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神は、気付かれ賜うた

「僕を封じたシヴァと言う者ですが……」


「あ、待って。“シヴァ”でしょ? ……聞いたことがある」


 ポヨポヨマスターの話は、冒頭の一言でゼロスからストップが入れられた。

 レイスはそれに首を傾げるが、ラムガルは頷きながら言う。


「ハイエルフとルシファーが話していた中で、挙がっていた者と同じ名ですな」


「もしかして同じ人かな? なら、ハイエルフ達からも話を聞こう。ハ……。ーーー……。……レイス、呼んでくれる?」


「わかった」


 ゼロスは、また呼び出しに応じてくれなかったらどうしよう…と、思案したのだろう。そして、しばしの沈黙の後、レイスに頼んだ。

 その様子を見て、ポヨポヨマスターも声をあげる。


「畏れ入りますが、ルシファーもこの場に同席させても宜しいでしょうか?」


「いいけどどうして? ……寂しくなったの?」


「違いますっ!」


 ポヨポヨマスターが3センチほど飛び上がりながら、全身で抗議した。


「ーーー……アレの力は今回の件で役に立ちます。ならば、何度も説明する時間が惜しいと思いました。ただそれだけです」



 そして、ハイエルフ達とルシファーが招集された。



 ◆



 招集されたルシファーが、目を大きく見開き言った。



「……ちっさ」


「煩さいなぁ! ゼロス様と同じコメントをしないでよっ! 畏れ多いよ、何様のつもり!?」


「……。変わらねぇなあ……」


 ピョコピョコと、細かく跳び跳ねながら怒るポヨポヨマスターに、ホッと小さく笑いかけながら、ルシファーはゼロスに跪いた。


「参上しました、ゼロス様。……ここに来る途中、人間達が進軍の準備を進めている様子でしたが、……人間同士の戦争や、スタンピード(魔物の暴走)に備えているという風でも無さそうでしたね。……そう、妙な動きを見せていました。何か神託を降したのですか?」


 ゼロスはその報告に無言で首を振る。

 そして、ルシファーとハイエルフ達に告げた。


「ーーー……僕の創造した者達が、僕に向け反乱の狼煙を上げている。理由は分からない。そして、その主犯の名が“シヴァ”と言うらしい」


「「「!!?」」」


 ハイエルフ達の目が見開いた。

 ルシファーも、驚きに口を開け震えている。


「……え、では、あの戦の準備は、……まさか……」


「僕を打倒しようとしているんだろうね」


 ゼロスは悲しげに、静かにそう言った。


「ーーーともかく、このポヨポヨマスターもそのシヴァに捕まったそうで、その内情を今から話してくれるらしい。まだ、僕の味方でいてくれるなら、一緒に聞いて欲しいんだけど」


 ーーー……あぁ、ゼロス。

 そんなに自分を卑下しないで! ああもうっ! この、ゼロスを抱きしめてあげられない体を……では無く、幹や枝がもどかしすぎるっ!!

 ゼロス!! 俺は俺の細胞の欠片1つ残さず、ゼロスの味方だから!!


 俺が己の無力さへの怒りに任せ、枝をわっさわっさと揺すっていると、ハイエルフのひとりが重い口調で言った。


「ーーー……愚かな。世界樹様(アインス様)すらお怒りになっておられる。主神ゼロス様、そして主神レイス様。我らは何があろうと裏切りは致しません。たとえ世界が滅びようと、我が種族の誇りにかけて誓い申し上げます!!」


 そう言って、一斉に手に持つ美しい武器を天に掲げるハイエルフ達。

 ……ごめん。焚きつける気は一切なかったんだ。俺はただ、切な気なゼロスに萌えていただけで……。

 ……いや、何でもない。俺はもう、黙っておこう。そう、俺はただの樹なんだから。


 ルシファーも憎々しげに眉を寄せる。


「……ったく、あのバカ共は……。……オレも、主神が2柱に忠誠を誓います。必要とあれば、オレの存在の全てを捧げる所存です」


 ゼロスがそんな面々に、ホッとしたように息をつき、それから困ったように笑った。


「そんなに重々しくしないで、普通でいいんだけどね。じゃあ、ポヨポヨマスター、続きを話してくれるかな」


「はい。ーーー僕を封じた者であるシヴァは、ゼロス神様の創造された者を、ことごとく取り込むため活動していました。そして、それを支えていたのが、9名のシヴァの一族です。それらは、まず勇者に繋がりを持ち、魂の兄弟である精霊王とそれに連なる精霊と妖精の口を塞ぎました」


 ゼロスがポツリと呟く。


「……知らなかった」


 ゼロスは意外と、自分の創造した者達のことを知らない。


「それが約1200年前の事です」


「……」


 ゼロスは本当に、意外と自分の創造した者達のことを知らない。


「そして、八百万の神々の出す試練を越え、その祝福を身に宿し、どんどん力をつけていきました。そして、七大天使様達も……」


 ポヨポヨマスターの話に、ハイエルフが顔を顰める。


「しかし、人間はそれ程の時を生きられない。かつてシヴァがハイエルフの里に来たのは900年前の事。魂を司るルシファーだからこそ、その話をしたのです」


「ええ、一部のものを除いては襲名制です。そして、その一部のものに関しては、……はるかな時を生き続けている」


 ポヨポヨマスターの言葉に、ルシファーが首を傾げる。


「……もったいぶらずに言えよ」


 ポヨポヨマスターが鼻で笑った。


「ふ、ルシファー以外は、もう気づいてると思うよ? かつて僕のダンジョンに踏み入った事があり、永遠に近い寿命を持ち、魔王と共に創られた始まりの大天使様達を調伏できる“人間”」


「なんだよ、それ? 最早人間じゃなく、バケモンだろ」


 ポヨポヨマスターを睨むルシファーに、ゼロスが絞り出すような声で呟いた。






「……一人だけいる。聖櫃パーシヴァル。……だけど、なんで?」









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