よくある導入
痛い。
目が覚めて最初に思ったことはそれだった。
全身が痛い。体中すべてが均等に叩きのめされたかのような痛み。
「何が……」
必死に記憶を呼び覚ます。
―――名前はわかるか。佐倉勇。それが名前だ。
―――生まれは日本。高校生。男子。両親あり。兄弟はいない。
それから―――――
「っ……!」
ずきずきと頭が痛む。自分が何者かは分かる。だが肝心の記憶が出てこない。
「何が、起きたんだ」
とにかく立ち上がらなければ。そうして起き上がろうとして違和感に気付く。倒れている場所がアスファルトの上ではない。やわらかい土。鮮やかなに咲き誇る色とりどりの花。ふと風が通り抜ける。
「花、畑……?」
慌てて自分―――佐倉勇はあたりを見渡す。自分が立っている場所には、色とりどりの花が咲いている。よく見ればすこし小高い丘のようだ。同じような緩やかな丘陵が続いてる。遠くには森、だろうか。一面の緑。人工物らしきものが全く見当たらない。
自分の知識の中にある情報とかみ合わない。どれだけ考えても今見ている光景とは繋がらない。誰かが運んだにしても何故こんなところに、一人放置されているのか。
「……いや、違うだろ」
下らない思考を続ける必要はない。自分の知る場所とは全く別の場所であるのは間違いない。ここがどこで、誰が、何のために。何一つとして分からなくても、全く異質な場所に放り出されたことだけは、はっきりと分かっていた。
つまりは――――
「異世界、転生ってわけだ」