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第28話 アフリカ外遊4 20210911・加筆修正

読んで下さっている皆さん、ありがとうございます。

3956文字 → 4194文字







 ダメ元でスティーブ達を探しては見たが、その後の消息は要として知れなかった。

 彼奴等を安易に指名手配にして、下手に素人[妖物未経験者]がちょっかいを出そうものなら、返り討ちに会うのが関の山だ。

 どうしたものか、今後の対応にも頭が痛い案件である。

 アレックスに相談してみたら、そっち系の警戒組織も有ることは有るらしい……。

 どうもバチカン辺りの特殊部隊らしいんだが、嫌な予感がビンビンと漂っている。

 今回のが一段落したら紹介してくれるらしいんだが、俺達の方がブラックリストに載ってそうだよな~、だってあの狂信者が居たところだぞ!


 現在確認出来たアトゥの数は、驚くなかれ1000体を越えていた。

 オイイッ、邪神が1000体って普通に地球が滅びるぞ、人類の危機だぞ~!


 世界の警察さん、どうしよう? ってアメリカ大統領に聞いてみた。

 脂汗流しながら『核で焼き払えるかい?』って、聞かれた……。

 ……ダメだろう、それは……。


 アトゥの性質上、周りから生命力やエネルギーを吸い取り、近づいた人間は精神的なダメージを受け、最後にはミイラやゾンビの様な状態にされてしまう。

 見た目は枯れ木の様だが、焼き払おうとしてもエネルギーを吸い取られて殆どダメージを与えられないだろう。


 そこで考えられる攻撃方法だが、個別に封印していたのでは、埒が開かない。

 纏めてから吹っ飛ばそうと思うが、どうやって集めるかが肝だな……。






「ウルズ、そっちの方はどんな感じだ?」


『はい、何とか間に合いそうですね。今夜にも、ルシファー様の元に戻れると思います』


「そうか、期待してるぞ。スクルドはどうしてる?」


『スクルドは、ティンカー達の教育にてんてこ舞いしてますよ』


「何体まで稼働できる予定だい?」


『完全稼働時の1万体は完成しましたが、教育が水準に達するのは、6000体程だと思われます。後10日も有れば完全稼働できますが……』


「スリーマンセルで2000組稼働できれば、今回は十分間に合うだろうと思う。別枠の100体は、和尚の処だな?」


『はい、法術特化タイプとして、最初期にロールアウトして直ぐ、竜樹大師の元で特訓いたしました。ほぼ完成しております』


「和尚は、まだ御山かい? 今回の作戦の要だからな」


『いえ、リーフに来ていますよ。今夜一緒に向かいます。今はリーフ上空でフォーメーションの最終チェック中です』


「そうか、本番でがんばってもらわないといけないから、程々にして切り上げさせてくれ、正念場でスタミナが切れても困るからな」


『分かりました。十分な休養を取っていただきます』


「さあ、準備は整った。お祭りといこうか」




 場所は、サハラ砂漠のほぼ中央、アトゥが活発になるのは夜だ。

 闇に隠れている奴も出てきて、周囲の(せい)あるものを飲み込んでいく。


 現在、グリニッジ標準時で21時ジャスト。

 ここには、2隻の船が浮いている。

 1隻は、みなさん御存知の宇宙戦艦ヒルド、そしてもう1隻は。


 今回の主役、多目的工作艦・エイルである。



 全長 400メートル

 AI名 エイル

  《北欧神・救済者の中にあって、特に親切な者と言われた女神》


 双胴のドック艦で武装は特にないが、超強力なシールドを持つ。

 シールドビットを装備し、周囲の物も個別に守ったり、多重にシールドを展開することができる。

 艦その物が移動する工場であり、リーフで作れるものは、全て造ることができる。

 そして、ティンカー1万体を収容する母船でもある。


 ティンカー(修復する者)という名の、妖精型多目的ドロイドである。

 AIを持ち、自己学習する事ができ、修理以外でも色々な作業ができる。

 身長1.2メートルだが、重力場推進を装備し、大気中でもマッハ5以上で飛べる。

 最大20トン程までなら単体でも運ぶことができる。


 今回の作戦は、特別装備を持ったティンカーにより、邪神アトゥを釣り上げ、一カ所に集めてから吹っ飛ばす作戦である。



「ヒルド、荷電粒子ビームで結界陣を砂漠に描いてくれ。出きれば表面をガラス化させて、直径1キロメートル位のを頼む」


『了解イタシマシタ。荷電粒子砲、順次発射』


「ヒルドが祭りのステージを作っている間に、ベルはアトゥの個体識別情報をティンカー達に送ってナビゲーションを頼む。一匹も逃すなよ!」


「さあ、ティンカー達、初陣よ! 準備はいいわね?」


[[[[[[[[[[[PiPiPi!]]]]]]]]]]]



