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番外編 〜人間達に不要と言われたオレ。暫くして戻ったら、勇者を遥かに凌ぐチートになってた件⑦〜


「神の御使い様!」

「……違う」


 オレはげんなりして言った。


 あれから平伏したリーナを何とか引き摺り立たせたものの、リーナはそれ以降こうして目をギラギラさせながらオレに付いてくるようになってしまった。

 しかも悪いことに、さっきリーナが自己紹介の時“美貌の天才(笑)”とか言ってたアレがマジだったみたいで、こいつの顔を知るだろう人物とすれ違う度、ヤバイくらいに注目されるのだ。

 主だった例を挙げれば、リーナのストーカーっぽい男3人に襲撃され、百合ユリしい少女達は気絶をするか、オレを蛇蝎の如く睨んてくる。

 並んて歩くオレ達を見て、何やら慌てて何処かに報告しに行く下っ端丸出しの奴も何人かいた。

 まぁ殆どの奴はこちらを注視しながら、ヒソヒソと何かを囁き合ってるだけだったけどな。

 言ってしまえば、この街の半数以上にオレ達は注目されてたのだった。


「リーナ、頼む。付いてこないでくれ」


オレは懇願した。


「何をおっしゃいますか! 私は決して! ちょっとくらいしか富や名声を求めて魔法使いを志したのではありません! 私が魔法使いを目指したのはその叡智を探求する為なのです! そして神の御使い様こそが、それをご存知なのだと私は直感しました。……―――逃しませんよっ」


 ……ちょっとは求めたんかい。


「わかったよ。じゃあせめて、その呼び名何とかしろ」

「神子様!」

「格上がってんじゃねーかよ。ガルシアだ。ガ・ル・シ・ア」

「ガルシア様!」

「ガルシアだって」

「ガルシアさん!」

「もうちょい。ほれ、ガルシア」

「………………っ(ポッ♡)」

「おい」


 何故照れる。

 はぁ……。もういいよ、それで。



 そんな感じで、オレの(望まぬ)旅の道連れが出来た。

 なんか疲れた。 




 ◆



「何と?! リーナが学園を辞め、その者と旅に出ると? 勇者パーティーへの推薦状の検討もされているというのにか?」

「はい、学園長様。このリーナは彼のお方の言葉と力に、紛れも無い神の叡智の鱗片を認めました。そしてこのガルシア様は“絶望の穴”とも呼ばれるグリプス大迷宮に向かわれるとの事。そしてそれは勇者様の旅同等、若しくはそれ以上の危険を孕み、同時に私共の新たなる叡智の扉を開く事となるに違いありません」


 学園に戻ると、リーナは学園長という男に熱弁をしだした。

 ……おい。残念キャラは何処行った? 

 オレはリーナの学園内での立ち回りの変貌ぶりに白目を向いていた。


「なんと! そなたがあの絶望の穴へ!? 一体何を死に逝かれるというのです!?」


 じーさんよ。文字変換ミスってるぞ。

 学園長の青ざめように、オレは内心ツッコミを入れる。

 オレ、こんなツッコミキャラじゃなかった筈なんだけどな。


「まぁ、何をと言われれば200階層迄降りるには、どれ程の力量が必要なのかをちょっとした下調べにですかね」

「ほぅ成程。しかしどうやって調べるおつもりかな? 何か特別な探索能力でもお持ちとか」

「いえ、ありませんよ。普通に一番下まで降りて調べるだけです」


 今回はその実態調査も兼ねるから、賢者の石は封印して降りるつもりだ。

 レイス様も迷宮内で魔物を狩って、回収した魔石で押して参るようにと仰ってたからな。


 そんな風に淡々と質問に答えていると、だんだん学園長の顔色が悪くなってきた。そして……


「で、でっ……出来る訳無いじゃろぉぉぉーっっ!!!」


 とうとう学園長が突然吠えた。

 そこでオレはフッと笑いながらドヤ顔で言ってやる。


「出来無いと決めつけるのは、アホのすることだぜ……」


 ―――決まった。


 と、思ったら学園長は顔を真っ赤にして怒り出した。

 ……しまった。このノリ、ルドルフじゃ無いと通じない! 


