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神は試練のダンジョン・グリプス大迷宮を創り賜うた②

レイス語りです。


目線が変わる為、若干内容被ります。


 レイスは今、大地をよく見渡せる闇の帳の上から、飛んでいってしまったオーナメントの片割れを探している。


 ―――はぁ……また失敗した。


 いつもはレイスの失敗を笑って許してくれるアインスさえも、今回ばかりは呆れ返って何も言ってはくれなかった。

 それもそうだ。だって今回レイスが壊したのは、アインスの宝物。

 なんとしてでも見つけて持って帰らないと、レイスはアインスに顔向けができない。


 しかしこうして改めて見渡してみると、大地はずいぶん大きくなった。

 オーナメントの破片はなかなか見つからないし、ちょっと消して、もう少し小さくするべきだろうか?

 ……いや。それをすると、きっとアインスは悲しむしゼロスは怒る。

 うん。まぁいい。よく探せばその内に見つかる筈。


 そんな風にレイスが起死回生をかけて一生懸命探していると、少し向こうにゼロスが居た。

 レイスがこれほど一生懸命なのに、ゼロスは帳越しに楽しげに人間とおしゃべりをしている。

 全く、困ったものだ。


 レイスは呆れて肩をすくめた。

 だけどよく見れば、ゼロスとお喋り中の人間達の側に、のんとオーナメントの欠片が生えているではないか。


「―――何をしている?」


 レイスは思わずゼロスに突っ込んだ。

 いや。本当に何のんびりお喋りなんかしてる?

 そこにアインスの宝物があるのに、見つけたなら早く持って帰るべきじゃないのか?

 レイスがこんなに一生懸命探していたのに。


 とはいえ、取り敢えず見つけられた事にホッとして、レイスは人間達に言った。


「やっと見つけた。それに触れるな人間共。こちらに渡せ」


 レイスは当たり前のことを普通に言ったはずだ。

 なのに人間達は、何故か大慌てで怒りながらレイスに突っかかってきた。


「これは渡さない! これはゼロス様が私達にお与えくださった至宝なのだ!」


 ……意味がわからない。どういう事? ゼロスが与えた? 勝手に人間にあげたの? ……なわけ無いか。


 ―――まぁ多分、また人間がなにか勘違いしてるんだ。

 いつもそうだ。人間は馬鹿で、直ぐに勘違いしてはレイスを悪者にしてくる。

 人間は面倒くさい。一体レイスが何をした?(※魔物を創りまくってます)


 創造物の責任は創造主の責任である、と以前アインスが言っていた。

 ……あれ? 子の責任は親の責任だったか? まぁ、いいか。多分似たようなもの。


 理性的なレイスはギロリと創造主であるゼロスを睨んでやった。


「ゼロス……」


『あはっ、ごめ。なんかあれ気に入っちゃったみたいで“これ何?“”って聞いてきたから教えてあげてたんだ。あ、だけどこれからちゃんと説明するところだったんだよ! 本当だよっ』


 ゼロスは言い訳がましくヒソヒソと現状を説明してきた。

 というかなんでそんな内緒話みたいな小声で話す?

 ……あぁ、そうか。察しのいいレイスは分かった。

 余計な事を聴かれたら、また人間が勝手な妄想と勘違いをするからか。


 もういい。

 レイスはゼロスに任せずに、自分でオーナメントを回収してアインスのところに帰る。

 まぁそもそもレイスのせいではあるのだけども。


 レイスは意を決して闇の帳を押し広げ、空気のある層に入った。

 この帳には少し細工がしてあって、魔物や聖獣達が間違って帳の外に出てしまわないように、内側からは空間が歪んでループするようしてある。

 自由に出入り出来るのは、レイスとゼロスとラムガルと天使達。あと、神獣達もか。

 アインスも出られるだろうけど、アインスは動かないから出ないだろう。


 レイスが内側に入って人間達の前に降り立つと、枯れかけた男がレイスに声を掛けてきた。



「魔王の崇める……女神……だとっ」



 ほう。良くも悪くもレイスの事は知っているようだ。


 人間は、じっとこっちを見てくる。

 じっと、じぃっと、じ―――……


 ……消したい。いや、逃げたい。恥ずかしいからコッチを見るな!

 いや。今のレイスは服も着ているし、人間の前に出ても恥ずかしい事はない筈。

 ハイエルフに貰った仮面もしてる。大丈夫。頑張れレイス。レイスは強い子……っ!


