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第31話 国連大使ルイス・キャラウェイ2 20210911・加筆修正

4002文字 → 4067文字




 こんにちは、ルイス・キャラウェイです。


 私は今、帝政ルシファーの国土とも言える、移動基地リーフに来ております。

 リーフの停泊している所は、日本近海の千葉県犬吠埼沖合い約10キロメートルの海域です。

 空から見た時は、ただの小島でしたが、すぐ横に浮かぶプラントや行き交う船舶、ヘリ等により島ではなく巨大な人工物である事が分かりました。

 移動基地と聞きましたが、本当にこんな巨大な物が動くのか一度見てみたいものです。


 リーフには、その全てを管理しているイリスと言う管理AIが居り、皇帝を『お父さま』と呼んでいます。

 人格を持ち自律したAIなど初めて聞きましたが、3女神も元は同じ様な存在だったと聞いた時には、耳を疑いました。

 この一カ月ほど行動を共にしてきましたが、ルシファー皇帝とは、いったい何者なのでしょうか!?

 謎は、深まるばかりです。


 リーフの中は、とても広く……人工物である筈なのに、天井では無く空が見えるので普通の町を案内されているような感じです。

 海底や宇宙での長期生活でも閉塞感の無いように、配慮されているそうで、1万人ほどなら余裕で自給自足のできる環境と設備が整っているそうです。

 今回、私は宇宙戦艦のヒルドに便乗してリーフに来たので、ドックから直接居住区に入った時には、外に街が在るのだと勘違いしてしまいました。

 海に浮かんでいるリーフを、この目で見ているはずなのにです……。

 でも、本当に中は高級住宅街の様で、公園まで有ります。

 海の上の筈なのに、潮の香りは無く、街角の街路樹や花の香りがしています。

 空気の綺麗な田舎の避暑地にいるような気がしてきました、そういえば揺れをまったく感じませんがそのせいでしょうか。

 スクルドさんに案内されて私の部屋まで来たのですが……、高級ホテルのエクストラ・スイートの様な部屋なんですがどうしましよう!?

 私は、あまり高級過ぎると落ち着かないので他の部屋にして欲しいと御願いしましたら、何てことでしょう! 

 その場で部屋の内装が次々と変わってゆくではないですか。

 イリスの説明によると、部屋の広さは変わらないけれど、自由に間取りや模様替えが出来るそうです。

 なんて素晴らしいのでしょう、これだけで何時間もハマってしまいそうです。

 聞いたところによると、実際にジュリアさんや竜樹大師も、最初は子供のように模様替えをして遊んでいたそうです。

 リーフは、まだ一般には公開していないし、ここに部屋を持っているのは、ジュリアさんを始め3人だけとの事で、私は4人目になるそうです。

 えっ、この部屋貰えるんですか!?

 もしかして凄い資産価値が出るかも……、有り難く頂いて置きましょう。

 事務総長が泣いて羨ましがる事は、請け合いですね。


 何故か、日本政府が国を挙げて凱旋パレードをするとの事で、私も来賓として出席しました。

 素晴らしく煌びやかで、日本の皆が明るく笑っているのを、久々に見たような気がします。

 私も仕事柄、度々日本を訪れる事がありましたが、最近の日本は活気が無く暗い印象が強かったのです。

 日本は、極東の小さな国で資源に乏しく、大変な努力で技術立国・経済大国と言われるまでになりましたが、技術の流出や雇用率の低下、デフレによる経済の停滞など、輸出輸入に頼った経済体質が仇となり、生活が苦しくなっていると聞いていました。

 飢餓や虐殺の起きていたアフリカに比べれば天国のように平和ですが、人は一度獲得した生活水準を手放すことが出来ない生物ですから、生活に破綻を来たすことも有るでしょう。


 如何して今回、帝政ルシファーの凱旋パレードを日本政府が主催で行ったのか……、それにはチャンとした理由がありました。


 ある日突然、日本近海に現れた人工物が日本のエネルギー問題と資源開発に大きな貢献を果たし、世界に注目されるまでの有名な独立国となった事で、落ち込んでいた経済が回復の兆しを見せて来たらしいのです。

 日本政府としては、その国・帝政ルシファーが、日本の近海に在り友好な関係である事を、国民と全世界に宣伝したかったらしいですね。

 ルシファー皇帝の御祭り好きもあって、盛大に宣伝できたようですし、その後に観光客などが日本に詰め掛けているとの事です。

 リーフには、日本の経済産業省と外務省から、入国及び一般公開の申し込みが来ているようですが、皇帝は右から左に聞き流しているようですね。

 その他、主要各国から国交の申し込みや外交官の派遣など、問い合わせが多数寄せられているそうで、国連の方にも、間を取り持ってくれと陳情が寄せられています。


 現在公開されているのは、リーフの隣に浮かぶ資源開発用プラントまでですが、ここに来るだけでもお金を出す価値があると私は思います。

 ここを一目見ただけでアフリカでの大活躍を差し引いても、各国が我先にと群がるのが分かります。


 このプラントは、大きく3つに分かれており、長さ500メートル・幅130メートルのユニットが連結して500メートル四方・海抜60メートル・海面下60メートルの巨大な浮島になっています。

