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世界樹の呟き 〜チートを創れる可愛い神々と、楽しく世界創造。まぁ、俺は褒めるだけなんだけど〜  作者: 渋柿
最終章 起点回帰【邪神と呼ばれた少女は世界から溺愛される】
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ある秋の日の散歩

 《イヴ視点》


 クロが手術をして、あの後すぐに暑い夏が来た。

 シアンやクロとは一緒に遊べなかったけど、私はルドルフやガラムおじさんと毎日のように湖に出かけた。

 家ではシアンから【マナ】と言うものについて教えてくれたり、クロに噛まれた傷が治った頃あたりから、たまにクロにも会わせてもらえるようになったりもした。

 そんな時は、前みたいにシアンに一緒に絵本を読んでもらった。

 そんな日々を過ごしている内に、いつの間にかそんなに熱くもない日が続き、更にはなんだか冷たい風が吹き始めるようになって来た頃の、ある日の事。



「クロくんの外出を許可します」



 クロの透析を終えたジョーイさんが、シアンにそう言った。

 途端にシアンは口元をマスクで覆ったクロを抱き上げて、くるくると回りだして叫んだ。


「ホントか!? やったなクロおぉぉっ!」


 クロもブンブンと振り回されながら、マスクから覗いた目元は歓喜に細くなっている。

 ジョーイさんはそんなシアンとクロに、嬉しそうな笑顔を向けながら感心したように言った。


「だけど本当に凄いわね。まだあれから三ヶ月よ。クロくんの空腹は収まってはいないのに、それを完全に理性で押さえ込んでいる。これはとんでも無い精神力よ! こんな事って、成熟した大人でも難しい事なのに」


 クロはあの日私に噛み付いて以来、時折苦しげな顔をしつつも、もう私やシアンに噛み付こうとする事はなくなったのだった。


 そしてひと夏の監視を経て、今日とうとうクロに外出許可が降りたのだ。

 くるくる回って妙な踊りを踊り続けるシアンに、ジョーイさんは指を突きつけて言った。


「まだ無理はさせない事。後、絶対に目を離しては駄目よ?」

「おぅ! 勿論だ!」


 シアンは嬉しそうに答えると、デレデレとクロに尋ねる。


「クロぉ、どこ行きたい? どこでもいいぞ? どこ行きたいぃ??」

「みずうみ」


 クロはマスクの下からモゴモゴと即答した。


「湖畔な! 良いけどもう水は冷たいから、水遊びは出来ないがそれでも良いか?」


 シアンの問いかけに、クロはコクリと頷いた。

 するとどこからともなく、鈴の音を響かせながらロゼが飛んできた。そしてロゼはクロの頭にポスリと着陸し、嬉しそうにクロの頭を撫でた。


「おめでとうクワトロ。皆でお出かけ、楽しみだね!」


 クロはロゼの言葉に、嬉しそうにまたコクリと頷いた。

 ロゼは一時期、物凄い寝ぼ助になっていた。

 最近はまた元気に起きているけど、酷い時は一週間起きなかった事もあったのだ。

 何だったんだろう?

