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神は、再び沈黙を守り賜うた 〜神殺しの一族②〜

今回もカーリー視点です。

 

「ーーー……ちょっとあなた方、何をなさってますの?」


 オッサン(ヘンタイ)二人にギュウギュウと抱きしめられ、吊し上げられていると、お花摘みに行ったはずのラクちゃんの声がした。

 オッサン(ヘンタイ)二人の声が被る。


「「え、愛しすぎてつい」」


 ……愛なんかいらない。そう、心の底から思った。


「カーリーが迷惑しておりますわ。離してあげてくださいな」


「あら、ごめんやで」


「そうだよね、キモいオカマなんかに触られて、可愛そうに」


「ワレ、ホンマいてこますぞ!」


 二人はそう言いながらも、渋々私を離してくれた。

 そして二人から解放してくれたラクちゃんに、私は感謝をしながら尋ねる。


「ありがとう、ラクちゃん。でも何でここに? ルシファー潰しに行くって言ってなかった?」


「ええ、そのつもりだったのですが、向かう途中精霊から知らせが入りまして。ガルダに預けていた私の武器の調整が終わったと」


「ああ、アダマスの鎌だっけ」


 私がそう言うと、一瞬ラクちゃんの顔に、背筋が粟立つ笑顔が浮かんだ。


「そう。……やっぱり私は、育てる事より“収穫する(刈り取る)”方が好きなので」


「……そう」


「なのでガルダから受け取りついでに、水さしはガンガーにお返ししておこうと思いまして」


 そう言ってラクちゃんが、翡翠のジョーロを取り出して上に掲げると、そこにガーちゃんがいた。

 ガーちゃんはいつも眠そうな目をした、15才の美人なお姉さんだ。

 水系の魔法を極め、ぶっちゃけ炎系のガルダおじさんより強い。

 ただ……、


「ガーちゃん! 居たならなんで助けてくれなかったの?」


「……メンドイ」


 超面倒くさがりなのだ。

 ガーちゃんはいつもは、世話をしてくれる神官達がいる神殿に引きこもっている。

 だけどこうして外に出るとなると、多分世話焼きのラクちゃんとかが一緒じゃないと、生きてけないんじゃないかな? この人……。


 そこで私はふと気付いた。


「……あれ? がーちゃんが神殿から出てここに居るってことは、もしかしてカーマおばちゃんや、サラちゃんも来てたりする?」


「まだここには来てませんが、動いてはいるようですね。カーマはメルク盗賊団と、“裏の世界最強”と言われるマフィア黒猫(ガットネーロ)ファミリーを率いてこちらに向かって来てますし、サラスは白鳥と共に、聖獣達を呼びに行っています」


 カーマおばちゃんは、今年42才を迎えるイケイケのおばちゃんだ。弓矢の扱いが上手くて、よく顔に覆面をしている事から、“フッド”の異名を持つ。おばちゃんは若い頃、盗賊団の頭メルクさんと結婚して、今では裏社会のカオがどうとか言う役職を持っているらしい。

