お姫様のおかげで舞踏会に行くわけだが、予想通りに酷い舞踏会だった。後編
前回のあらすじ、
舞踏会に参加したら、クソムカつく小娘が絡んできたからイジめてやった。
「何をやっているのだ?貴様等」
ここで真のラスボスである女王様の登場である。
「む、ペテルラルクにアンにそれから……異世界人、また貴様か……」
ルーティトリルディとアンを見た後で俺を大好きなスープに入っていた大嫌いな食材を見るような不快感極まった顔で見てきた。が、そんないつもの対応は慣れているので陽気に挨拶してみる。
「チャオ~、セニョリータ」
「ミコト、『チャオ』はイタリア語で『セニョリータ』はスペイン語だよ?」
忍!揚げ足取りすんな!!
意味分からずに使ってんだから!
「へ、陛下!この見るからに下品な女が男爵と言うのは本当なのですか?」
俺が男爵と言うことをまだ信じてないらしいルーティトリルディが質問した。
「ん?あぁそうだな。この女は男爵だ。私は反対したのだがな」
最後の部分を強調する所を見ると『ホント、こいつを男爵にした評議会の連中の頭はおかしいよな』と言いたいようだ。
「伯母上、ミコト様に記章を渡していないそうなのですが本当ですか?」
こちらはアン。どうやら記章を渡してないのはよほどあり得ない事らしい。
自動車運転してるのに免許証持ってないくらいか?
いや、今の時代、無免許運転してるクズなんて多いだろう。
たまに高校生がシートベルトせずに運転して乗員全員が死んだ悲惨な事故が報道されてるし。シートベルトをつけたがらない奴、死んでも知らないぞ?
「いや、そんなことはないぞ?」
息を吐くように嘘吐くんじゃねぇよ!
「ちっ!誰だよ?こいつに記章のことを教えたやつ」
アンタの姪だよ!!
「冗談はこの辺りにして、その件なら後日渡そうと思っていたのだ」
「その程度の言い訳で俺が納得するとでも?」
「悪いがこれは事実だ。記章の作成にはそれなりに時間がかかる。通常ならば爵位進呈の話が出てから進呈まではそれなりの日数があるから問題ないのだが、貴様は全てにおいて規格外だからな」
なるほど、ならば仕方ない。
さすがの俺でも大人の事情くらいは理解できる。
「安心しろ、あと数日で貴様に渡すことが出来るから」
一応、安心しておこう。
「それで異世界人、今日は何をしている?アンだけでなくペテルラルクにも手を出すつもりか?」
「手を出すとは酷い言い方だ、そっちのクソガキがちょっと五月蝿い上に俺を下女と呼んで部下に俺の胸倉を掴ませ威嚇してきたからちょっとお仕置きしてやっただけですよ」
ありのままの事実を述べる。
ゆえにこれは言いわけではない、状況報告である。
「ペテルラルカ、これにはかかわるな」
「し、しかし陛下!陛下はアン・ウィルバインに甘すぎます!」
「アンのことではない、この異世界人のことだ。ペテルラルカ、お前は他人を過小評価する癖がある。この異世界人はお前が篭絡できるような小者ではない」
どうやら女王の中では俺はかなりの危険人物扱いされているようだ。ダナーのおかげかな?ダナーが居なかったら俺は今頃墓の中に埋められてただろうから。
「良く分かっているじゃないか、猿」
満面の笑顔でご満悦のようであるダナーさん。
「調子に乗るな、お前は俺の出番を取る気か?」
ダナーの女王を目にすると口調が悪くなる仕様(バグ)は直らないようである。
「申し訳ありません、マスター。少々控えております」
お前は素直でよろしい。
「陛下がこの女を過大評価しているだけでは?」
「お前こそ、その自分に対する過大評価はどうにかした方が良い。だから私は素直にお前を評価できない」
このクソババァにここまで言わせるってことはルーティトリルディはかなり性格悪いんだろうなぁ。
「ところで異世界人、お前はなんでここに居る?」
「アンに呼ばれたから」
即答した俺の言葉を聞いて女王は頭を抱える。
「……アン、なぜお前はそう……」
「え?何か問題が?」
アンはなぜここまで女王が嫌な顔をしているかが理解できていないらしい。
彼女からしてみれば俺と伯母に仲良くしてもらいたいのだろう、しかしそれは無理な注文である。
「まぁ良い。異世界人、ペテルラルカにまで何かしてみろ。今度は戦争になるぞ?」
「おいおい、アンタこそ俺を過小評価してるんじゃないか?」
「やはり、この10ヶ月の間、大人しくしていたのは何かを企てていたからか」
何やら深読みしているみたいだが、それはそれでありがたい。
「ご想像にお任せします」
「やはり私は貴様が嫌いだ」
「えぇ、俺もです」
にっこりと最大限の作り笑いをしてみせるが、女王は気持ち悪い虫を見る女子高生のような目をして去って行った。そんなに!?
