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第5話 交渉

『来訪者』それは伝承に語られる勇者のように、異世界から召還された存在。


勇者が魔王討伐を成し遂げたことで、権力者達は己の利益と力の拡大のために『来訪者』を求めた。


当然リスクもある。


例えば、召還の際は魔法陣に魔力を注ぎ込めば良いがその必要魔力量は莫大であること。


昔、とある国が召還を試みた際には宮廷魔術師が複数人交代しながら魔力を送っても10年もの時間を要したらしい。


仮に召還が成功したとしても『来訪者』が自分達に友好的ではない可能性など、不安要素を挙げていけばキリがない。


それでも『来訪者』がもたらす異世界の知識やその身に与えられた力は魅力的なのだ。







現在の俺は只のDランク冒険者であり、有力な後ろ盾など有ろうはずもない。


つまり俺が『来訪者』ってことが周囲に知られたら、面倒なことにしかならない。


「答えて」


はい、俺の自業自得ですが絶賛大ピンチ中です。


いや、嘘をつかないなんて安請け合いするべきじゃなかったね。


それまでが問題なく答えられる質問だっただけに、油断してたよ。


まさか「貴方は『来訪者』?」なんてド真ん中ストレートで問いかけられるとは思わないじゃん!


向こうが嘘をつかないでと言った以上、真偽の判定方法を持っている可能性も考慮するべきだな・・・。


 ・嘘をつく→問題外、何が起きるかわからん

 ・沈黙を貫く→肯定と取られた場合俺がピンチに

>・正直に認める→他人に広めないように交渉


これだ、これしかない!


そう判断したなら善は急げだ、怪しまれる前にケリをつける!


「その通り、俺は『来訪者』だ」


俺が素直に認めたのが意外だったのか、レオン達からの質問はまだこない。


「俺が正直に認めたのは、このことを他人に教えるような真似をしてほしくないからだ」


面倒事は起きないに限るんでね。


「それって、アタシ達を口止めしたいということ?」


いち早く反応したのは意外なことにエイスだった。


「ああ。勿論タダって訳じゃあない、そちらの要求もある程度なら呑もう」


「ならさ、アタシ達と契約して『銀翼』のメンバーになってよ!」


「却下」


「ケチ~」


そういう勧誘を避けたいから、俺なりに地味に活動してきたというのにOKするはずがないだろ。


次に発言したのはこれまで殆ど喋らなかったクロウだ。


「『来訪者』は召還の際に特異な能力を授かる場合があるらしいが、お前はどうなんだ?」


「残念、好感度が足りない! というのは冗談では無くて、正直今日会ったばかりの奴に自分の手の内を晒したくはないんだよね」


「今後、教えてくれる可能性があると?」


「それはアンタ達が信頼できると判断できたらかな~」


知りたかったら俺のことは黙ってろ、ということですな。


お次はザフィールかな?


「俺はその武器について聞きたい」


そういって目を向けたのは、俺が腰に差している日本刀だ。


この世界で使われている剣は、両刃の物が殆どだ。


なので、見慣れない武器に興味が出るのも仕方がないだろう。


「コイツは日本刀、もしくは刀とでも呼んでくれ。俺の故郷でかつて使われていた武器だ」


「かつて?」


「俺が住んでいたのは平和な国だったってことさ」


「そうか、悪かったな・・・」


「気にすんな、元の名前も捨てたしな」


「カタナと言ったか、手に取ってみても良いか?」


ザフィールに刀を渡す、この刀は俺が自分で精製した物だ。


材料は鉄などの比較的簡単に入手できる物だが、頑丈さに重点を置いてある。


俺が無茶な使い方さえしなければ、Cランクまでなら十分に通用する一振りだろう。


初めての日本刀を手にしたザフィールは熱心にその刀身を見つめている。


残るは腹黒レオンと爆弾投下娘ヘレンの2人だ。


「まずは私から」


ヘレンか・・・この娘は何を言ってくるか読めないんだよな~。


無茶な要求を言ってきませんように、と祈っとく。


神様なんか信じてないけどな!


「そんなに難しいことは要求しないわ。まだ先の事になるけど『銀翼』と合同で依頼を受けて欲しいのよね」


「依頼?」


「内容は未定だけどランク昇格に関わる依頼なのは確かね」


「そんな依頼を合同で受けても大丈夫なのか?」


「そこはギルドとの交渉次第になるけどね」


「ここでの返事は保留にさせてくれ」


「そうね。良い返事が返ってくることを願うわ」


よし、ヘレンはこれで大丈夫だろう。


後はレオンだけか・・・さて、コイツは何を要求してくる?


「最後は僕だね。実を言うと何を要求するべきか迷っていたんだけど、ヘレンの要求を聞いてコレにするよ!」


もの凄い不安を感じるんですが、俺はどうしたら良いでしょうか。


「シン、キミはさっさとBランクまでランクアップしなよ。そうすれば僕たちと一緒に依頼を受けても問題ないでしょ?」


お前は何を言っているんだ?


周りもウンウンと納得してないでほしいんだけどなぁ!


「ランクアップを目指すのは構わないが、そのペースについては確約できんぞ」


我ながら無難な答え方だな、だが今はこの状況を無事に乗り越えることが最優先だ。


「ま、今はそれでいいさ。時間も丁度良い、今日はこれで解散にでもしよう」


レオンはそう言い会計に向かう。


俺はザフィールから刀を回収し、店先まで出る。


アルコールを摂取して火照った身体に当たる夜風が気持ちいい。


「ごちそうさまでした」


会計を終え店から出てきたレオンにそう告げる。


棒読みに聞こえるのは気のせいだろう。


飯は食った、口止めもした、礼も言った。


ならばこれ以上此処にいる理由は無いだろう。


この数時間で受けた精神的疲労を癒やすために、俺は我が家へと足を向けた。

モンハンでは片手剣が一番好きです。

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