表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/582

番外編 〜ルシファーの花嫁 悪役令嬢と、悪魔のプリンス⑧〜

マリアンヌ達は、何気に16歳になってます。なんやかんや端折って二年ほど経ってます(*´∀`*)


またマリアンヌ視点に戻ります!


 私は、ラース様の言い分に、白けきっていた。


 私がアリアを虐めていたと決めつけ、誇りはどこに行っただの、鬼畜と罵りながらも、昔の様に優しいマリアンヌに戻れだの言ってきて、まるで話が噛み合わない。

 そのくせ結婚破棄を提案してみると、それとこれとは別だと言って怒ってくる。


 面倒くさいわ。

 もう、さっさとアリアのとこに行ってくれればいいのに。アリアの事が好きな割に、お見舞いにも行ってないでしょ。ホントに何考えてるのかしら、この方は。


 私が内心で、溜息をついたその時、突然生ぬるい風が吹いた。


「?」


 私が疑問に思った次の瞬間、突然校庭を照らしていた20もの篝火が、揺らめきもせず全て消えた。


「な、なんだ!?」


 闇の中で何も見えないけど、ラース様の声が聞こえた。

 ざわつく野次馬達の気配もする。

 何も見えない。


 その時、闇の中から、不思議な白銀に輝く光が降りてきた。

 私はその光を見て、思わず呟いた。


「……雪?」


 そのひとひらの後から、白銀に輝く、不思議な雪はどんどん舞い降りてきた。

 因みに今は秋。多少の肌寒さは感じても、間違っても雪の降る季節ではない。

 だけど私はそんなことを気にせず、その美しい降雪の景色に、ただ見とれた。



 ーーーなんて綺麗な。


 ーーー何だか、綺麗すぎて切なくなる。




「迎えに来たぞ」




「!?」


 突然、闇の中から声が響いた。

 そして、その直後、光を放つ積雪の上に、天使が舞い降りた。


 見上げる程に背の高い、濃紺の髪の男。スリムなパンツにハイネックのインナー、そして膝までのロングベスト。

 とてもシンプルな出で立ちで、まるでどこかの庶民のような格好。だけどそれは妙に様になっている。

 色白で整った顔の左目には、黒い眼帯がはめられ、背にはーーー白骨化した翼が生えていた。


 ーーー違う。 これは天使なんかじゃない。


 ポケットに両手を突っ込んだまま、ニヤリと笑いながら私を真っ直ぐ見つめるこの化物に、私は、後ずさった。


「マリアンヌ!!」


 皆が慄き、状況が飲み込めず、誰一人動けずにいるその中で、私の前に飛び出してきた1つの影があった。


「……レイル」


 私はその影の名を呼んだ。

 レイルはこちらを振り向かず、一分の隙も無い構えで、真っ直ぐに剣を化物に向けた。


「言っとくが、そんなもんオレには効かねえぞ?」


「分かっている。ーーー彼女には手を出すな」


 ……ちょっと、レイル。何やってるのよ?

 何だかカッコイイじゃない。そんなのレイルじゃないわよ!?


 私を背にかばいながら、レイルはキッと化物を睨む。

 よく見れば、その肩は震えていた。


「……これ以上、僕の戯言にマリアンヌは巻き込ませない! 魔物よ、お前の狙いは分かっている。何故、彼女に手を出そうとする?」


「そりゃあお前。ヤローと美人がいたら、どっちに声かける?」


「美人に決まってるだろう!」


 同意してんじゃないわよ。


 化物は、うんうんと頷くと、向けられた剣を指で弾いた。


「っ!?」


 大した力も加わってなさそうなのに、レイルの剣は空高く跳ね上がり、1拍後、寸分狂わず化物の手の中に落ちてきた。

 何だか、剣に裏切られた気分だわ。

 剣をなくしたレイルは、尚も拳を構え、化物を睨む。


 その時、化物の背後にいたラース様が我に返り、化物に向けて魔法を放った。

 ラース様は学園でも随一の魔法の使い手。学生故、まだ授業以外での生活魔法以外の使用は認められていないけど、世に出れば、既にトップクラスで通じるほどの力量を持っていた。

 放たれたのは氷の矢。数多の凶器が、寸分の狂いなく、化物の急所めがけ放たれた。




 ーーーパシャン




「……馬鹿な?」


 氷の矢は、化物に到達する前に溶けて水となった。


「うひゃー、ツメテっ!」


 背後から水をかけられた状態の化物が、呑気な悲鳴を上げ、ラース様の方を振り向いた。



 ーーーラース様、逃げてっ!

 


 私は声にならない悲鳴を上げた。


 化物はラース様を見て、ニヤリと笑って言った。


「若いのに、なかなか筋がいいじゃねぇか。まあ、全然まだまだで、駄目なんだけどな」


 どっちよ!?


「まあ頑張って、そのまま励め よ、っと!」


 化物がそう言い、何かを投げる仕草をした瞬間、ラース様が吹っ飛んだ。


「っがっ!!」


 そのままラース様は五メートルほど宙を飛び、後ろの人垣に突っ込んで行った。

 化物は何でも無いように、またこちらを向く。


「結構飛んだな。誰だったんだろうな?」


「……っ王子よ」


「マジかよ!?」


 化物は、叫びながら人垣を振り向いた。

 そして眉間を抑えながらブツブツと呟く。


「……ま、まあしょうが無い。人間の弱さはちゃんと理解してるし、加減はしたし……。なんて言うか、アレだ。えーと、ホラあれ、王たる者、痛みを知らねばならぬ……、ってやつだよ。そうそれだよ!」


 ……人間が弱い? 加減をした? 何なのよ!? この化物は!!


 私が唖然としていると、立ち直った化物が、こちらに両手を広げ言った。




「オレの名はルシファー。さあ、それじゃあ行こうか。オレの花嫁達よ」




 何言ってるのよこいつ! 誰が、花嫁達ですって!?


 花嫁達っ……達……。





 ーーー……達?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