 今回のティンカー達の装備は、精神波及び電磁波を遮断するヘルメット(安全第一)と特殊ゴーグル、その肩にはアンカーワイヤーを打ち込むショルダーランチャーである。

 ワイヤーは、単分子ワイヤーを使用しているので細いが滅多なことでは切れない。

 出来るだけアトゥから離れた形で釣り上げ、運んで来る予定だ。

 アトゥ1体に、スリーマンセルで2チーム、6体を宛てる予定である。



「ヒルドの結界陣が冷えたら、後の捕獲結界は、和尚よろしく!」


「マッタク、年寄りをもっと(いたわ)らんかい。しようがないの~、地球を滅亡させる訳にもいかんしの~」


「エイル、準備はいいか? 結界陣の上にシールドビットを展開。ウルズは、エイルのサポートを頼む」


『了解デス。シールドビット展開』


「エイル、頑張りましょうね」


『ハイ、オネエサマ』




 午前0時ジャスト、準備は整った。

 この状況は、国連の活動として全世界に中継されている。

 だって地球が、これでオシマイになるかも知れないんだから、みんな見なくちゃ損だと思うんだ。

 視聴率100%じゃね~かな、多分……。




「ティンカー達よ、大変だと思うが助け合って丸太の化け物をここに集めてくれ!」


『 It`s Showtime! 』


『さあ始まりました、世紀の大イベント! 地球の存亡を掛けた邪神アトゥ狩りです。帝政ルシファーの全面協力で、実現いたしました今回のミッシヨンですが、現在、妨害等は無く順調に進んでいる模様です。実況は、私、国連特別派遣大使ルイス・キャラウェイがお送りいたします』


 ルイスさんも、ノリノリだ~。


「スクルド、ティンカー達が危なくなったら、ヒルドとヴァルキュイアで援護を頼む」


『了解!』


「まもなくティンカーの第一陣が敵に接触します。……接触しました」




 ショルダーランチャーから射出された単分子ワイヤーが狙い違わずにアトゥを絡め取っている。

 嵐になびく柳の大木のように枝を振り回して抵抗しているが、6体ものティンカーにより絡め取られ空中に釣り上げられてゆく。

 木の根に擬態した足が、気持ち悪く蠢いて抵抗している。

 多少の抵抗は見られるが、問題なく釣り上げて運んでいるようだ。


『みなさん、見えますでしょうか? 枯れ木の大木に見えていますが、黒光りする触手を振り回して抵抗しています。なんとおぞましい生命体でしょう。地球上には、未だかつてあの様な生物の存在が確認された事は有りません。ある筋からの情報によりますと、邪神アトゥと呼称さけるあの生命体は、生物が近づくと精神攻撃を行い、生命力を吸い尽くされるそうです。ほとんどの物理攻撃は、吸収されてしまい意味を成さないだろうとの事で、最近のアフリカにおける急激な砂漠化はあの生命体、邪神アトゥのせいではないかと言われています。今回は、帝政ルシファーのロボット達が、がんばってくれています。なんと可憐なのでしょうか。ティンカーと言う作業用ロボットとのことですが、まるで童話に出てくるティンカー・ベルの様です。夜空に光跡を引きながら飛ぶ姿は妖精の様にも見えます。今ここに、総指揮を執っておられる帝政ルシファーのルシファー皇帝が居られます。今回のミッションについてお話をお聞きしたいと思います。ルシファー皇帝、現在はどの様な状況でしょうか?』


『皆さんこんばんわ、帝政ルシファーの皇帝、ルシファーです。今回、国連の依頼によりアフリカ大陸の砂漠化を調査していましたところ、大量に発生した異種生命体を発見いたしました。今後はこの生命体を邪神アトゥと呼称しますが、この生命体が砂漠化の原因であると断定いたしました。そこで、我が国が誇る科学技術力と、日本の高僧である竜樹大師の協力で、この異種生命体の駆除ミッションを実現する事となりました。この生命体は、周囲の生物からエネルギーを吸い取ってしまいますので、人が直接駆除することが出来ません。全ての生物の天敵とも言える生命体であり、邪神と呼ばれた所以ですね。今回のミッションでは、妖精型多目的ドロイド・ティンカーによって、邪神アトゥを1箇所に集め、封印殲滅いたします。逃げ出さないように竜樹大師による結界で囲み、シールドごと重力井戸に封印します。そろそろ、第一陣が帰って来たようですね』



 ティンカー達によって集まりだした邪神アトゥが、結界陣上空に配置されたシールド・ビットにより半球状に展開された封印シールド内に放り込まれていく。

 逃げ出さないように竜樹大師の指揮で、法術特化型ティンカー100体に拠る捕獲結界が、砂漠に輝いている。

 地上に描かれた魔法陣がティンカー達の増幅を受けて光り輝いているのだ。

 通常、こう要った封印式には、結界を維持するための依り代が必要になるが、邪神アトゥには餌をやる様なものなのでティンカーに任せることにした。

 大昔、旧支配者を封印した時も多大な犠牲を払ったらしいが、現在は変わりになる者を造ることが出来る。

 敵が力で攻めてくるなら、知恵と技術力で対抗するまでだ。



『ご覧頂けているでしょうか? 見事な連携で、結界の中に邪神アトゥが集められてゆきます。それにしても沢山居ますね。何匹ぐらいいるのでしょう?』


『今確認している個体数は、1057体ですね。空中にカウンターを表示しましょう』



 パチンッ、と指を鳴らすと同時に、結界前の空中に捕獲されたアトゥーの数が表示された。

 その途端、ティンカー達のテンションが上がったようで、捕獲カウントのペースが速くなってゆく。



『捕獲スピードが上がったようですが、如何したんでしょうか?』


『ティンカーには、自己学習型のAIが搭載されていますからね、作業に慣れてくれば能率も上がります。多分、各チームごとに競争を始めたんじゃないでしょうか』



 テレビの前で、この一大イベントを観戦している人たちは、ティンカーの可憐なしぐさに魅せられる者、壮大なミッションに感心しながら行く末を見守る者、捕獲されるアトゥを一緒にカウントし熱狂する者など、様々であった。


 そして、場末の酒場にその様子を見る彼等の姿もあった。






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