「フッザケルな! 貴様のような奴に我が学園切っての期待の星であるリーナは預けられん!! どうしてもと言うなら儂を納得させるに値する物を見せろ!」


 いや、オレは預けてもらわなくて全然構わないんです!

 何故か怒鳴られ出した俺は、助けを求めるようにリーナの方をチラ見する。

 だがその時、リーナは学園長の説得を試みようとするどころか、まさかの“私の為に争わないで”状態でアタフタとしてるだけ。……って、おいっ!

 イラッときた。


 オレは額に一つ青筋を浮かべながら学園長のテーブルに、俺の持ち物袋をぶちまけて言った。


「フザケてんのはオタク等だろうが。オレの力量に納得できない? なら見せてやるよ。オレはこいつ等のいる世界で生きてきた。奴らと肩を並べてな。それでもまだ不満か?」


 机の上にはケルヌンノスの金の角に、ヒュドラの鬣、銀鯨の髭に、鳳凰の飾り羽。

 神獣様に至ってはギドラス様以外コンプリートされている。

 改めて見るととんでもねぇな。

 あの野郎、ホントいつかツっ返してやるからな。


「ユニコーンの尾に、ヒュドラの髭……他のこれは? まさかケルベロス?! それにこれはなんだ? こんな物見たことがない! どれも伝説とされる天災級の魔物や聖獣達の部位だ!」


 そりゃそうだろ。聖獣も神獣様も、基本的に聖域から出ない。見たことなくて当然だろう。


「これらと肩を並べる……だと? まさか……(戦って勝ったのか!?)」

「ああ、そのまさかさ。言葉通り肩を並べていた(馬鹿繋がりで皆友達さっ!)」


 学園長は腰を抜かして柔らかそうな椅子に倒れ込み呆然としていたが、軈て満面の笑みでリーナを突き出してきて言った。


「リーナはその年にして傾国と謳われるほどの器量を持ち、魔法のみならず全ての学問にも精通しておりまして、まさに非の打ち所の無い女性! 此度は特待生として学籍に残しておきます故、偉業を成し遂げられた暁にはぜひ我が校に()()お戻り下されば幸いですなぁ」

「ああ。彼女には気が済んだらキチンと帰るように念を押しときます」

「いえいえ! 長旅になると予測されますし? ほれ、男と女の二人旅なら……いやいやっ、これ以上は何も言いますまい! まぁご帰還の暁には盛大にお迎えさせて頂きます故、ガルシア様の所持品のごく一部で構いませんので、ご祝儀返しに我が学園に寄贈頂ければ……」

「断固断る」


 何言ってんだこのジジイ。

 人の成人は15歳だろ。オレを犯罪者にするつもりか?!


 ―――そうしてリーナの返却に失敗したオレは、トボトボと学園を去ったのだった。

 


 ◆



 オレが王都に来て約半日。……既に心底疲れ果てた。

 だがやっとの思いでノルマン学園を出ようとしたその時。オレ達の前に一人の女性が立ちはだかった。


「そこの2人、止まりなさい」

「?」


 金の縦巻きロールヘアが印象的な、かなり上から目線な女性。

 そう言えば昔、ルドルフにトリートメントのついでに鬣を縦巻きにしてやったらブチ切れられたな。

 あの時は本当に死ぬかと思ったなぁ……。


 縦巻きロールを見ながらそんな昔の思い出に浸っていると、隣からコソコソとリーナが耳打ちしてきた。


「アレは私の故郷の領主様の娘です。名前はマリーネット。一人娘で猫可愛がりされたからか、とても傲慢で我儘なお嬢様なので気を付けてください」

「へぇ」


オレが話半分に相槌を打っていると、マリーネットは木の扇子をこちらにピッと向けて尋ねてきた。


「リーナ。あなたまさか、この学園から立ち去ろうと言うの?」

「そうですお嬢様。私は、この学園で学ぶより、このガルシア氏と旅に出ることに決めました。それはあなたにとっても、私にとっても一番良い選択になるのではないかと存じ上げます」


 いくら領主の娘といえ、へりくだり過ぎじゃないか?

