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平和ボケというか休暇ボケというかそんな感じのボケのせいで俺は大切なものを見失っていたようだ

 前回のあらすじ、

 忍が野生の波動に目覚める。

 気絶した忍を部屋で寝かせ、パティに介抱を命じ、のんびりするためにリビングに戻る。

「はぁ~、愉快愉快。久しぶりに面白い展開だった」

 木の枝をビーフジャーキィと思い込んで噛み、その後に電磁トラップに引っかかったバカのことを思い浮かべて思い出し笑いをする。


(ずいぶんと楽しそうだね。何かあったの?)

 ミシェルが質問してくる。これで説明すると俺自身がなにやらクズに感じるのでオブラートを5枚くらい包んだ言い方をしよう。

「まぁ、最近は暇で暇でな。忍と戯れたわけさ」

(ふぅ~ん……一応訊いておきたいんだけど、ミコト君は女王様を倒すつもりあるんだよね?)

 はぃ?

(いやいや、言ったよね?女王様を一緒にぶっ倒そうって)

 ………………やっべ!!!!

 完全に忘れてた!!


(……まさかとは思うけど、忘れてたわけじゃないよね?)

「も、もちろんさ、ハニー。俺が忘れるわけなんかないじゃないか……HAHAHA!」

 ミシェルが『あ、こいつ、絶対忘れてやがる……』って顔でこっちを見ている。

(薄々気付いてはいたんだけどね、てっきり準備期間的な下ごしらえだとばかり思ってた)

「そ、その通りさ、ベイビー。ミーがフォアゴットするわけないじゃないか……」

(異世界語で誤魔化しても真意はバレバレだからね?)

「すんません」

 もう潔く謝ることにしよう。

(はぁ……)

 思いっきり溜息を吐かれた。忍やパティならまだしもミシェルに溜息を吐かれると心がえぐられる。


「そうは言っても果報は寝て待てって言うじゃないか?」

 悪あがきに近い言い訳をしてみる。

 こういうのは俺ではなく忍のやることだな。

(まぁ、確かにそうかもだけど、今まで行動しなかったのはなんで?)

「それはだな……先走ってしまうと女王様達に怪しまれるということは便利グッズの販売でよく分かってるからさ。同じ過ちは犯さない、それが賢い人間ってものじゃないか?」

(それっぽいことを言ってるけど……。で?じゃあどうするの?)

 ……どうしようか?

(考えてないんだ……)


「まぁ、功を奏するには時間が必要なんだ。そろそろ行動開始しなければと危惧してるけど」

(で?具体的に?)

「……こんな言葉を知っている?『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』これは騎馬に乗った大将を倒すにはまず騎馬から攻略する必要があるってこと」

(つまり?)

「女王の前に大公とかそこらの貴族たちをぶっ倒すってわけだ。俺も男爵の地位を剥奪されちゃマズいからな」

(今までの堕落っぷりを正当化するためにこじつけてない?)

「過去のことは振り返っても現実は変わらない、反省と後悔は違うんだ」

(『反省はしてるから許せ』って素直に言ったら?)

「反省しているので許してください、お願いします!!」

(潔すぎて逆に引くよ……今までの全てが嘘っぽい)


 引かれてしまったが、全てが嘘というわけではない。

 男爵の地位を手にいれて早々に行動すれば怪しまれるというのは本音である。

 だがそのまま大人しくしているうちに本来の計画を忘れていただけである。

 嘘じゃないよ、ホントだよ?


「というわけで身近な大公をカオルーン公爵のようにぶちのめしたいと思うわけだが……」

「ごきげんよう、ミコト様。……あれ?今日は珍しくお1人なのですね?」

 ミシェルへの弁明中に来客のアンが勝手に入ってきた。

 こいつが合鍵無しでどうやって入ってきているかは理解できないが日常茶飯事なので気にすることを止めた。

「1人じゃないぞ。ここには俺のほかにミシェルが居る」

「ミシェル……あぁはいはい、異世界人にしか見えないという設定の幽霊少女でしたっけ?わたくし、目の前で起きたことは信じますが空想や架空は信じないのです」

 どうやらミシェルの存在を信じていないらしい。

 仕方ない、そう思ってボールを手に持つ。

「ミシェル、見せてやれ」

(はいは~い)

 ミシェルが俺の掌の上からボールを摘み上げる。

「ホガッ!?」

 目を見開いて宙に浮いたボールを見ているようだ。

 俺も最初にミシェルに出会ったときはこんな顔をしていたのだろうか?