「さて、気を取り直して話の続きをしようじゃないか?サノバビッチ」
俺が凶悪な笑顔でルーティトリルディに話かける。
「ミコト、『サノバビッチ』ってのは『サンオブザビッチ』のことで、つまり『ビッチの息子』だよ?その辺分かってる?後、スラング的に使うなら『畜生!』とかのニュアンスで使われてるけど」
だから揚げ足取るなって!!
「だ、男爵様と会話することなんてありません……」
どうやら大公様の嫡子様でも男爵には強気になれないらしい。
だが、ここで謝られたとしても俺は虐めるのをやめるつもりはない、こいつが泣くまでな。
「おいおい、おしゃべりは好きだろ?さっきまでアンとはあんなに『おしゃべり』してたじゃないか?俺ともそれなりに『おしゃべり』しようぜ?」
『おしゃべり』と言うのはつまり一方的な暴言のことである。
「いえ、恐れ多い……」
「遠慮するなって。なぁ!そこの側近もどうだ?」
気絶したジェイソンの介抱をしていた取り巻き2人にも俺は標的にする。
「いえ、我々も……」
「俺が男爵だからって気を使う必要なんてないぞ?そうだなぁ……お前らとお前らの主であるペテルラルク・ヴェナ・ルーティトリルディ氏との関係とかどうだ?話しやすいだろ?」
「いえ、男爵様が聞いて楽しい話ではありませんから……」
こいつらは『いえ』しか言えないのか?
それとも言えないくらい精神状態がヤバいのか?
ハンサムを虐めるのも良いよな。
ハンサムとかイケメンとかは皆酷い目に合えば良いんだ!!
恋人居る奴は子供作って少子化対策に貢献しろ!!
それ以外は死ね!そんな奴が居るから少子化問題は解決しないんだ!
「つれないな。良いじゃないか?じゃあこちらから質問しよう、お前らは穴兄弟なのか?」
「いえ、決してそのようなことは……」
ん?なんか当てずっぽうだったけどマジっぽくない?
この女の方がよっぽど穢らわしくね?
クソガキと言うよりもクソビッチだな、股ゆるクソビッチ。
「ミコト、穴兄弟って言って和を乱そうとしてるかもだけど、この人たちが4Pとかそういう複数プレイを既にしてたらどうするの?」
「あぁ、その可能性もあったな。で?諸君、どうなんだ?すでにやってるのか?4Pとかそういう複数プレイ。一人の女を取り合うのってどういう心境なのかこの男爵に教えてくれよ」
「いえ……あの……」
最初の強気な顔は消えていてハンサムな取り巻きはしどろもどろとしている。
ルーティトリルディに至ってはもう泣いていた。
どうやら4Pかそれに類するモノを体験済みのようである。
俺はどっちかと言うと男が多いのよりも女が多い方が良いな、やるとしたら。
と言うよりもこの体だからレズプレイにしか興味ない。
男?論外だな。余程、中性的でない限り生理的に無理。
可愛い男の娘は居ませんか?
残念、それは二次元の中だけであり、絵空事なのである。
女装癖の変態と男の娘は別物です。
(※個人の見解です)
気分も晴れたし、この爛れた関係の奴らへの虐めもそろそろ終わりで良いかな?
アンにとってもこれくらいで十分だろうさ。
「おい、股ゆるクソビッチ。お前が金輪際、自分を棚に上げて誰かを罵らないと誓うなら今回は勘弁してやる。しかし次、同じようなことをしたらどうなるか分かってるか?」
「な、何をするおつもりで?」
失禁してもおかしくないほどにガクガクと震えている。
まったく滑稽な小娘だ。
力もないくせにピーチクパーチクと威張るから痛い目を見るのだ。
「決まってる、お前の心をぐちゃぐちゃに蹂躙してやんよ!」
▽
あの酷い酷い舞踏会と言う名の立食パーティから数日が経った。
俺が倒さなければならないであろう敵など居ないと言うことが分かっただけであったがそれはそれで良い収穫である。
(結果オーライ?)
舞踏会に行くことを勧めなかったミシェルが今回の成果を聞いてくる。
「そうだな、この10ヶ月のんびりだらだらしてたのも完全に無駄ではなかったみたいだし」
(今回ばかりは女王様の思慮の深さがありがたいね。で?どうするの?女王様を倒すの?)
「いや、後2,3人ほど公爵や大公を倒したい。そうして俺の危険性を女王に思い知らせて憤慨してる様を横から覗き見して高笑いしたい」
(相変わらず、ミコト君は性格が悪い。けどそこが良い♪)
褒めてくれてありがとう。
さて、ルーティトリルディ大公がどんな人間かは知らないが、大公様を倒すことを当面の目標にしますかな。