番外編 〜とあるゴブリンの一生 前編〜
すみません。
R15です。
前の話で、なんだか一区切りみたいな形に終わったので、オマケのつもりでいたら、ゴブリンが下品でした。
しかも、ダレトク?になってます。
なんか嫌な予感のする方は、読み飛ばしてください。
わしはゴブリン。名はまだ無い。
と言うか、ゴブリンは一生名前を持たない。
同じ季節が巡る頃には死んでしまうわしらには、名前をつけて、のんびり生きている余裕なぞ無いのだ。
わしは肌寒さの残る“春”という季節に産まれた。
母は優しく、わしは5人の兄弟達と共にすくすくと育った。
母はわし等に苦い草と、たまに腐肉を与えてくれた。
苦い草は【ハーティの草】と言うらしい。これを食っていれば飢えて死ぬことは無いらしいが、腐肉がうますぎた。
わし等は『腐肉をもっと食いたい』といつも母にせがみ、よく母を困らせていた。
そしてひと月が経った頃、母は突然わし等に冷たく当たるようになった。
次の種を残す為に、新たな相手を求め始めたからだ。
とはいえ、わしらとてもう母と何ら変わらぬ力と能力を持っていた。
わしら兄弟も自ずと、互いに別れすら告げず散っていった。
わし等に与えられた生きる目的は“子孫を残す事”、これに尽きる。
その為なら、わしらはなんだってした。
何かを作ったりする時間が惜しいから、他から奪う。
身だしなみや清潔さ? 知らんな。
わし等ゴブリンには、オスメスというものが無い。
強いて言うならニ匹のゴブリンがいると、強い者が“オス”弱いものが“メス”と言ったところだ。
三匹以上いると、必然的に乱交になる。ぐふふ。
どうも、わし等は人と交配しても子が作れるようだ。
正直ゴブリン同士で精子をかけた……否、生死を賭けた雌雄対決を交配の度にするよりは、罠にかけ、取り押さえた人間と交配した方が楽だった。
だが人には子が作れる奴と、作れない奴がいる。
股間に、小さな肉塊がぶら下がってる奴。あれは駄目だ。
わしもこの間、偶然罠にかかって捕まえたのがそれだったから試しにやってみたが結局、噂通り種は出来なかった。
わしはとうとう諦めて、捕まえた人間を食った。
貴重なタンパク源だ。放す道理はない。
そしてわしは、腐肉のこびりついた骨を見て思うのだった。
―――あぁ、時間を無駄にした。
それからもわしは、また一人で旅を続けた。
森を抜け、山を超え、谷を降り、そしてまた登り。
途中で出逢った人共を罠にはめて食ったり、交配したりした。
また逆に油断していた時に見つかり、殺されそうになったこともある。
基本人間共はわし達より強いのだ。
ちゃんと準備しておかないと、こうやって命を落とす事もわしらには珍しい事ではなかった。
そしてある時わしは、わしより強いゴブリンに出会い、負けた。
そして掘られた。
基本ゴブリンは、毎日が発情期。
わしももれなく妊娠した。
わしは決闘して傷ついた身体と、新たな命をその腹に抱え、交配したゴブリンの前から去ろうとした。
生死を掛け戦い、精子をかけられたゴブリンは、その子どもたちが大人になるまで育てる義務がある。
そして、生を勝ち取る事ができたゴブリンは、すぐに別の新たな相手を探しにゆくのか世の常なのだった。
……ところが、そのゴブリンはこう言った。
「ワシの城に案内しよう」
城? 意味が分からなかった。
だがわしは所詮敗北した身、断る理由も力もない。
わしは大人しくそのゴブリンについていった。
案内された先で、わしは言葉を失った。
「ようこそ、ここがワシの城。魔王城だ」
巨大な岩山を削り作られたその巨大な城に、何千というゴブリンが犇めき合っていたのだ。
しかも驚いた事に、特に身体の強そうなゴブリンは鎧を纏っていて、他にも弓を巧みに操る者などもいる。
更にはなんと【マナ】を操り、魔法を使うゴブリンまでいた。
「こ、ここは?」
わしは、唖然としながら、蚊の鳴くような声を上げた。
「……ワシらを統べる王が、【魔王ラムガル様】だという事をお前は知っているか?」
「あ、あぁ。母から聞いた」
わしがそう頷けば、そのゴブリンはふっと笑い言った。
「そうか、良い母だ。……実の所【魔王ラムガル様】はここ千年程、その御姿を隠されている。言い伝えによれば神々の下に仕わされていると言う事だが、それはまぁ良い。問題は【魔王ラムガル様】の御姿が見えないのをいい事に、その存在を忘れる不届き者がいる事だ」
……確かに見た事もない王を崇めるより今この時、子孫を残すことに全力を賭ける方が実利はある。
だがそのゴブリンは、憎々しげに唇を噛みしめながら言った
「ワシはそれが許せなかった。だからワシは魔王様の代理として、その権威を世に知らしめる為、こうして魔王城を築き同士を増やしているのだ」
そう言うこのゴブリンとて、寿命はわしと同じ。
たった数カ月生きただけで、これ程の組織を作り上げるとは凄まじいカリスマ性だ。
「ワシと共に立ち上がれ。そして魔王様の威光を、世界に轟かせるのだ!」
わしは……気付けば目から涙をこぼしていた。
そしてこのゴブリンの子がわしの腹にいる事が、どうしようもなく誇らしくなった。
「わしは力の限り、魔王様(代理)に尽くしましょう」
そう言って、わしはそのゴブリンの前に跪いたのだった。
続きます。