 先ず1つ目が造船所兼工業プラント、ここでは大は300メートルを超える大型貨客船から高級クルーザーや車両、小はジェットスキーから自転車まで造船と修復及びクリーニングをはじめ、天然素材を除く工業製品のほとんどが生産されています。

 2つ目が資源開発基地及び備蓄プラント、ここは海底資源の開発研究と無線採掘ドロイドのコントロール基地及び採掘物の備蓄及び精製加工が行われています。

 およそ200機の採掘用ドロイドを貸出、日本政府及び各種企業や学術機関などが、無線コントロールで調査研究及び採掘を行っています。

 採掘物のうち調査研究用以外の物は、日本政府の監督の下で各企業などが販売及び供給を受けており、メタンハイドレートや各種レアメタルに鉄鋼石などが定期輸送船で工業地帯に運ばれています。

 3つ目がプラント関係者の宿泊施設及び飲食街兼港湾施設です。

 通常時は、屋上部分もヘリポートとして機能しています。

 このプラント施設は、日本政府へ帝政ルシファーが貸与しており、施設の維持管理はフルオートメーションで人の手が一切要らないので研究や開発に専念できますし、有る意味研究者にとっては、ユートピアの様な環境ですね。

 ここの管理もイリスが行っているらしく、必要に応じて環境の改善や設備のバージョンアップも行っているそうです。

 もちろん施設は24時間稼働していますが、過剰な連続運用は控えられています。

 施設関係者の健康に影響がでる前に、イリスが強制的に休養を取るように教育したそうです。

 研究者は、どこも一緒で研究や開発に時間を忘れてしまうらしく『しようが無い連中』なんだそうです。

 そういえば、日本人は昔からよく、エコノミックアニマルと言われていましたね。


 リーフに滞在している間に、頻繁に起こるイベントとも言える様な事が有りました。


 リーフの周りには、1メートルほども有る大きさの水母(くらげ)が回遊しています。

 イリスの説明によると、警備システムのクラゲ型ドロイドなんだそうですが、夜になると色々な光を発して泳ぎ回り、幻想的な光景を演出しています。

 普段は、水母と同じくフワフワと、魚に食べられそうになったりして刺激が加わると硬質化し、不法な異物に遭遇すると電気クラゲ宜しく、対象に張り付いて電気ショックを見舞うのだそうです。

 夜間に忍び込もうとした不審なアングラーが、光るクラゲにむらがられて、電気ショックで捕獲される光景が、観光客からは海中ショーの様なイベントに見えるようです。

 その瞬間を目撃した観光客は、集まったクラゲが目映く光って、又散ってゆく光景を見て歓声を挙げたり、溜め息を漏らしたりしながら見入っていました。

 この電気クラゲは浮力を自由にコントロールでき、気絶して捕まった不法侵入者は溺れることなく、常駐している海上保安官に引き渡されていました。

 警告を無視した違法船が突っ込んできた事もありましたが、電気ショックにより航行不能に陥ってクラゲ達に曳航されていきました。

 ちなみに、観光客が海に落ちたことがありましたがクラゲが集まって無事にすくいあげていました、便利ですね~。


 急に海が荒れて、大型台風の接近が告知されたときには、少し心配もしましたが、プラント全域に流れたイリスの穏やかなアナウンスとその後の対応に、またまたビックリしてしまいました。

 プラントと現在施設に居合わせている人の安全の為に、リーフとプラントは海中に潜行して台風をやり過ごすとのことなんです。

 その一大イベントに、施設関係者や居合わせた観光客、時化から逃げ込んできた漁師さん達はお祭り騒ぎです。

 プラントの気密確認から潜行に至るまでの全てが、ライブ映像で全プラントと日本国内に流されました。 

 放送の一部は海外にも流され、その技術力が話題の的になりました。


 こんな巨大施設が有れば、確かに国の経済にも大きな影響が出ることは、予測できます。

 どこの国も欲しがりますね、間違い有りません。


 一番ビックリしたのは、仕事も一段落したので、帰国の為にお土産売場を覗いた時です。

 帝政ルシファーの誇る宇宙戦艦ヒルドや戦闘機をはじめティンカーなどの玩具が売っていたのですが、箱書きを見たところ本物のスペックが事細かに記載されていたのです。

 各国の情報機関や軍部が喉から手が出るほど欲しがっている情報が、お土産品の玩具の箱書きに載っているなんて……この真実に気がついている人が何人いるのでしょうか。

 イリスに聞いてみたところ、スペックが解ったところで製造できなければ何の意味もないそうで、ハイテクに付け加えて魔法技術が使われている帝政ルシファーの技術は、有る程度の解析が出来たとしても、1%の再現も出来ないだろうとの事でした。


 リーフに部屋を貰ったことだし、次の休暇にまた来たいと思います。

 まだまだ謎の多い国と謎だらけの人達ですが、基本的に善良で自由な国で有ることが確認できました。


 今後も帝政ルシファーの動向には注目し、詳細な記録を心掛けたいと思います。






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