第24話 アフリカ外遊1 20210911・加筆修正
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俺は、どこで間違えたのか……。
五月蠅い羽虫を追い払うはずが、もっと五月蠅くなっているこの状況。
カオスだ……。
各国からの絶えない外交のアポイントに始まり、マスゴミの取材、見知らぬ宗教団体からの寄付の無瞋と嫌がらせ、一般からのファンレターや迷惑メール、etc。
これを端からこなしていくしかないんだよなー。
そんな訳で取り敢えず各国の要望を聞いてみた処、その内容は概ねアメリカさんと一緒だった。
……ブルータス、お前もか?……てな心境である。
マトモに付き合ってると際限が無いので全部キャンセルしようとしたら、ベルから待ったが掛かった。
本当に困窮している処は、手を貸してあげたいのだそうだ、ベルは優しいね~。
との事なので、これら救済が必要なところの選択を一任した。
分からない処は、国連のルイスさんが色々教えてくれているようだ。
そしてそんな中で特に多かったのが、ここへ移住の問い合わせである。
ジュリアが、第一国民として居住している事は衆目の関心事であった。
われもわれもと移住に関する問い合わせが、イリスですら捌ききれないほど発生したのだ。
実際には、イリスに繋がる各国からの通信ラインがパンクしたんだがな。
それは横に置いておくとして、現在のリーフに余裕を持って居住するとしたら一万人くらいがベストだと思われる。
国家として行政が果たす役割は、ほとんどイリスがこなしてしまうので、我が国に実質的な公務員は現在必要ない。
お役所仕事と言われるような仕事のたらい回しも、公金横領なんて起こりようがないし、役人がいないから給与も経費も必要としない。
普通税金の使い道は、公共サービスや役人の給料がほとんどであるから、リーフの現環境からみると不要であるのだ。
世界を見渡せば一部の原油産出国には、税金無しで国を運営している所もあるが、それは資源を他国に売ることで国家資産として運営にあてているからで、資源がなくなればそれまでだし、経済のほとんどを他国に頼っているだけの話である。
じゃあ国民が居なくても良いか、と言われればそういう訳にもいかないかなとも思う。
孤児院でもやれば合理的に国民を増やせそうではあるが、端から見ると如何にも独裁者が金と力に物を言わせて、ハーレムを作ってるようにしか見えね~ろうな~。
現在の我が国の国庫には、技術協力・資源開発・それら支援の対価として入ってきた収入がすべて国家資産として貯まっていく一方、出ていかないのでうちは割とお金持ちである。
慈善事業をしようと思えば、いくらでも出来る。
だが人間という物は、施しを受け続けているだけでは必ず腐ってしまう。
植物は、栄養を与えてやれば育つが、人間は怠けて腐る。
遊んで居ればいい環境なんてもってのほかで有ることは分かりきっている。
どうやって適度に働かせるかを考えないと国民なんて増やす事は出来ないのである。
リーフは、完全密閉型で自給自足が可能である。
考えられるほとんど全ての食料と工業製品の自給も出来る。
売るほど出来てしまうのだ、それも最高水準のものが……。
深海や宇宙空間で、生活運用することが前提に造られているリーフは、世の人から見たら、何でも出てくる玉手箱のように見えることだろう。
でもそれは、錯覚でしかないし何でも出来るからといって、閉じこもっていても良いことばかりではないのだ。
昔の人は、一つの物を何通りにも使った。
物を作る事とは、造る事、創る事である。
そして変える事とは、替える事、そう作り替える事は、閉じられた世界である宇宙船の中で暮らしてゆく必須スキルであり、捨てないで形を変えて利用しているにすぎないのだからだ。
今の地球は、物質とエネルギーのサイクルをろくに考えず、ただただ有る物を使い潰してきた事のしっぺ返しを受けているのが現状なんだよな~。
もし住人が増えれば、その世話をする人員が必要になるのは当たり前の話だ。
全てのサービスを自動化する事も出来るが、人が生活する上で最低限必要な人員はどうしても必要になる。
人が居ることで人は安心できる。
つまりはストレスの軽減なんだけれどね。
とりあえず移民の第一陣は、友人たちに頼んであるので、今は静観するしかないだろうと考えている。
次に問題なのが、外交かな。
俺達から視たら、各国の情報なんて見放題なんだけど、そんなこと知らない馬鹿な政治家や軍人は、大それた玩具を持ってる世間知らず、くらいにしか考えていないようである。
なんとか我が国に取り入って甘い汁を吸いましょうって奴ばっかりである。
無視ばかりしているわけにも行かないので、順番に表敬訪問(挨拶回り)を行っている。
今回、大型キャンピングカー型のビークルに乗って外遊に出て来た。
大型だけあって快適なのは当たり前で、そこら辺はイービルディークオリティーである。
ドワーフの仕事を甘く見てはいけない。
大型キャンピング・ビークル《ビック・モス》
走行時 全長 12メートル
全高 4メートル
全幅2.5メートル
停泊時 全長 20メートル
全長 5メートル
全幅7.5メートル
動力的基本スペックは、他のビークルとほぼ変わらず、全環境での活動が可能である。
強化されたのは電子戦装備とシールド発生装置。
そしてご覧の通り、停泊時には縮小収納されていた部分が展開され生活環境容積を倍増してストレスを緩和する。
移動できる指令室兼高級マンション的な仕様になっている。
勿論、内装はイービルディーがこだわりまくったので、どっかのお城のようである。
これから向かうのはアフリカなんだが、国連からの大使が同行するという事で、ホワイトハウスに挨拶にいったのだが、大統領からものすっごい羨ましがられた。
しゃーないから一台あげようと言ったら、合衆国の国宝にするといって喜んでいた。
国連ビルの屋上にビックモスを着陸させて、アレックスに挨拶に来ている。
「君達は、いつもビックリさせてくれるね。ようこそ、ルシファー君」
「こんちは、事務総長。早速で悪いんが話が見えねえ! どう言った件でアフリカまで?」
「その辺の詳しい話は、道中ルイス君から聞いてくれたまえ。君にも無関係な事でもないはずだよ」
「ふむ、アフリカで俺に関係があるとしたら、シシリー絡みしか無いんだが……」
「勘がいいじゃないか、その通りさ……」
「うわ~、行くのが嫌になってきた~……、それ、また今度にしませんか?」
「そうも言っていられないのだよ。下手をするとアフリカ大陸に大穴があくかもしれない。これは、君達以外には頼んでも達成できないだろう案件なんだ。頼むよ、この通りだ」 ……事務総長に拝まれた、嫌な予感しかしないんだが……
この後いつもの五人とルイス・キャラウェイ担当官を乗せたビッグ・モスは、イースト川を南下しブルックリン橋をくぐった。
自由の女神を横目にアッパー湾を更に南下、ヴェラザノ=ナローズ・ブリッジをくぐりローワー湾から大西洋へと白波をたてて疾走していた。
そのいかにもシュールな光景に、川沿いには人だかりが出来あがり、周囲の漁船や客船が遠巻きに見ては追いかけてくる。
ゆうゆうと進む大型キャンピングカーは、その後外洋に出るとスピードをぐんと上げ、アッと言う間に視界から消えていくのだった。
この時、ビッグ・モスのスピードは140ノット、分かりやすく言うと時速260Kmほど出ていたのだから当たり前である。