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第7話 冒険者は暇人ばかり

私は冒険者ギルドの受付をしているシャイナと申します。


ここのギルドは王都ということもあり、日々多くの冒険者の方々が訪れます。


しかし、人が多いとその分トラブルも発生しやすくなってしまいます。


職業柄、血気盛んな冒険者です。


場合によっては、売り言葉に買い言葉で決闘にまで発展することもあったりします。


「テメェ、この俺を舐めてんのか!」


「そんなつもりは無いんだけどなぁ」


今私の視界の先では全身を黒の服で統一した青年が、つい先日ランクアップしたことで増長していると評判の男たちに絡まれているみたいです。


ここ10日ほどは特に冒険者同士の争いなんて無かったんですけどね、周囲の冒険者も面白そうに見ていますよ。


どうやら見物の冒険者の一部が煽っているようですね、絡んでる側のリーダーらしき男の顔がみるみると赤くなっていきます。


「俺と決闘してもらうぞ、クソガキィッ!!」


その言葉が響いた後、一瞬の間を置いてギルド内は一気に騒がしくなりました。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――










どうしてこうなった。


今の俺の気持ちを表す言葉はこれしか考えられない。


今日は銀翼が俺に接触してきたあの日から15日は経っている。


作成した武器の最終テストも終え、久しぶりに冒険者ギルドにやって来たのだ。


そう、此処に来るまでは何も問題無かった。


あの日以降、俺はギルドはおろか街にも姿は現わしてない。


その上装備を新しくしたことで、以前の俺を遠巻きにしか見ていないような奴らは俺だと判断することは難しいだろう。


なので街で食事や買い物をしても俺はトラブルなどとは無縁だったし、このまま依頼を受けれると思っていた。


思っていたのだ。


な の に ! 現在俺は目の前の男達に絡まれている。


周りは面白がっているし、中には先日も同じように此処にいたのか俺の事に気付いた奴もいる。


ことの発端は今から数分前に遡る。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


意気揚々とギルドに到着した俺はDランクの依頼を受けるため、掲示板へと足を向けた。


そんな俺に後ろから声が掛けられた。


「よう、兄ちゃん。見ない顔だな」


「まあね、此処に来てまだ一月も経ってないし」


あまり長話はしたくないが、騒ぎを起こしたくはないので会話を続ける。


「お前、ランクは?」


「Dだけど」


「・・・ソロで依頼を受けてるのか?お前だったら特別にBランクのこの俺、グラドロ様が率いるチームに入れてやってもいいぜ!」


そんな事をいうコイツの視線の先には、俺が腰に装備している銃がある。


あ、今気付いたけどこのグラドロって奴、食事の最中に聞こえたけど評判が悪いらしいじゃん。


なんでもBランクに昇格したことを契機に、C以下のランクの冒険者を侮辱したり難癖つけて脅しているとか。


恐らく俺がDランクなのと銃を結び付けて、ソロでやっていけているのは武器のおかげとか思っているのだろう。


そして俺から銃を奪おうとでも考えていそうだな。


そんなことが無くても俺の答えは決まっているけどね。


「お断りします」


「理由を教えてもらいてぇな」


目の前の男は見るからに不機嫌そうだ。


「1人で十分だからさ」


それに俺は信用できる奴しか仲間にしたくない。


「テメェ、この俺を舐めてんのか!」


案の定怒ったよ、オイ。


チームを組んでる自分達をバカにされたとでも思ったのだろうか。


「そんなつもりは無いんだけどなぁ」


周囲で此方の様子を見ていた冒険者が話しかけてきた。


「グラドロ、お前は噂を聞かなかったのか? あるDランクが銀翼に誘われたってやつだ。お前の目の前のソレが噂の小僧だ」


それを聞いた他の冒険者が騒ぎ出す。


「誘われたのは食事ですけどね」


俺は保身のためにそう言うが反応は変わらない。


「今ソロでいるってこたぁ、銀翼は勧誘しなかったか振られたかのどちらかだろう」


その冒険者は底意地の悪い笑顔をグラドロに向けて語り続ける。


「そんな奴が、銀翼よりも格下チームを率いるお前からの勧誘を受ける理由は無いと思うぜ」


グラドロに対しこれまでの不満が溜まっていたのか、周囲から失笑が聞こえてくる。


これではグラドロのプライドもズタズタだろう。


この好きに行けるか?


