表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

ミッドナイトエスケープ

------「君はなんで此処にいるの?」


------「知らない。でも・・・きっと王子様が来てくれるから怖くないの!!」


------「そう。じゃあまた明日」


------「うん、おやすみ。シアン」


------「おやすみ。ルージュ」



 僕の住む城から繋がる塔の一番上


そこには、紅色(ルージュ)のお姫様が一人捕らえられていた


 6歳の僕には何もわからないし


あまり外へ出たことが無いから


外の世界がどのように動いているか


近くに流れる川の水はどこに繋がっているか


僕は何も知らない。


 幾夜も彼女の元へ行き


少ない会話をした


 彼女はとても頭が良いから、僕の覚えたことを教えるとすぐ理解してしまう


だから僕は彼女に負けないようにたくさん勉強して


多くの事を彼女に教えた。


きっと君はわからなかっただろうけど


覚えたてのラテン語の歌を小さな声で歌ってみせた事があったよね


あの歌、愛する人に贈る歌なんだから


 そんな事を繰り返すうちに僕は16歳になっていた


彼女も塔の上でゆっくりと成長していった


 ある時


「シアン。私はなぜ此処にいるの?」


「ずっと前に僕が君に質問したよね?」


「その時私はなんて答えた?」


「知らないって」


「他には?」


「覚えてない」



「おやすみ。ルージュ」


そう言って僕は駆け出す


覚えていないはずないじゃないか


君がそのことを思い出したら


きっと僕の事なんて眼の中に入らないだろう?


 鉄格子が隔てる僕と君


近づきたくても冷たい鉄が許さない


暑い夏の夜も


凍える冬の夜も


鉄はいつでも冷たく


互いを抱擁することも許さない


 僕の町で多くの怪盗事件が起きていた

痕跡を全く残さない彼の事を人々は


“mysterious thief・sumac(知的な怪盗)”


と呼んだ


盗るものは金や宝物ではなく


ただの本


古いものから新しいものまで


町の人々はこの事からもあの呼び名で呼んでいるのだ


犯行時間は明け方


家の主人が寝ている隣の本を盗っていった事もあるという


 「ねえシアン?」


「なんだい?」


「なんでこの頃悲しい顔をして此処へ来るの?」


「僕の町に怪盗が現れてね。僕の本が盗まれるか心配で・・・」


「本を盗るの?素敵!!!とても本が好きなのね」


「他人事だと思って!!僕の心配もしてくれよ・・・

 そんな事言ってると君の事を攫いに来るかもよ?」


「こんな高い塔に来れるのはあなただけよ?

 私は此処で死ぬまで居るんだから・・・おやすみシアン」


「おやすみルージュ」


教会の12時を知らせる鐘が町に響く


“やぁ 君を攫いにきた怪盗だけど”


「随分と高いところまで登れるのね」


“君を攫って良いかい”


「どうかわたしを、攫っていって」


“ではご要望の通りに”


“でも、一つ言わせて頂けるかな?”


「どうぞ?一つといわず幾つでも」


“君は王子様を待っていたようだが・・・怪盗でも受け入れてくれるかい?”


「私、おおざっぱな所が取り柄なの」


“もう、バレたかな?”


「何?その格好 あなたらしくないわシアン」


“やっと鉄格子の向こう側に来ることが出来た”


「物知りな怪盗サン?私は攫われるのよね?」


“あぁでも、最後に一つ”


今までずっと言えなかった言葉


“ここから逃げよう 愛してる”


 僕はそっと彼女を抱きかかえると


闇の中へ姿をくらませた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