第04話 整理…そして物語を始めよう 20210905・加筆修正
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東雲 瑛です。
取り敢えず生き返ったのは良いけれど……人間をやめておりました。
何となく嫌な予感はしていたんだけど、赤ちゃんプレイだけは回避されてホッとしてる中身30歳です。
でも素手で悪魔と殴りあいが出来るって半端ね~な。
これまでの事を 簡単に整理すると次のようになる。
1,俺、間違いなく一度死んだ、そして超人になって生き返ったのだ。
……まだ幼児だがな……
2,助手のアシスタント・ドロイドは、時の3女神ノルンの現界した存在だったらしい。
そして全員が俺の嫁だ。
当初は1人のはずがいつの間にやら3人になっていたのは、あの爺さんの介入だったのかな?
……いゃいゃ、お主の暴走じゃ! このスケベが! ……Byオージン……
3,秘密結社『セフィロト』は、俺たちの敵である。
4,『旧支配者』なんて言う化け物も存在するらしい。
5,俺たちは今、小笠原沖の海底1200メートルに潜伏している。
6,海底基地の名は『リーフ』、直径1kmの移動基地だ。
種っていう案もあったけど、種は俺達じゃんよ。
7,取りあえずの目標は、自由な活動基盤だ。
そしていつかは金星への移住だ。
8,3姉妹達には、それぞけに使命があって、この世に現界したらしい。
そして、取り敢えずは俺の嫁になるのが最優先事項だそうだ。
9,俺には、まだ自分も知らない秘密がてんこ盛りあるらしい。
今は、こんなとこかな。
それじゃ早速、俺たちの物語を進めようじゃないか。
◆
俺達は、基地の名前を決めてから、新たな組織を作ることにした。
いやいや、暇だったんだよ!
奴等の介入に対する準備もあったし……。
俺はまだまだ体が出来ていないので、あと半年間もメディカルポッドからは出られないって言うし、寝てるか嫁たちとおしゃべりしてるしかやる事が無い訳で、元人間としては3代欲求って物のうち、1つ睡眠だけって言うのは拷問と変わんないわけですよ……とほほ……。
確かに情報知性体と言ってもいいほどの能力を発揮して大量の情報を一度に扱えるようにはなった訳だけど、外部との通信は閉鎖した状態が続いている。
それに、エッチな情報は嫁たちに検閲されてたし……『幼児にはまだ早いです!』なんだそうな……中身は30歳だっちゅうの。
やんなっちゃうよな……チェッ……。
ある程度この新しい体やチカラの使い方にも慣れてきた潜伏8ヶ月目の頃(体は7歳児)、その事件は起きたんだ。
電子音声『ヴィーッ、ヴィーッ、ヴィーッ、接近する未確認船あり!』
「俺達が 情報を確認できない船って恐ろしく怪しくね。ベルはどう思う?」
「そうですね、どこの所属なのかだけでも解らないって言うのは、とっても不自然です」
「瑛さま」
「どうした? ウルズ」
「どうも民間チャーターのクルーザーの様なんですが……プンプンと臭いますね」
「奴等か? 俺たちはまだ見つかっていないはずだよな……」
「たぶん、親玉から何らかの指示があったのではないでしょうか。相手は邪神です、侮ることは出来ません」
「確認に来たってところか。しかし、直接探査用のプローブでも落とさなければ普通じゃ確認は無理だろう。深海探査船は、大学か専門企業しか持ってないだろうし……よし、念の為にゆっくり深場に移動してやり過ごそう。スクルド」
「な~に~、お兄ちゃん」
「今のリーフは、深度何メートルまで耐えられる?」
「設計上は、太平洋の平均深度4000メートルまでは大丈夫だよ。リーフは3重構造で一番外側の区画に与圧を掛ければ7000メートルまでなら余裕でイケるよ」
「よし、大陸棚を離れて深度3000メートルまで潜行しよう。その深さなら専門の深海探査船でも持って来なければ見つかることは無いだろう。移動中、深海山脈には気をつけるんだぞ」
「了~解♪ アンノウンとの接触予定時間まで40分、リーフの移動完了まで35分ってところです」
……40分後……
「そろそろだな」
「アンノウンより何かが投下された様です。ずいぶんと沢山落としますね……50個を確認……」
……ズズズッ~ン、ズズ~ン、ズズズッ~ン……
「っ! 投下物は爆雷のようです。移動してなければ少なからず被害が出ていたと思われます」
「予告もなくいきなり爆雷かよ」
「マスター、報復いたしますか?」
「いや、どうせなら土産を持って帰ってもらおう。敵の情報もほしいしな……」
「了解いたしました。姉さん、探査用のマシンで使えそうな物は有る?」
「有るわよ~、これこれ♪ フナ虫Mark2・G擬態バージョン!」
ウルズがその手に掲げているのは、黒光りするGにそっくりなフナ虫だった。
「ウハッ、これは凶悪だな、見た目が……ヒゲまで入れて7センチのGって……」
「それはっ、あたしが前に踏み潰そうとして逃がしたヤツ! リーフ内は、まだ生物が生存できない環境の筈なのに生物が居るのはオカシイと思っていたのよ。姉さんだったのね」
「ウフフフ♪ こいつならどんなところにでも潜り込めるわよ。勝手に充電までする優れモンよ……充電さえしていれば事実上の活動限界は無いわ!」
「よし、ウルズ。盛大にばら撒け!」
「了解。ポチッとな……」
その日、およそ300匹の黒光りするフナ虫が海上のクルーザーに向かって解き放たれたのだった。
人知れずクルーザーの船底に綺麗に張り付いて……それはまるで黒い鱗の様だ。
「それで、情報はどうやって送られてくるんだ?」
「ハイ、この専用アンテナで……」 ……ウルズが頭に付けるのはGの触角……
「単体でのコントロールも出来ますし、自動制御で継続的な指定情報の収集も可能です」
「ウハッ♪ 面白そう……あとで俺にも貸して……」
「300機の探査機の内、3機の指令機が居ます。これです!」
キッ、キャアァァ~~~
悲鳴を上げてベルとスクルドが逃げだした。
ウルズによって俺の眼前に掲げられたのは、全長20センチくらいはある巨大Gだった。
非常にリアルに足とヒゲが、ワシワシと動いている。
ヒゲが長げ~~、ほんとに裏側は、フナ虫だな……。
……良く直に持てるなウルズ……嫌過ぎる♪
「この指令機には、中距離の帰還機能がありますので物理的な物を持ち帰ることや届ける事が出来ます。Gに似せてあるのは、生存率を上げる為と隠密行動を取らせるのに理に適った生物だからです。Gを見るとどんな人間でも一度は怯みます。その隙に人の反応できない速さで逃げだす訳です。スクルドで試験済みですし、生還率は高いと自信を持っております」
「敵が可愛そうになって来たな、しかし手は抜かないぞ。これから我らが攻勢に出るには自由に動ける味方も欲しい処なんだが、外にエージェントを雇うなりしてゲリラ組織でも作ろうか?」
「そうですね、ゆくゆくはリーフも公開する時がくるでしょうし、外部へのパイプは欲しいですね」
「情報が集まり次第、反抗作戦といくか。みんなもそれでいいか?」
「「「了解!」」」