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第23話 建国宣言・独立は大変だ 20210911・加筆修正

22話、23話を入れ替えました。

4731文字 → 5170文字




 現在のリーフは、千葉県犬吠埼の沖あい10キロに着水している。

 アメリカ大統領と竜樹大師の口添えで、日本政府より一時の停泊の許可を取ったのだ。

 最初は、航空自衛隊のスクランブルだの海上自衛隊や海上保安庁の巡視船が押しかけて随分と五月蠅かったが、今は遠巻きにパトロールなどされている。

 まあ、見掛け1キロメートルもの人工物が、突然領海に現れれば驚きもするだろうさ。

 大陸棚でわりと浅いので、中途半端に潜行していると上を通る大型船舶にぶつけられる。

 危険だと判断して(わざ)と見えるように浮いている訳なんだ。


 俺は、一年前に死んでいるから今は日本人じゃない。

 勝手に上陸すると無国籍の密入国って事で捕まるらしい。


 騒動から一夜明けて、俺はアメリカ大統領に呼び出された。

 CIA長官のゲイリーも悔しそうな顔をして大統領の傍に控えていたんだが、グリーンカードって言うらしいんだが、国籍を与えるからアメリカに来ないかっていう話だった。

 簡単に言うと俺たちを自国に引き込もうって事だろう。

 折角だが、キッパリとお断りした。

 だってさヤット好きな事出来る様になったのに、又国だの組織に組み込まれるって止めて欲しいよ、まったく。

 勢いで『俺たちは、独立するから!』って言ったら、支持するから技術協力してくれってニンマリと笑顔で言ってきやがった。

 流石大国のトップだけるよ、ただでは転ばね~な、オイ!


 ゲイリーは、軽い謹慎処分はあったものの、CIA長官を降ろされる事はなかったようだ。


 イリスは、俺とウルズの更なるバージョンアップを受けて、リーフ全体をカバーする管理AIとなった。

 俺を『お父さま』と呼ぶのは相変わらず、なぜか3姉妹の事を『お姉様』と呼んでいる。

 生まれた順番ならリーフが一番先なんだが、彼女達の間にも序列のようなものが存在するらしい。

 みんな気になるだろうイリスの代金だが、『核爆弾になったイリスを安全に処理して命を救ってやったんだ、ありがたく思え』とミスターゴルトマンに捻じ込んでチャラにしてもらった。

 但し、唯にする代わりに、代わりの船を造る時、イリスの姉妹を提供する条件つきではあるんだが、建造はウチで受けてガッポリ設ける予定である。


 セフィロトは、事実上解散消滅した。

 スティーブが『首領ダアト』であった事、あの場に居た者全てを殺害しようとした事、その後消息を絶った事でミスターゴルトマンは、セフィロトの解散を宣言した。

 スティーブの後を追うようにイネスとユリウスが失踪した。

 シシリーは、自国でクーデターが発生してそちらに掛かりっきりである。

 率いていたサイボーグ部隊がほぼ全滅し、軍事独裁政権としての押さえが効かなくなったのが原因らしい。


 これは、けっして俺のせいじゃね~からな…苦情は受付ね~から…。  


 ……絶対に、貴様のせいだろうが! by.シシリー……


 セフィロトが無くなっても流石に金融界のドンとまで言われた男、ミスターゴルトマンも唯では起きなかった。

 俺の技術は金になるって事で独占契約しないかと来たもんだ。

 おまえもアメリカと一緒かい……人間、金と地位がからむと意地汚くなるのは、何処も一緒だね~。

 障りが出ない程度にお付き合いすると返事をしておいた。


 ジュリアは、リーフが気に入ったのか事件の翌日から住み着いてしまった。

 どうして? 謎だ。

 今は、自分のビークル乗り回して世界中を飛びまわっているようなんだが、ちゃんと税関とか通ってるのか心配だ。


 ロバートは、リーフとのホットラインを使ってイービルディーと何やら情報交換をしている。

 ドワーフの古代技術や魔法技術に興味がある様で、ロバートの材料科学者としての血が騒ぐらしい。


 竜樹大師は、日本政府や政財界でなにやら暗躍している様子だ。

 詳細はまだ分からないが、資源の無い日本がこのさき生き残る為には『海底資源の開発と宇宙開発しかない!』だからリーフの存在を公認しようと説得して仲間を増やす参段らしい。元気な爺さんだ。