 ソレからサラちゃんは、私よりちょっと大きな10才の女の子。盲目なんだけど、耳が良くてよく琵琶と言う楽器を引いてる、音魔法のスペシャリストだ。

 そして、サラちゃんは人間より動物といる方が好きという、ちょっと不思議ちゃんでもある。


 あの豪快なカーマおばちゃんと、年の近い物静かなサラちゃんが、私は好きだった。

 その二人がここに居ないということを聞いて、私は少し眉を寄せる。


「会いたかったの?」


「うん。……でも、会ったら殺したくなっちゃう。今は、そんな時じゃないんだよね……」



 ーーーポン



 ラクちゃんが突然、私の頭に手を置いてなでてくれた。


「よく分かってるわね、カーリー。いい子いい子」


「……」  


「あ! 僕も撫でたい!」


「アタシもっ、アタシもぉ!!」


「っ」


 あとに続いたその野太い声に、私は思わずラクちゃんの背中に隠れた。

 私は一族の中じゃ、弱いほうだからね。


 1番強いのがシヴァお兄、続いてガンちゃんに、ガルダおじさん、ガネシャ姉に、ラクちゃん、私、カーマおばちゃんに、最後がサラちゃんといった感じかな。

 まあ、将来性で言ったら、私も捨てたものでは無いかもしれないんだけど、今の私は弱い。

 ……いつか、魔王を瞬殺できるくらい強くなりたいなぁ。

 あ、魔王は死なないんだったか。ホント、つまんない。


 私がラクちゃんの後ろでそんな事を考えていると、森の木々の向こうから、大好きな気配がした。

 そしてみんな同時に、その方向を見つめる。……やがて、木々の向こうから、その姿が現れた。


「シヴァお兄!」


 私の上げた声で、お兄がニコリと微笑み返してくれた。

 続いてシヴァお兄では無い、澄んだ男の声が響いた。


「こんにちは。カーリーちゃん。お邪魔するよ。……今回は、斬りかからないでくれるかな?」


「……勇者。何でここに?」


 シヴァお兄の隣には、20才中盤の“勇者”が居た。

 この勇者に、私は以前顔合わせの時に、斬りかかったという過去がある。

 その時はお兄が“力試し”だと取り繕ってくれて、事なきを得たけど、いまだに顔を合わすたびにこうしてネチネチと言ってくる。……いつか、本当に殺してやるから。


 勇者を睨む私に、シヴァお兄は困ったような笑顔で言う。


「カーリー、そう睨むな。“アーサー”は俺の友人だ。これからみんなで聖域を目指すに当たって、打ち合わせに来て貰ったんだ」


「……勇者は信用できないよ。だって魂を持ったゼロスの使いだもん。天使みたいに、プログラムで動く人形じゃないんでしょ?」


「俺を心配してくれるのか。カーリーは本当に優しいな。だが、友とは信じる信じない、そんな利害関係で成り立つものでは無いんだ。そうだろ? アーサー」


「そうだね。……ただこの件に関しては、利害関係も多少はあるけどね?」


 勇者が目を細めながら、シヴァお兄をみた。


「シヴァ、君は神ゼロスに一矢報いる為に蜂起する。僕を含め、ゼロス神の創造した者たちで反旗を翻そうと言うんだろ。ーーーだけど、僕は違う」


「分かってるよ。アーサーは因縁を断ち切りたいんだろ? 古来より続く、魔王との無意味な戦いの連鎖の鎖を」


「そう。シヴァ、僕は君を大切な友人だと思ってる。だけど、この件に関しては、僕は君を利用させてもらう」


「ま、お互い様だ。俺は魔王には一切手は出さん。国の兵や天使達は好きに使っていいから、魔王と魔物を足止めしてくれ」


「それは有り難い。……僕はかつて夢見た共存など、幻想だと思い知った。不死の魔王以外、魔物は全て、1匹残らず殲滅させてやる」


 それからシヴァお兄と勇者はひとしきり笑いあい、聖域に向かうための難しい話を始めた。



 退屈になった私は、また皆から少し離れた木陰で、ナイフの素振りを始めた。






 以上で、一族の紹介編がおわり次回からまた普通に、聖域を護る者達のお話に戻ります。

 また、今回の話を書くに当たって、以下のメモを参考にしました。↓


 ①カーマ/弓矢/物欲盗賊

 ②カーリー/ナイフ/やばい幼女/腕が四本

 ③ガンガー/やばい強さ/水瓶

 ④サラス/弦楽器ヴィーナス/白鳥オルペウス 

 ⑤ラクシュミ/金のツボ/収穫鎌/穏やかなアラサー/腕が四本

 ⑥ガネシャ/ラブリュス 斧/商売人/オネエ/腕四本

 ⑦ガルダ/ミョルニル/変態のおっさん/火の翼

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