「て、手品ですよね?異世界の技術は本当に驚かされます……」

「いや、だから手品じゃないって」

「またまた~ご冗談を」

 ……もう良いか、別に。


「で?今日はどうした?遊びに来たのか」

「いえ、今日は別件です。舞踏会の招待に」

「招待?随分とパシリみたいなことをさせられるんだな、お姫様が」

「そりゃ……ま、まぁ色々あるのですよ……伯母上が招待したがってないと言うのも理由の1つですけど」

 それが一番の理由じゃねぇの?



(ちょっと待った!!)

「どうした?」

(その話飲むつもりじゃないよね?)

「話の流れからすると飲むつもりだったよ?女王が嫌がることをするつもりだけど」

(それはダメだよ!)

「なんで?」

(理由を話すから、そこのバカなお姫様には待ってもらって)

「分かった。アン、悪いけど……アン?」

「……本当にそこに誰かが居るのですか?」

「だからそう言ってんじゃねぇか」


(ミコト君、これ以上は彼女に要らない情報は与えないほうが?)

「なぜそこまで危険視する?」

(それを本人の目の前で話すわけにはいかないでしょ?)

 そりゃそうだな。

「アン、悪いがミシェルと2人っきりにしてくれるか?パティは忍の介抱をしているから忍の部屋にとりあえず行ってくれ」

「分かりましたわ」

 おとなしく部屋を出ていった。


「で?どうした?」

(カオルーン公爵との件はわたしもよく理解してるし、彼女のことはそれなりに理解してる。けど舞踏会はマズイよ。早すぎ、今の時点じゃ)

「そもそも舞踏会ってなんだよ?貴族さんたちが適当に踊るんじゃないの?」

(表向きはね、でも実際は貴族と貴族が牽制しあう酷くギスギスした場だよ。今のミコト君じゃ……)

「なんだ、その程度。あの女王に比べたら痛くもかゆくもない」

 ミシェルの次の言葉を待たずに全体を否定した。

(え?)

「あの女王様にされたことに比べたら貴族のセクハラなんて微塵も興味ないさ」

 エロ本朗読とかね?それ以上のセクハラって何?

 心の準備も何もなかったんだからさ……。


『しゅ、しゅごいよぉぉ♪こんなに気持ち良いの初めてだよぉ♪も、もっと突いて♥もっと奥にどぴゅどぴゅぅっておち○ぽミルク出して♥……あっ♥そう♪そうだよ、ふぁぁ♥もっと、もっともぉっと……!あっ……!ん……んぅ~♪ら、らめぇー!頭おかしくなっちゃうぅ~~♥』


 思い出しただけで死にたくなる。

 これより辛いセクハラって何?

 これを休みだと思ってた日曜の朝にやらされた俺の気持ち分かる奴居んの?

 居るならちょっと連れて来い。朝まで語るから。


 最初にこんな酷いセクハラにあったからそれ以降のほとんどのセクハラにも耐えられました。逆にあれがなかったら精神崩壊してたかも……。


(い、いやでもさ。侮りすぎなんじゃ?)

「さっき俺をバカにしてた人が言うセリフじゃないけど?」

(……勝つ気なの?)

「もちろんさ、この異世界人を舐めないで貰いたいね」

(どうやって?)

「公爵に比べたら簡単簡単。あの時と違ってこっちには手が複数あるんだから」

 俺は男爵になったし、ダナーという最強キャラまで居る。

 おまけに俺にはカオルーン公爵を倒したという実績まである。

 これ以上に良い手が存在するだろうか?


 というわけで退屈な日々もここらでお終いお終い。

 ここから愉快で愉快な悪夢が始まる。


 カッカッカ、今度こそぎゃふんと言わせてやんよ!

 女王だけじゃなく、他の貴族もまとめてな!!

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