 よ、よし、なにか喋ろう。


帳の外に出てしまいたい衝動を抑え、レイスはなるべくハッキリとした口調で、理解しやすい言葉を選んで人間共に告げた。


「それはお前達の物じゃない。こちらに渡せ。さもないと、消す」

『レイス!ちょっと言葉がキツイ!もっと優しく言ってあげないと!』


 ゼロスがコソコソと帳の向こうからレイスだけに聞こえる声で注意してくる。

 あぁ、そうか。緊張で少し口が滑った。

 というかゼロスがちゃんと説明しないから、レイスが来てるのに。

 ゼロスは帳の向こうから口ばっかりだ。

 レイスは少し腹が立って少し眉間にシワを寄せながら、それでもどうしたものかと考えた。

 思案中につき沈黙していると、枯れかけた男の方が先に口を開いた。


「でで、で、……出来ない!! 渡す事は出来ないですぞ! どんな残酷な死が訪れたとても私は引かないっ。絶対に引けぬのだ!! これを渡せば人類の損失! これは人類の至宝! 子孫末代にまで語り継がねばならぬものなのです! この老いぼれなぞ幾らでも消し飛ばしてくれて構わん。だがコレだけは……これだけは持っていかないでくれ! 頼む! たのむ……」


 そう言って咽び泣く枯れかけた男。

 あぁ、しまった……泣かせるつもりはなかったのに。


 枯れかけた男は産まれたての子鹿の様にプルプルと震え、目と鼻からは凄い量の汁を出しているが、それでもその眼差しはレイスに必死に訴えている。


 まぁ仔鹿ならレイスはきっとイチコロにやられて、もふもふしては、もふもふして、多分もふもふしていた筈。

 だけどコレはモフどころか、毛根に至っては枯れ果てている枯れかけた男だ。

 よってレイスはこの男が幾ら泣こうが冷静な対処ができた。


 にしてもだ。どうしてレイスがそんなに怖いのだろう?

 何もしていないのに。

 流石にショックで文句の一つも言いたくなる。


 だが人間は弱い。怖がるあまりショック死される可能性だってある。

 それで後でゼロスに文句を言われるのも嫌だった。

 だからレイスは、なるべく優しく話し掛るという事を試みることにした。


 そうだ。アインスを真似してみよう。

 アインスは優しいから、真似すればきっと皆怖がらなくなる。

 ええっとアインスはまず微笑みながら褒める。

 それから何故そうしたいかのちゃんと理由を聞いて、みんなが納得できる方法をさり気なく提案したりもする。


……成る程よし。まずは“褒める”。


「成る程な。それの価値がわかるとは貴様、人間にしてはなかなか賢い。その通り。良くわかったな。これはお前の言う通り、その朽ちかけた命などとは比べ物にならないならぬ程に……いや、全ての人類の命とも比べ物にならないくらい貴重な物だ」


 まずは、全力で枯れかけた男の主張に乗ってみる。

 ちょっと盛ったけど、その主張を褒めるためだから丁度いいだろう。

 笑顔で言おうと思ったけど、レイスは笑うのは得意じゃない。

 顔が引き攣るから笑顔はもうやめよう。


『ちょっとレイス! 僕の作った人間達をあんまりディスらないでって言ってるでしょ!』


 別にディスってない。

 というかあの人間が言ったことに乗っかってあげて、褒めてるだけなのだと言い返したいが、ゼロスと喧嘩はしたくない。

 人間の方にさり気なく訂正を入れてしておこう。


「とはいえ、お前達の命にも幾つかの使い道はあるから安心しろ」

「……っひぃ」


これで安心だ。

じゃあ次は理由を聞いて、グッドアイデアの提案だ! 簡単だな。


「それにしてもお前は、それがどうしても欲しいようだな? いいだろう。お前が死ぬまでの刹那くらいは待ってやる寛容さはこちらとてある。子々孫々にまで語り継がれる死を迎えるがいい」


 人間なんてすぐに死ぬ。

 この男とて保ってもう十数年だろう。

 正直今すぐにでもアインスの所に持って帰ってあげたいけど、そのくらいの間なら事情を説明すればきっとアインスは気にしない。


 これは皆が平和理に納得できる、完璧かつ素敵な提案た。

 レイスは和睦を確信し、ガッツポーズを決めてポキリと指を鳴らした。



 ―――と、その瞬間突然男がさっきより勢いよく泣き出した。

 

 な、なぜだ?!



レイス、頑張りました。

そして、大失敗です。


生理的に受け付けない(受け付けられない)、という言葉をレイスは知りません。可哀想に。



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