第26話 アフリカ外遊2 20210911・加筆修正
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俺達は、今モロッコの港の税関に居る。
いつもの様に、勝手に行ってそっと帰ってくるってな訳には行かなかったのだ。
公式に国連大使を連れた外国の皇帝とその御一行が、勝手な行動を取れる筈がなかったのだ。
出発する前に、ルイスさんが先方に連絡を取ってくれていたらしいのだが、まさか港から車で、しかも飛行機よりも速く着くとは、誰も想像が出来なかったらしく、迎えの外務省の役人は国際空港の方に行ってしまったらしい……俺は、悪くネ~からな。
そんなごたごたやスレ違いもあり、今は優雅に港でお茶しながら迎えを待っている。
……そういえば事務総長の依頼って何だっけ?
まだ、詳細を聞いてないよな……。
ちなみに今回は、陸路でアフリカ大陸縦断をする予定である。
「ルイスさん、今回の国連からの依頼ってまだ詳しい内容を聞いてないんだけど、説明をしてもらえないだろうか。アレックスは、俺にも関係のある話だから、詳しくはルイスさんから聞けっていわれたんだが……」
「エ~ッ、事務総長まだ何も説明してなかったんですか!? まったく面倒事は、いっつもこっちに回すんですから……」
……オオッ…怒っとる、怒っとる………おおっ、立ち直りも早いぞ……
「今回皆さんにお願いしたいのは、アフリカの砂漠化が予想以上にそれも急激に進んでいる事の調査なんです。普通の砂漠化では無いらしいのですが、原因がまったく解らず対策が立てられない状況にあります。視察の折りに、調査分析を御願い出来ないかと言うのが主な依頼で出来れば対策の策定もお願いしたいとのことです。それと皇帝もご存じの軍事政権が遂に倒れました。問題は、その後の治安や経済状況が以前よりも悪化していると言うことです。まだトップが居た時の方が纏まっていましたので、ここまで悪くは無かったのですが……」
「ん~ぁ~ ある意味それって原因を作ったのは俺って事か? でも何でアレックスがそんな事を知ってんだ?」
「CIA長官から、色々な情報を仕入れているようでしたよ。最初は出し渋っていたらしいんですが、話し始めたら止まらなくなったらしく最後の方ではグチに近かったらしくて、散々嫌み混じりに聞かされたと、事務総長も辟易としてたみたいです」
「ありゃりゃ、これは余計なことまで伝わってる気がするんだが、たぶん気のせいじゃないな。アレックスは、かなり危ないことまで伝わってるかもしれないから、お守り渡しとかないとな~」
「そしてこれが、今確認出ている資料なんですが、ご覧になってください」
……んっ、おいおいチョッと待ってくれよ、この写真……
「ウルズ、ちょっとこれを見てみろ……」
「……あぁ、間違いないですね、原因はこいつで間違いないでしょう」
「えっ、もう何か解ったんですか? その写真から何が……不審なものは何も写ってなかったと思いますが……」
「ここをよく見てくれ、折れた大木が写ってるだろ」
「ええ、後ろに砂漠が迫っていて、いかにも危機的な風景ですよね」
「これおかしいとは思わないか? 砂漠という乾燥した環境で折れた大木にしては黒々としていて、今さっき折られたばかりの様に見えないか?」
「そう言われてみれば、おかしいですね?」
「そいつは、折れた大木に見えますが『アトゥ』という邪神です。ナイアルラトホテプの化身とも言われています」
「エッ……邪神、うそ……」
「アトゥは、周辺の生命力を根こそぎ吸い尽くして行きます。データから見る限りこいつだけでは無く、探せば複数潜伏している物と思いますね」
「こいつはやっかいだね~、人類の通常兵器では傷も付かないんじゃないかしら。核でも使わなくちゃ」
「そっそんな、どうすればいいんですか?」
「俺たちが、何とかするっきゃ無いんじゃね~の? アレックスは、俺たちなら何とかすると思って調査頼んできたんだろし、図に当たったって感じだけどさ」
……空間モニターを展開……日本のイリスとリンクしてっと……
「いったい、なっ何が始まったんですか?」
「前にうちのイリスは、ゲイリーの伝でアメリカのスパイ衛生と繋がってた時があってさ、今でも繋ごうと思えば繋げるんだよ。一応、大統領にはイザと言うときは使って良いよって、言われているから大丈夫さ」
「イリスの事は、後ほど詳しく説明しますね。マスター、光学解析でアフリカ全域をスキャンしました。間もなく結果が出せると思います」
……空間モニターにアフリカ大陸の地図が映し出され、そこに光点が灯りだした……
「こりゃ~随分と多いな、どうやって掃除するか……、ヒルドで絨毯爆撃でもするか!?」
「それはちょっと、国際問題になりますよ」
「ルシファー様、ここは私とスクルドに任せていただけませんか? 例の船がもう少しでロールアウトしますからね。ルシファー様達で根回しを御願いします。スクルド、一度リーフに戻るわよ」
「エ~~~」
「いいから帰るわよ。ベル、ジュリア、ルシファー様を頼んだわよ」
「はい、姉さん。」
「ハ~イ、ウルズ姉さん、がんばります!」 ……ジュリアは随分と馴染んだな……
「キャラウェイ国連大使、少し派手な事になるとおもいますから、アフリカ各国に手配を御願いします。ルシファー様は、私達が戻ってくるまでにシシリーさんの方を解決しといて下さいね」
「分かった、こっちは任せとけ。そうか、あいつが出来上がるのがもう直ぐか、名前考えとかないとな~」
「各国への交渉は任せて下さい。でも何で帰るんですか?。また戦艦ですか……」
「大丈夫だよ~、この子には足代わりのエアーバイクが3台乗ってるからね。ま~バイクっていってもマッハ7くらいは軽く出るんだけどね。2時間も飛べば日本に着くよ」
「そろそろ、モロッコのお出迎えがきた様ですよ」
外務省の役人が着いたようだ。
ウルズとスクルドは、カーゴスペースから引き出したエアーバイクにタンデムで跨り空に駈け上がっていった。
それを間近で見ていた役人や港の人々は、唖然と空を見上げるのだった。
シシリーの国ってスーダンとリビアの国境辺りだっけな……。
年がら年中民族紛争が絶えない地域だった筈だ……まだ、生きてりゃいいんだが……。