 そんな事を思いながらオレは静観していたのだが、その時突然、マリーネットが手に持っていた木彫りの扇子をリーナに投げつけ怒鳴った。


「黙りなさい! あなたにとって良いですって? それが気に食わないのよ! たかが村娘の分際で少しチヤホヤされたからと言って調子に乗らないで頂戴! お行儀の良い理由を並べて、私の前から逃げるおつもり? お父様に言ってあなたの村の今年の税を吊り上げてやるわっ! あなた確か、研究費の一部を実家に仕送りしているのでしょ? この学園を出てそれがなくなったら、村の家族が路頭に迷うことになりましてよ?」


 マリーネットの投げつけた扇子はリーナの頬骨辺りにぶつかって、皮を薄く切り裂き頬にトロリと血が溢れ出た。

 だがリーナは膝を付いたまま動かず、マリーネットもリーナの傷を気にも止めない。


 オレはツカツカとマリーネットの前に進み出ると手を振り上げた。


 ―――バシィィーンッッ!


 笑えてくるほど高く響き渡った張り手の音。

 頬を打たれてよろめき、呆然とへたり込むマリーネットを見下ろしながらオレは淡々と言った。


「―――上に立つのであれば下を守るのは義務。その信頼があるから下は上に従うんだ。それなのに権力を盾に人を傷つけ、落とし入れようとする等言語道断だ。その立場を忘れ民を無能と蔑めば、民は離れ愚者と成る。そしてその立場に溺れ有能を妬めば、最早その身を滅ぼす以外に道はない。それが嫌なら、それすらを受け入れる器を持つ事だな」


 この張り手は勿論だが、かつてオレが喰らいまくった“音だけ”のやつだ。

 喰らいすぎて、いつの間にかオレ自身もマスターしていた。

 説教に関してはハイエルフの先生から教えてもらったことの引用だ。

 あまり出しゃばりたくはないが、傍目に見てて流石にやりすぎだったからな。


「……っあ、あなた……何なの!? 名乗りなさい!」


 野次馬も集まり出し、涙目のお嬢様は頬を抑えたまま顔を真っ赤にしてヒステリックに叫ぶ。

 ……そんな痛くないはずなんだけどな?


「オレか? オレは、ガルシア」

「よくもっ、この私を叩くなんてっ……お、親にも殴られたことなんてないのに! ……だけど……これは何? こんなの初めて。私、痛いのなんて大嫌いなのに平気だわ……」


 そっか。良かった。

 衝撃が行ったのかと思ってちょっとハラハラした。


 内心ホッと胸をなで下ろしていると、マリーネットが不思議そうな顔でオレを見つめてきた。


「ガルシア様。私、あなたになら殴られても平気だわ。こんな感覚初めてなの」


そうだろうな。オレも昔は不思議だった。



「それにガルシア様のその言葉、私の胸に深く突き刺さったわ。……そう。確かに私の行いは間違ってましたわ」


ま、誰しも間違いはある。

素直な気持ちで反省できたならよしとしよう。

オレは苦笑しながらマリーネットに手を差しだろうとした……のだが


「こんな私は怒られて当然。そうよ。寧ろもっと私を怒って! そしてもう一度滅茶苦茶に叩いてやって下さいまし! ガルシア様!」


 そう言って頬を差し出してくるマリーネットに、オレの顔がヒクリと引き攣る。


 いやぁ……ちょっとお嬢様、言いたい事は大体わかるよ?

 オレに殴られても音ばっかで痛くて不思議だったんだよな。

 で、反省したついでに不思議だったからもう一回やってみて欲しいんだよな? 好奇心で。


 だけど、その言い方はな、周りにちょっと誤解を生むような気がするんだっ……! 


 案の定、野次馬達がどよめき始めている。

 なのに好奇心のお強いお嬢様は、周囲の目など気にせず一人クスクスと笑っていらっしゃる


「ふふ、ガルシア様のビンタ、癖になりそう……♡」


 だからぁあぁぁーっっ!!


「ズルいです! ガルシアさんっ、わ、私も殴ってください!!」


 ホッペからどくどく血を流すリーナが元気に謎の挙手をする。


 それを見た瞬間、オレの心は折れ、無意識に手近にあった学園長さんの石像を木っ端微塵に殴り壊した。

 音だけビンタの周波数を変えたやつである。

 ま、ただの八つ当たりだった。





 もう嫌だ。


 ―――ルドルフ。……オレあん時平気だって言ったけどさ。 ……やっぱり人間怖ぇよ……。






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