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第8話 Cランク

その男は先日、仲間と協力しBランクという一流の冒険者になった。


ギルドで偶然目にした、全身黒い服の冒険者が見慣れぬ武器を持っていた。


話を聞くと、その男はDランクでソロで活動をしているらしい。


それが可能なのは、その武器の恩恵だと判断した。


チームに誘い、理由を付けて武器を頂こうと画策した。


しかし自分の誘いは断られた上、周囲の冒険者にバカにされてしまった。


怒りのまま決闘に持ち込んだ。


ランクの違いもあり、自分の勝利は揺るぎ無いだろう。


試しに目的の武器の使用を止めるように言ってみたら、相手は腰に差した剣も外していた。


自分は武器を使うが、相手は丸腰。


相手はDランク、良い武器を使っているだけの奴が自分を倒せるだけの魔法を使ってくるとは思えない。


殺さないように気を付けなければならないが、ちょっと痛めつければギブアップするだろう。


この試合に勝利してあの武器をゲットしたら、自分の活躍はどこまで広がるだろうか。


己の輝かしい未来を想像し、自然と笑みがこぼれた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「試合開始!」


審判の声が響く。


先に動いたのはグラドロの方だ。


「うおおぉっ!!」


シンを狙い振られる剣は、並のモンスターの攻撃よりも速く鋭い。


最近の評判の悪さが目立つグラドロだが、Bランクというのは伊達ではない。


対するシンは素手の上、鎧を着ているわけでもなく軽装だ。


・・・実際は並の鎧など比較できない程丈夫な服なのだが、それを知る者はシン以外いない。


グラドロの攻撃が当たり、この試合は終わりだ。


多くの者がそう思ったが、目の前の光景はその予想を覆す物だった。


グラドロの剣はシンにではなく地面へと振り下ろされている。


「て・・てめぇ、何をしやがった!?」


グラドロの疑問に答えることなく、シンはその場にただ立っている。


その後の展開は単純であった。


グラドロは攻撃するが、シンが攻撃する様子はない。


だがグラドロの攻撃は当たらず、いずれも外すか回避され続けている。






どれだけの時間が経っただろうか、向かい合う2人の様子は正反対だ。


グラドロは顔を赤く染め汗だくなのに対し、シンは涼しい顔でいる。


ここまで差を見せられると観客の反応も変わってくる。


グラドロの勝利を信じて金を賭けていた者達は顔を青くし、反対にシンが全ての武器を外した瞬間絶望していた者達の表情には希望の光が見えてきた。


「いいぞ、兄ちゃん!後は相手をぶっ飛ばせ!!」


「グラドロ、テメェ!さっさと攻撃当てて終わらせろ、相手はDランクのガキだろうが!!」




そんな観客の中には賭けをするでもなく、今まで出てこなかったシンの情報収集をしている者もいる。


シンがやっていたのは魔力による身体強化だ。


それも一般的に知れ渡っているような全身に常時魔力を循環させるタイプではなく、必要な部位を瞬間的に強化するタイプだ。


これは使い手に要求される技能が高い反面、相手に見破られにくいという利点がある。


事実、対戦相手のグラドロを始めこの場にいる多くの者はシンが何をしているのか分からずにいる。


情報収集をしている者達の中でこの事に気付けたのは、偶々此処に居たギルドマスターを筆頭にした一握りの者達だけだ。




そんな中、シンが大きくバックステップして距離を取る。


この試合で初めてシンが自分から動いたのを見て、誰もがこの試合の終わりを予感した。


「そろそろ終わりにしよう」


淡々と予定時刻を告げるような発言は、シンの自信の表れだろうか。


自分の勝利を確信しているかのような発言だが、この場に居る者達はシンにそれだけの実力が備わっていることを無意識に感じていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




グラドロは愕然としていた。


試合開始直後、自分が繰り出した攻撃はシンが普段相手にするようなモンスターのそれよりも強烈な一撃だったはずだ。


決着が着くはずだった攻撃は外れ、その後の攻撃もことごとく外れるか避けられた。


周囲から浴びせられる自分への野次も耳に入らない。


目の前にいる男は、自分など歯牙に掛けないほどの実力者であることを今になって思い知らされた。




相手が大きく後ろに下がった。


「そろそろ終わりにしよう」


それは自分への敗北通告にも等しい。


自分はきっと負ける、だがタダで負けるわけにはいかない。


相手の姿を見失わないように、剣を構え直す。


こちらが迎え討つ準備を終えたのを見届け、その男は再び告げた。


「仕掛ける!」


言い終わったと同時に相手の姿が消え、後ろからの衝撃を受け男は意識を失った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