 その時の事をふと思い出して見れば、何だか私が悲しかったり寂しかったりする時に、ロゼはよく寝てた気がした。……ま、関係ないか。


 私達は早速【ハウス】に戻り、お魚のパイを焼いてバスケットに詰めると、湖に向けて出発した。

 いつの間にかロゼのポシェットも直って返してもらっていた様で、ロゼはシアンから離れてあちこちの風景を楽しみながら飛び回っている。


 ―――風は冷たいけど空は晴れていて、ロゼの飛び回る鈴の音が響く散歩道。

 そして隣を見れば、シアンとクロが居る。

 私は嬉しくなってクロに言った。


「クロ、手を繋ごう」


 クロは頷いて私に白い手を出して来た。

 その手を握れば、懐かしい暖かさに逆に違和感を覚えてしまう。

 私は手を繋いだまま、照れ隠しにシアンを見上げて笑った。

 大きな荷物を背負い、片手にバスケットを持ったシアンは、空いた手で私とクロの頭を交互に撫でてくる。

 その時ふと私は、シアンの隣でロゼが少し羨ましそうな顔で私達を見ている事に気付いた。

 私はシアンに言う。


「シアン、ロゼも“いいこいいこ”してあげて」

「!?」


 ロゼが焦ったようにビクリと飛び上がったが、シアンは気付いてないようで手を振って笑う。


「いやー、流石にそれはないよ」


 ……ロゼがとても悲しそうな顔をした。

 やっぱり気付いてないシアンに、私は教えてあげる。


「ロゼが可哀想だよ」

「いやいや、ロゼ相手だったらどっちかってーと、オレがいいこいいこされる側だしなぁ」


 そう言って冗談っぽく笑うシアン。……どう見てもシアンがいいこいいこする側だと思うけどなぁ。

 だけどロゼは、その言葉で意を決した様にシアンの前に回り込むと、驚くシアンの鼻先をよしよしと撫でた。




 ―――ガシャン……




 シアンが手に持ったバスケットを取り落とし、突然崩れるようにその場に蹲った。

 ロゼが驚いて叫び声を上げた。


「どっ、どうしたの!? シアンっ」

「なっ、なんでもござぃません!!」

「なんで敬語!?」


 震える手でバスケットを拾い、直ぐにスックと立ち上がったシアン。

 だけどそのキリリとした表情とは裏腹に、何故かその顔には鼻血が垂れている。

 ……触れただけでシアンにダメージを入れるなんて、見かけによらずロゼは腕力が強かったのだと、私はこの時初めて知った。



 ◇



 森を抜け、青く輝く湖が目に入った時、私は思わず感嘆の声を漏らした。


「っほおぉぉ!」


 ここにはルドルフやガラムおじさんとは、この夏の間に何度も来た。

 だけどその見慣れた筈の風景が、シアンとクロ、そしてロゼが一緒だと、まるで別の場所の様に輝いて見えたのだ。


 声を漏らしてからハッと隣を見れば、シアンとクロは私を見ながらクスクスと笑っている。

 ……私は恥ずかしくなって俯いた。

 もじもじと私が下を向いていると、手を繋いでたクロの手が突然私の手を強く握り返してきて、そのままぐいっと引っ張られた。

 そしてクロは言う。


「来て、イヴ」

「何?」

「いいから来て」


 私は頷いて、クロに引っ張られるままに小走りに駆け出した。

 シアンが慌てて私達を呼び止めてくる。


「あっ、二人共待て! 目の届く範囲に居ろってば」


 するとクロは振り返ってシアンに言う。


「あそこに生えてる木の所に行くだけ! 父ちゃんは来ちゃだめ!」

「え……」


 クロの言葉にシアンの足はふらふらと止まり、ついでに凄く悲しそうな顔をした。

 だけどクロの言う“木”は然程遠くは無い。私はシアンを置いて、クロに手を引かれるままに付いて行った。


 そして間もなく辿り着いた“木”の前でクロは立ち止まり、私にヒソヒソ声で言った。


「ここにね、おれ前に宝物を隠したんだ」

「!?」


 私は目を見開いてクロの顔を見た。

 だって、宝物!? クロは何という秘密を持っているのだろうか!

 私は万が一にも誰かに聞かれでもしていないかと、バッと振り返り、辺りを見回した。

 だけど辺りに別段人は居らず、遠くの木陰の下にぽつんとシアンが膝を抱えて座っているのが見えただけだった。


 私はまたクロに向き直り、ヒソヒソと声を忍ばせて尋ねる。


「凄いね! こんな事って凄くドキドキするね! どこに宝物を隠したの?」


 クロはスッと木の幹の一点を指差した。

 それは丁度私達のお腹の辺りの高さで、木の幹が縦に裂けている。

 そしてそこには、みっちりと小石が詰め込まれていた。

 私はピンと来て、クロに言う。


「ここの石で塞いでいる中に、宝物を隠してるのね?」


 クロはコクリと頷いた。

 私の読みは正しかったようだ。

 クロが私に笑いかけるように目を細めて、弾む声で言った。


「一緒に取り出そう」

「うん!」


 私は頷き、細い木の枝を使って、二人で幹に詰められた小石を外していった。

 本当の宝探しみたいだ。

 胸がワクワクして、やっぱりクロと一緒に遊ぶのは、誰よりも楽しいと改めて思う。

 私達は懸命に小石をほじくり出し、やがてとうとう幹の裂け目の虚の中から、見覚えのある封筒が出てきたのだった。


 私はクロに尋ねた。


「これ、キラキラシール?」

「うん。手術の前にね、ジョーイさんが『辛くなるだろうけど頑張ってね』って言ってくれたんだ」

「手術の()()……?」

「うん」


 ジョーイさんはいつも、検診や注射の()にキラキラシールをくれる。……だから少し、不思議な感じがした。


「その時おれね、また元気になったら取りに来ようと思って、ここに隠してたの」

「そうなんだ」

「開けてみてよイヴ」


 クロにそう言われ、私は頷くとワクワクしながら木の裂け目から封筒を抜き出した。

 それを手に取ってみると木のお汁が付いたのか、封筒は所々茶色く汚れている。

 だけど封筒開けてみれば、中のシールは無事のようだった。

 そして封筒の中からキラキラシールを取り出して見て、私は思わず小さな声を上げた。


「……あ」


 中から出てきたのは、青くキラキラと光る綺麗なシール。

 そこに描かれていたのは、キラキラと輝く人魂の群れの中で横を向いて佇む、骨の翼を生やした男の人だった。

 私がそのシールを見つめていると、クロが横から説明をしてくれた。


「それはね、“キラキラシール・モンスターシリーズ”のレアシール【ルシファー】だよ。ヒューマンタイプの高位の魔物なんだ」


 私はじっとシールを見つめた後、クロの説明などお構い無しに率直な感想を述べた。



「何だかこの人、シアンに似てるね?」



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