「俺は依頼を受けたいから、これで・・・」


冒険者ですが、ギルド内の空気が最悪です。


ということで退散したいのだが、そうすんなりとはいかないらしい。


「待てよ、ガキ! テメェの所為で恥をかいた落とし前をつけてもらおうか!?」


何その超理論。


「知らないよ。アンタのこれまでの行いが悪かったんだろ、自業自得だ」


「うるせぇ! 痛い目に会いたくなかったらその武器を置いて行くんだな!!」


なんか勝手に話が進んでいく、この展開は不味い・・・


「お断りします」


周りから歓声が上がり、それに合わせて煽る奴も増えてきた。


「グラドロの奴、Dランクに散々バカにされてやがるぜ」


おいバカ止めろ! コイツの怒りの矛先は俺に向けられてるんだぞ!!


「もう我慢ならねぇ!!」


俺にこの流れは止められない、お手上げ侍だ。


「俺と決闘してもらうぞ、クソガキィッ!!」


決闘って何さ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


そして今に至る、と。


ここはギルドが所有する冒険者の訓練所で、決闘はこの場所でやるらしい。


通常ならチームの連携確認などに使われているらしいが、今この場には俺とグラドロと審判役のギルド職員しかいない。


ギルドにいた冒険者の内、依頼を受けてない者たちが観客席に座っている。


他のギルド職員が手慣れたように賭けを取り仕切っている。


暇人共め、仕事でも受けてれば良いものを・・・


俺とグラドロは審判からルールの説明を受ける。


・1対1である

・勝利条件は相手を気絶かギブアップさせる

・相手を殺した場合、冒険者ギルドからの追放

・武器や魔法の制限は無し

・勝者は賭け金の一部をギルドから受け取れる


ここまでは通常の決闘におけるルールで、今回は以下のルールが加わる


・グラドロが勝利した場合:シンは腰に装備している銃をグラドロに譲る

・シンが勝利した場合:グラドロをCランクへとランクダウンさせ、以後1年間ランクアップの資格を剥奪


これは互いに勝者の権利をあらかじめ決めておくためだそうだ。


互いにルールに同意したことを伝える。


後は審判が開始の合図をするだけだ。






この段階では、もう勝敗に関係なく俺の名は広まってしまうだろう。


どうしてこうなった、本来の予定では今頃依頼を受けて街の外に出ている筈だったんだけどなぁ・・・


もう、ゴールしてもいいよね・・・?


殺さなかったら問題無いということだし、このおっさんには俺の八つ当たりを受けてもらおう。


そんなことを考えていると、グラドロが話しかけてきた。


「おいガキ! お前のその武器は俺に渡す商品だ。だからこの決闘で使われて壊されても敵わん、腰から外してろ!!」


そういやこのおっさん、この銃に偉い注目してたな。


簡単に壊されるような武器は作ってないが、銃を装備したまま戦って後で騒がれても感じが悪いので誰かに預けてしまおう。


どうせなら女性に預けようということで、ギルドの受付嬢の元に向かう。


「ゴメン、ちょっといい?」


「は、はい!」


「この武器なんだが、あのおっさんに決闘の賞品だから装備から外せと騒がれたからちょっとの間預かってて欲しいんだ」


そういってホルスターごと受付嬢に渡す。


「わかりました、大切に預からせて頂きます!」


「頼んだよ、ついでにこれもお願い」


俺が銃だけでなく刀も預けたので受付嬢は目をパチクリとしているし、ギャラリーは騒ぎ出した。


俺に賭けたであろう奴らは声を上げて落胆し、逆におっさんに賭けた奴らは笑みを浮かべている。


グラドロも自分の勝利を確信したのか笑っているのが分かる。




良い笑顔だ、感動的だな。だが無意味だ。




指定された立ち位置に歩む俺は、思いの外冷静な思考で相手をどう無力化するか考えていた。

この世界では決闘での賭け事は当然のように行われています。

しかし、カジノのような施設は余り広まっていません。


何か疑問がある方はコメントして頂ければ幸いです。

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