グラドロを手刀で気絶させ、それを確認した審判が試合終了を告げる。


俺は駆けつけてきたギャラリーに囲まれた。


各々によくやったと俺を褒めたり、儲けさせてもらったぜと感謝されたり、テンションが上がった彼らに胴上げされたりとしばらく動くことはできなかった。


中にはどさくさに紛れて俺を勧誘してくる者もいたが、丁重にお断りした。


冒険者達から解放された俺は、預けていた武器を受け取るため受付嬢の元に向かった。


が、そこには胡散臭そうな爺さんもいた。


連続でトラブルとかは勘弁したいのだが・・・


「待っておったぞ、シン。ワシはここのギルドマスターじゃ。報酬の件もあるでの、此処ではなくワシの部屋まで来て欲しい。」


ギルドマスターときたか、これは予想できんかった。


「分かりました」


受付嬢に感謝を告げながら武器を受け取り、ギルドマスターの爺さんに着いていく。




通されたのは、ギルドの2階最奥の部屋だ。


爺さんがソファーに腰掛けたので、その向かいに俺も座る。


「で、用件は何ですか?」


報酬を渡すだけなら、わざわざ俺をここに呼ぶ必要はない。


「お主のランクについてじゃ」


俺のランク?


「おっさんのじゃなくてですか?」


「うむ。グラドロは今回お前さんに負けたことでCランクへと降格した」


「そういう取り決めでしたから」


「お主は成り立てとはいえ、Bランクを相手に圧勝した。それを考慮し、特例でお主をCランクへと昇格する」


「いいんですか?」


「部位ごとの瞬間的な身体強化なぞ扱えるのは、Bランクでも少ないんじゃぞ。それを平然と使える奴をDランクのままにしとくわけにはいかんじゃろ」


「・・・流石に分かりますか」


「あの場で気付いたのはワシを含めごく少数だろうがな」


「そうですか」


「驚かんのじゃな」


「そうなっても仕方がないと割り切ってましたから」


「そうか。個人的にはその武器の出自なども聞きたいんじゃが、止しておくかの。話は以上じゃ、受付でギルドカードの更新と賭けの報酬を受け取るといい」


「分かりました。この武器については機会があれば語ることもあるでしょう。・・・では行きますね」




そういってシンが退室したのを確認し、ギルドマスターは呟く。


「日本刀に銃・・・あ奴の情報が少ないことも合わせ、これは確定じゃろうか?」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




部屋から出た俺は待機していたギルド職員に連れられ、1階に戻ってきた。


そのまま言われた通り、受付に向かう。


受付にいたのは、俺が武器を預けたあの受付嬢だ。


「ギルドマスターに言われてカードの更新と報酬の受け取りがしたいんだけど・・・」


「話は聞いています。ではカードをこちらに」


「はい」


「カード更新の間に報酬をお渡ししますね。今回は凄いですよ、こちらです!」


そういって渡された袋の中身を確認する。


「・・・金貨3枚!?ホントにこれだけ貰えるの?」


「はい、本当ですよ。今回はギャラリーも多かったことなどもあって、ギルドの方もホクホクなんですよ!」


「下手な依頼受けるより収入が多いとはね」


「今回の件でシンさんの事も広まると思うので、こんなになることは無いと思いますけどね」


「そうだなぁ」


「あ、ギルドカードも無事更新が完了しましたよ!」


手渡されたカードには、確かにCランクの文字が表示されている。


「ああ、ありがとう」


受付嬢に礼を言い、その場を去る。




ランクアップを終えて報酬も貰った、この後はどうしようか・・・


そんなことを考えながら、ギルドの中にある酒場?らしき場所でドリンクを注文し休んでいる。


周りでは賭けで儲けたと思われる人たちが宴会をしてる。


(まだ昼間だってのに凄いな・・・)


呆れ半分でそんな様子を見ていると、俺の方に冒険者らしき女性が近づいてくる。


え、マジで?


今の俺は誰かに絡まれないよう気配を消している。


注文のために店主に声を掛けたので彼には気付かれているが、他の人に感知されるとは・・・


「先程の試合は見せてもらったわ、Dランクだというのに凄かったね」


わお!改めて見ると美人さんだよこの人、しかも金髪巨乳!!


「シンだ。ついさっきCランクに上がったんだ。何か飲むかい?臨時収入もあったんで奢るよ」


キリッ!我ながらそんな効果音が付きそうなセリフである。


「ではありがたく。マスター、彼と同じものを。私はソフィア、ランクはAよ。よろしくね、シン」


ここでまさかのAランクである。


「Aランクか、凄いな」


「私はハーフエルフだからね。人より長命な分ランクも上になっているだけよ」


「そうなんだ」


紳士たる者、気になっても女性の年齢は問わないのだ。


「シンは変わってるね。私がハーフエルフだと知っても何も言わないんだ」


「親は選べないからな」


「達観してるのね、お爺さんみたいよ?」


「ぐぬぬ」


「ふふっ、冗談よ?」


「そうであってほしいな。ソフィアはどこかのチームに所属してるの?」


「今はフリーよ。臨時パーティでの依頼ばかり」


「へぇ、Aランクともなれば何処からも勧誘されそうだけどな」


「勧誘はあっても気に入ったチームとは巡り合えないもの」


「そんなもんか」


「・・・そこでシンにお願いがあるの」


「うん?」


美人からのお願いだと!?






「私とペアを組まない?」


戦闘描写は難しいです。

追記:気になった部分を修正しました。

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