いの娘さんで、確かクリスティーちゃんだ。


「クロくんお誕生日おめでとう! 前に欲しいって言ってた【獣図鑑(ジャックザビースト)】だよー! 【聖獣】【魔獣】【動物】各二巻の全六巻! 複製版(レプリカ)だけどね」


 ―――!? 


獣図鑑(ジャックザビースト)】といや、この大陸の祖【ジャック】が晩年に書き綴ったと言われる、幻の獣図鑑! 

 オリジナルは、ジャックの手書きの物が各一冊のみ。それもノルマンの禁書庫に厳重に保管されてるとかしないとか……。

 レプリカも、……すっごい貴重で……、……っ俺も読みたいっ!!


「凄ーい! ありがとうクーちゃ!」

「いいよ。だって私はプレゼントを贈るスペシャリストだからね! なんだって用意してみせるよ』


 てか『プレゼントを贈るスペシャリスト』ってなんだ!? 

 ……駄目だ。なんか頭痛くなってきた。


 俺が目頭を抑えていると、またロロノアがポツリと言った。


「……僕も見たいです。でも『宝物だから見せないよ』とか言われたらどうしましょう? とりあえず土下座でしょうか?」

「あぁ、そんときは俺も誘え。俺も一緒に土下座してやるから」

「わー、流石先輩、頼りになります」

「いや、まあ話しの通じる奴がいて、俺も救われてるからお互い様だ」


 そんな冗談のような大真面目の口裏を合わせていると、【黒き聖獣ルドルフ】と【精霊王】もやってきた。


「クロー! お誕生日おめでとう! みてみて! プレゼントだよー!」

「おぉ、もうみんなも集まってきてんな」


 その二人も、大人ひと抱えほどある大きな箱を持っている。


「んだよ、【箱】はまだ誰も開けてねぇのか。ここに置けばいいのか?」

「うん、僕のも置いておくね! ロゼ様は?」

「リリーの店の中で何か食べてると思いますよ」

「ん! じゃあちょっと行ってくる!」


 ……そう言えば、ガラムや、フィル(?)の箱はまだ開けられていない。

 ケーキの箱の隣に置かれ、同じようなサイズの物が並べられて行く。何が入ってるんだ?


 沈黙する四つの箱。謎は深まるばかりだった……。

あと二つの卵は一体誰の手に……?

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― 新着の感想 ―
[一言] 花粉症のせいかぁ… まぁ、アレルギーは辛いもんねぇ…
[一言] うはぁ! いやー 誰か卵持ってるんでしょうか? ていうかマスターは? まだきてないの?? 見逃したか? みかえすべきか?
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