閑話 〜レイス的エピローグ〜
神々を擬人化して書いてます。
こんな普通の兄妹が、創世神だったら……という話です。
ひゃふぅーーーー!!
バスケッ超っ楽しいぃーーーーっっ!!
……と、突然お兄ちゃんが、荒い息を吐きながら蹲った。
「ペース配分が下手だね、お兄ちゃん。そんなんじゃワンゲーム持たないよ? さぁ、次行くよ!」
私はそう言って、またボールを構えた。
……だけど、お兄ちゃんは立ち上がらない。
「……」
「お兄ちゃん? ……もしかしてもう終わり?」
……嘘でしょ? 体力無さ過ぎだよ……。
まあ良いか。いつの間にか日も暮れちゃったし、帰ってご飯にしよ。
私は蹲るお兄ちゃんに言った。
「美味しいご飯食べたら、また元気になるよ。簡単に、納豆とアサリ汁にしよっ」
「ヤメテクレ……」
お兄ちゃんがまだ何か言ってるけど、無視した。
その時だった。
「バブー! ハーイ!!」
「?」
近所の幼児バブニルちゃんがやって来た。
「ちゃーん! ぶぅーー!!」
残念だけど、幼児語はよく分からない。
……あー……。……そういえば今朝“庭で砂遊びをしよう”とか、私言ったっけ。
……いや、バブしか言えない幼児がそんな約束を覚えてる? ……うん。覚えてるはずないよね。
今は取り込み中だったので、バブには悪いけど、強制的に帰ってもらおう。
私がそう思い、バブを隣のお家に連れて行こうと抱き上げたとき、バブがまた声を上げた。
「姐さん、見てください。誰か居ます」
ーーー……って、喋れるんかい。
私が内心唖然としながらツッコみを入れていると、確かにバブの言った通り、玄関のチャイムが鳴った。
ーーーピンポー……ン……。
「はーい」
「書留です。サインをお願いします」
「はい」
ーーー……なんだろう? 私宛に3通も……。……あとチラシ。
私は不思議に思い、封を開けてみた。
“バスケチーム観戦チケット当選のお知らせ”
ーーー……え?
“サクラサク 第一志望校、合格通知”
ーーー……ええ?
“申請されていた、キッズバスケチームの参加メンバーが集まりました。新規チームとして認定致します”
ーーーえええぇぇぇぇ??
“特売、紅玉りんご10キロ699円”
ーーー安っす!!?
私は顔を上げた。
何このハッピーサプライズの嵐!?
「ちょ、……お、お兄ちゃん! お父さん!!」
慌てて私はお兄ちゃんとお父さんに報告に走った……ーーーけど、お兄ちゃんはまだバテている上、不機嫌だった。
ーーー……器ちっちゃ。
「もう、わかったから! アサリを海に返せば満足? ねえ、それよりお兄ちゃんこれ見てよ!」
「……え……」
◆
それから私達は、夜の浜辺でアサリを海に解き放った。
ーーー強く生きろよ。もう、漁師に捕まるんじゃないぞ。
……いや、あれもしかして養殖だった? 大海で生き残れるの? まあ良いか。
私達が無言で海を見つめていると、お父さんの声がした。
「ゼロス、レイス」
「あ、お父さん」
「りんごが安くてね、買ってきた。みんなで食べないかい?」
お兄ちゃんは凄い勢いで挙手した。
「食べる!!」
……そういえば、そんなチラシも入ってた。
お父さん凄いな。お兄ちゃんの機嫌が直った。
やっぱお父さんは最高だ。もう一生パラサイトしよう。
私は駆け出して、お父さんに飛びついた。
「お父さん、大好き!!」
その拍子に、お父さんはバランスを崩してコケた。
「あ、レイス! 何してるんだよ!? お父さん、大丈夫?」
「ああ、掠り傷だ。大丈夫だよ」
「ご、ごめんなさい。お父さん」
私が慌てて謝ると、お父さんは笑いながら言った。
「気にしないで。今のは俺が悪かったんだ。それよりレイス、何かいいことがあったんだって? パイでも食べながら聞かせてくれるかい?」
「うん! あのね、聞いてお父さん!」
「パイ食べながらって言われただろ?」
「いいんだよ。俺も早く聞きたいし。帰り道も話をしてくれる?」
「うん!」
私はお父さんの手を握った。
「もー、お父さんはレイスに甘いんだから」
「それはゼロスはしっかり者だからだよ。お兄ちゃんと言っても、もっと甘えていいんだよ?」
「……いいよ、もう大人だから」
「そうか。そうだね、流石ゼロスだ」
それから結局お兄ちゃんも、お父さんと手を繋いで、皆で家に帰った。
今日も、平和な一日でした。
◆◆◆◆おしまい◆◆◆◆
喧嘩をしたとも呼べないような、平和な1日でした。
※周りの人達の被った迷惑は測り知れませんが……。




