番外編 〜幸運のドラゴンさんは、負けられない(邪召しafter story③)〜
一応完結のストレスフリーから、筆が進む進む!(^^)
書きだめなしの状態から、連投します!(笑)
オイラは叫ぶ。
「ションな筈無いでしゅ! あの悪魔が、レイたんとゼロシュたまの手先!? あり得ないでしゅ!」
だってあの悪魔に、本当にレイス様が力を与えたと言うのだ。
しかも、あの慈悲深く、お優しいゼロス様の崇拝者!? 無い。絶対に無いっ!! あり得ないっ!!
だけどレイス様は小首を傾げ、言う。
「そうか? だけどダンジョン管理を任せているのは一人しかいない。あれが“お前の力になりたい”と言ったんだろう? そして今の結果がある。なのに何を憎む?」
「だって、あいちゅはダンジョンに階段作ったり、回復ポイント作ったり、オイラに意地悪なことしたでしゅよ!」
そうだよ。あのせいでオイラがどんだけっ……。
「そうか? しかしS級クラスのマナを、ファーブニルに与えておいたんだ。人間や、モフるために生まれたアニマロイドの冒険者なんか、束になってかかってきてもファーブニルの足元にも及ばない。……まぁ、油断さえしなければだけど」
「……」
……。
……確かにあれ以来、油断する事はなくなった。あんな事されりゃ、誰だって油断するはずもないだろ。馬鹿かよ。
……。
……っでもっ!
「あいちゅはっ、オイラを騙して、魔核をダンジョンコアにして嘲笑ってたでしゅ! 壊してみればいいって、いい余興だって意地悪に嘲笑ったでしゅ!」
「壊してみればよかった。だって鍾乳石で貫いても壊れないから。ダンジョンコアは、構造上ダンジョントラップやその設備等で壊されることはない」
……何その【傀儡】との相性の良さ。
一種のチートじゃん。
……いや、でもしかしっ! あいつはオイラの滅びを願ってたものっ!
「とっとと滅びろ、醜い邪竜って言われましゅた!」
もはや涙目でオイラがそう叫ぶと、レイス様は頷きこう言われた。
「そうだな。とっとと醜い肉体を滅びさせて、魔核だけになれば、痛みも苦しみもなく、楽に炎を運べたろうにな。そしてダークエルフも障壁など無駄マナを使わず済んだ」
―――……。
……な、……なっ、―――……っなんてこった!!?
もう、鼻水が出てきた。
ってか、この方今“無駄マナ”ってはっきり言ったな? 言い切ったな!?
だけどローレン! オイラはお前の頑張りを評価するからなっ!!
「まぁ、そういう事。アレはあれでレイス達にとって、役に立つ仕事をしている。ファーブニルから【傀儡】の魔法のことを聞いたとき、奴なりにお前とドワーフ達の為に保険を掛けたんだろう。つまり、もっと危機感を持つように警告し、諦めなければ、望みを完遂できるための仕掛けをした」
「で、……でもっ……あいちゅはっ……」
あの苦しみが、全部……全部奴の手の内? もがいてた筈が踊らされてた?
信じたくなかった。でも……。
オイラが涙目で鼻を啜りながらレイス様を見上げると、レイス様は無表情で、優しくオイラの耳の後ろの気持ちいい所を撫でてくれた。
しょ、……しょんなトコに撫でられたって、おいりゃ溶けないんだからねぇぇ……ぇ……。
「フィルはアイツの仕打ちに、腹が立つか。だがアレは、何故かああ言う物言いしかできないらしい。ゼロスはアレのそんな所に呆れていた。アインスは、そんな所が愛しいと言っていた。レイスは、そうだな……」
レイス様はそう言い、少し何かを思案するように、沈黙された。
……ま、そうだよな。オイラがどんだけ苦しもうが、腹を立てようが、振り返ってみれば、あいつは正解で馬鹿みたいに足掻いてたオイラが評価されることなんか……。
「そうだな。どうでも良い。フィルの腹が立つなら、消そうか?」
「ふぇ!?」
オイラは想定外の答えに、声を上げた。
だってちょっと待って。話の流れが今おかしかった! そこはその悪魔をレイス様が庇おうとして、オイラが悔しがるとこじゃない!?
