幻燈(参)
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猫達は集まる。禁忌の森を見据えている。
かの者に声が届いたらしい。
人間は平穏を破る。だがその平穏を新たに作れるのも人間でしかない。
咆吼だ、あれは。
憎しみの感情、無念、猫達とは相容れないもの。だが、調和を乱すものへの対処は怠らない。必要なのだ。鈴をかの猫はあの少年に託した。それはどうやら間違いでは無かったらしい。恐れに溺れることなく、また過信へ泥酔する所も無く、あの少年は自分の感覚を信じて、「訴え」に耳を傾けている。
感覚を研ぎ澄ますが良い。猫達は頷く。
かの少年は大人となって、かの猫の元へと帰る。鈴も託された因果だ。それはどうしようも無い。そして帰った場所で役目を終える。だが、と猫達は思考を止める。
かの少年は今までとは違う。孤独では無い。一人で立ち向かうという、今までの「鈴の持ち主」達なりの自己防衛は持ちえ無い。人間の言葉で言えば信頼。はたまた依存。どちらにしても「猫」としては有り得ない心理だ。稀な子よ、一匹が呟く。
猫は群れを為す。が群れは依存の為ではなく、個が集まる故の群集だ。人の群集に埋没してしまう個とは異なる。だが彼は、かの者は埋没ではなく、連結する為に群れを為す。まさに猫ではないか、と思う。
頷く。彼らなら抑えられよう。死者達の闊歩を。怒りを。平穏と均衡はバランスにおいて成り立つ。それを荒らしたのが人なのであれば、償うのは人だ。だが多くの「ヒト」はその認識が足りない。
多くの血が流れた災厄の場所。紅葉が血を隠す。
ひらひらと舞ながら。猫達は目をむける。風が冷たさを感じさせる。温暖化、随分と生暖かく気持ち悪い風よ。まさに、嘆きに相応しい。
にゃー。猫達は泣いた。鳴くより泣く。むしろ無く。虚無はそこに有り続ける。哀れ也。
次回、幻燈完結です。




