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森林にて2

先ほどの獣が助けを求めてる。そんな気がした。

ユウは我ながら変なことを考えていると思ったが、しかし気付けば駆けだしていた。

不思議と場所がわかる。迷うことなく走り抜けていく。


「なんだよこれっ……」


地下ずくに連れて変化は目に見えてわかるようになってきた。おびただしい爪痕。倒れ伏す巨木。そしてすさまじい嫌悪感。この先にそれがいる。

恐怖からか足が時折止まりそうになる。しかしそれを許さないかのように心臓が跳ねる。そのたびになにかせかされるように足を進める。


森を抜ける。正確には木々が倒れ森がなくなっているのだが。


「っ!!」


今度こそ足を止める。そこには二つの獣がいた。


一つは先ほど見た金色の獣。


もう一つは蛇、だろうか。


黒い蛇。大蛇のようなそれが金色の獣にまとわりついたいる。

周囲には仲間だろうか。それより小さい、しかしロープほどはある蛇が何十匹もいる。


こちらに気付く様子はない。


どうするべき、だろうか。ここまで走ってきてなんだが、この状況で自分に何ができるだろう。

考えるまでもない。できることなど何もない。ここでするべき最善は気付かれないうちに立ち去り、一刻も早く森を抜けること。この森の脅威があの蛇ならば、金色の獣が襲われてる今はチャンスだ。


金色の獣が……襲われてる?


何故だろうか。違和感を覚えた。

金色の獣は先ほどあったときには何かに襲われる様子も逃げている様子もなかった。その後立ち去った時もおかしな様子もなかった。森に立ち入ったからだろうか。しかし数キロを一瞬で駆けるあの獣がなぜ捕まったのか。そもそもなぜ森に―――――


「あっ」


そこでユウは気付く。気付いてしまう。

つまりは―――――


「俺のためか……?」


あの金色の獣は先ほども自分を助けていた。理由はわからないが、森に入ったのもそのためならば。


「あの状況は俺のせい……?」


突拍子もない考えだがなぜかそれであってるような気がした。


「あ……」


金色の獣と目が合う。その目は力なくこちらを見据える。

助けなど請わない。自らが気高い獣だからか。目の前の小さな存在に期待などないからか。


しかしユウには感じ取れてしまっている。この場に渦巻く恐怖、怯え。もともとそれを追ってきたのだ。


だからそれが金色の獣が発すものだとユウにはわかっていた。



どうする。どうする。どうする。


どうする。何故迷う。どうする。決まっている。


まるで御膳立て。出来すぎだ。動機がある。理由がある。

ここで立ち向かわなくて、なにが――――


「うるせえっ」


叫ぶ。


立ち向かわない理由など山ほどある。力がない。手段がない。


「俺がやらなきゃならない理由なんて――」


言い終わるまえに言葉は止まる。


蛇ににらまれた蛙。


まさにその言葉通りだった。


動けない。ピクリとも。


目の前の巨体が口を開ける。


かっこ悪い。怯えて言い訳しながら、抵抗もできずに死ぬ。









―――――それでいいのか?


何故戦わない。なぜ立ち向かわない。


「力が――――」






力なら。




貰っただろう?



「なにが―――――――――」




瞬間世界は極光につつまれた

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