オイラが唖然とレイス様を見上げていると、レイス様はオイラの頬をぷにっと押さえ、真っ直ぐな瞳をこちらに向けながら言う。
「レイスだって、友達の為に何かしてあげたい」
……いや、ラディー辺りが言うなら可愛いが、レイス様がそれ言ったら、洒落になんねっす。
「お前はフィル。レイスの友達。そうだろう?」
オイラはもう色々どうでも良くなって、レイス様の手に頭を預けるように擦り付けると、またレイス様を見上げた。
「いえ、消す必要はないでしゅ。だってオイラはフィル。レイたんの友達なのでしゅから。ファーブニルの持ってた怨みなんか、オイラには関係ないでしゅよ」
オイラはどこか清々しい気分でそう言ったんだ。
するとレイス様も、気持ち微笑みながら頷いた。
「そうか。……まぁ、そうだな。お前は世界の理すら変えるラッキーの持ち主。“幸運のドラゴン、フィル”なのだ。レイスが手を下すまでも無く、お前が心の中で奴の破滅を望めば、アレは半日待たず勝手に自滅して滅びるだろうしな」
「ふぇえぇぇ!!?」
っ今、なんて仰いました!!?
「ん? 幸運と不運は表裏一体。誰かの幸運に泣く者がいるのは当然だろう」
……っ。
……こわっ! 幸運のラッキードラゴン、超こわっ!!
強欲の邪竜なんて目じゃないくらい、怖ァァ!!!
「まぁ、物語には大抵“プロット”が用意されてる。レイスやゼロスが投げた序章に、あれがそれを付け加えたのだ」
「……」
なんだかなぁ……。仮にそれが本当だとして、もっと別のやり方無かったのかよ……。
オイラがげんなりと溜め息を吐くと、レイス様はまるで励ます様にオイラの背を叩く。
「それに、あれを嫌ってるのはお前一人ではないから安心しろ。……なぁ、ラムガル?」
……ふぇ?
……ラむ……ガ……ル……? まおうしゃま……? なんで……。
「はっ」
短い返答の上がった方を、オイラがギギギと音をさせながら振り向くと、そこにはレイス様と同じく空中に浮かび留まるドワーフが居た。
レイス様がなんの戸惑いも無く、そのデカいドワーフに声を掛ける。
「ラムガル、……ドワーフはそんなに高身長ではない」
「はい。存じております。今回は“ドワーフと人間のハーフ”と言う設定にございました故」
……設定が微妙に細かっ!
「また勇者の様子を見ていたのか? ならば今、レイスが殴り飛ばした。多分死んでる」
「……ゼロス様がお怒りになりませんか?」
「……ならない。なぜなら勇者は今、“ウルトララッキーフィーバー中”だから。スロットを回せば、外れ台でも最低15回はトリプルセブンが連続で出るだろう」
「……。……なる程!」
いや、なる程じゃねぇよ! 死んだらトリプルセブンとか無意味じゃん!
「ん。じゃあ、ラムガルはもう行っていい。別に用もないのだろう?」
「はっ、レイス様がお戻りになった気配を感じたため、こうして馳せご挨拶に参っただけにございます故。それでは余はこれにて、失礼仕りまする」
……。
そう言って、逞しくてでかいドワーフもどきは去っていった。
……何か、トンデモナイ物を見てしまったなぁ。
オイラはでかいドワーフの消えていった方を見つめながら、ぽそりと言う。
「……あの人は、一体何をやってるんでしゅかね?」
「知らない。レイスはもう関与しないと決めたから。ただ、今ラムガルは、千年の恋人達の結末を見届けに行ったんだろう」
……。
……過保護というか、なんと言うか……。
あんな強い勇者様も、見守られてんだなぁ……。
そりゃオイラなんぞ、導かれ、操られてたってしょうがねえか……。
サドで容赦なくて、そんで優しい語り部達の描く物語は、足掻いて、足掻いて、必死に生きて、それで初めて完結する物語。
……なんと言うか、そう。勇者も可哀想にな。
そしてふと、オイラのこの結末へ導こうとした仕掛け人の声を思い出す。
『―――……貴方に名乗る気なんて、端から無かったんですよ』
……。
いや、やっぱ許せないな。
もう滅びろとまでは思わないが、二度と会いたくは無い。
……まあその身元を、復讐の為にレイス様に尋ねるつもりも無いし、元々名前も分からず、姿も知らず、五千年探しても見つからなかった様な奴だ。
普通に生きててまず会わない。更にオイラがそう望んだのなら、今後も会うことはないだろう。
オイラは遠い空を見上げ、ポツリと呟いた。
「……名前も知らないアイちゅがいつか、誰かにボロカスに泣かされましゅように」
【番外編 〜邪竜さんは、召使いを追い出したい33(隠し歌)〜】の後書きで書いていた謎の答えが出ました!
〈答え ガルーラ=魔王〉
さて、どれ程の方に気づいて頂けてたでしょうか??(笑)
ガルーラの放つ妙なネタや、妙な口裏合わせ。必死で正体を隠し通そうとしている、涙ぐましい努力を感じ取っていただければ嬉しいです(^^)
そして、突っ込んでやってください。
“……お前かよ。何やってんだよ。”
と。




