表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

幻燈(壱)

宮崎君×陽大の「君の隣で」シリーズです。少し長めの短編の為、分割で掲載します。




 紅葉が散る。


 舞う。その舞を見上げる。風が冷たい。戦装束、日本刀を腰にさげ、ただ最後の瞬間を待つ。終わりは覚悟しいてた。足下に滴り落ちる血が紅葉をさらに赤く染める。


 刀に手を置く。


 唸る風。木が軋む。自然は恐怖している。


 呼吸は乱れる。動悸は速まる一方で心音は低下している。脈が弱くなっているのを実感していた。それでも足軽は前へ前へと進んだ。


 目的の場所はすぐそこにあった。


 彼の主君は多くの同志とともに倒れている。


 紅葉が散る。舞う。覆うように。埋め尽くすように。彼は膝を突く。慟哭。主君にすがりつく。小さな国は落ちた。歴史に名も残らない国だ。


 男は吠えるように泣く。


 誰一人、その声に答えるものはいない。


 俗に戦国時代────安土桃山時代末期、国と称するにも国力の無さに、後の徳川へ吸収された小国の主はあっさりと朽ちた。小国だが精鋭の武士団「蓮華」も奇襲と人海戦術に為す術も無い。首の無い主を残し、紅葉を枯れ葉を銀杏を深紅に染め上げる。時代は変わっている。もはや武士道云々の正当法では為す術も無い。


 言葉にならない声、咆吼をあげる。


 そして男は倒れる。


 風が凪ぐ。紅葉が哀れな足軽の死に装束となる。供養し、墓に眠る事も許されなかった男達がいた。歴史はそれを語ることがなかった。地図に記される国でもなかったが、大きな権力を迎合する事なく戦った猛者達の国だった。


 国の名を「三木」と呼ぶ。孤高にして誇り高い主君を立てた「蓮華」の一人だった男は名を刻むことなく朽ちた。


 秋の終わりにして 冬の始まりにはまだ早い、静かな午後。静寂は死を包む。死臭すら感じさせることなく。何事もなかったかのように。せめて死者への眠りを献辞するかのように。紅葉は舞い散る。


 静寂に飲み込まれた男達が、今も-------静かに眠り続けてる。

 



陽大は次回で出ます。続きます(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