 一ヶ月ほどがたって、損耗していたドロイド達の補充と修理も終わった。

 竜樹大師の口利きでメタンハイドレートの採掘を行い、日本政府に格安で引き取って貰う事になった。


 現在、レアメタルやレアアース等の開発協力も同時に行うこととなり、リーフの直ぐ横に輸送基地用プラットホームとして500メートル四方の浮島を建設している。

 ここでは既に日本の一般の人も働いていて、茨城県の鹿島港の臨海工業地帯と千葉の京葉臨海工業地帯へ向けてフェリーが就航する予定である。


 そして、人と情報が行き交う様になると、金の匂いを嗅ぎ付けて色々な輩がやって来る。

 まず、各国のスパイ。


 月食の夜の事は、アメリカも絡んでいたので公然の秘密となってはいる。

 しかし、300mもある豪華客船を成層圏まで持ち上げて、キレイに吹っ飛ばしたのを各国の観測機関や天文家に観測されていた。

 色々なゴシップが飛び交う中、確度の高い観測情報から日本近海にスパイ船や偽装漁船などが集まってきている。

 当然リーフが目に付く、アレは何だ? 調べろ! と成る訳である。

 しかし、海上自衛隊と海上保安庁の哨戒艇が居て警戒は厳重。

 これは、何かあるな! と誰でも想像が付く訳で……。

 次々とマスコミのヘリが頭の上をブンブンと飛び回り……ウルセ~!

 これ、どうにかなんね~の? ウルズ~。


「瑛様、マスコミのヘリなんですが、こちらに乗り移ろうとしているツワモノが居ます。如何致しますか?」


「ここが私有施設である事は、政府から通達してあるよな……、不法侵入者として海上保安庁に突き出すしかないだろうな。哨戒艇に連絡して、怪我しないように拘束してくれ。間違っても内部に侵入される事は無いと思うけど、警備システムに引っかかってナマスにされてからでは遅いからな」


「了解いたしました。イリス、例のシステムを試しましょう」


『はい、お姉様。メイズトラップ発動します』


「……なにげに面白そうなワードが聞こえたな……、メイズトラップって何?」


『最近、侵入を企てる者が多数発生しておりますので、対策としてリーフ内に誘導式の広大な迷路を発生させるシステムです』


「ホホォ~」


『哨戒艇の到着に合わせて、発着用デッキに誘導します。時間一杯終わりの無い迷路を楽しんで頂きましょう』


「おまえら、相変わらずいい性格してるよ」


『私が監視していますので、主要施設には絶対侵入出来ませんよ。行動を妨害して施設を破壊されるより、人類行動学にそって誘導してあげた方が、怪我もしませんし損害も少ないと考えました。私も遊べますしね……』


「!?」 ……イリスが人間らしい思考を始めた、これから先が楽しみだ……


 それにしても何か対策立てないと(わずら)わしいだけだよな~、いっそ内部を公開するか……。




 ◆




 そんな訳で、正式に建国宣言なんてものを行った。



 国名、帝政ルシファー


 理念 覚悟ある自由、勇親愛智、金星開拓


 統治者 皇帝ルシファー《東雲 瑛》 一応おれ死んでるからね! 


 技術省 ウルズ


 保健省 ベルザンディ


 戦武省 スクルド


 工匠責任AI イービルディー


 リーフ管理AI イリス 


 宇宙戦艦AI ヒルド


 国民は、現在一人 ジュリア・エリザベス



 当面は、リーフが国土で、俺が統治者。

 統治能力は、……どうにかなるだろう。

 アメリカと日本の梃入れがあって完全中立の国際組織扱いに落ち着きそうではある。

 しかし、EU・中国・ロシアなどは面白くないらしい。

 しつこくスパイを送ってきていた国の筆頭である。


 現在、俺たちは建国の承認を受ける為に国際連合の本部ビルに来ている。

 建国を宣言するだけでもいいんだが、小なりとはいえ一応国連に加盟しているという看板が欲しかったのである。

 そして、マスコミの人波に囲まれている。

 こいつら、どっから湧いて来たんだ。


 

「今話題の中心人物が、やっと衆目の前に出てくるって言うんだもの、こうなるのも当たり前よ~」


「でっ、なんでお前(ジュリア)がここに居るんだ? それも着飾って……宣伝したのはお前だろ」


「なんてったって私は、国民第一号だし、記念すべきこの日に一緒に居るのは必然でしょ」


 ……腕を絡ませてくるジュリアの後ろを ついて来る3姉妹の小声での会話、チャンと聞こえているからな……


「……朴念仁もここまで来れば犯罪です。如何してくれましょう……」


「……今夜は、5Pですね! ……楽しみです……」


「……搾り取っちゃうぞ……」


 ……なんでやねん?……




 はあ~、何で国の代表っていうのは、ああも俗物ばっかなのかね~。

 確かに、見た目が二十歳にも成らない若造が、皇帝なんぞとほざいて現在のメンバーは五人、馬鹿にしてんのか? って状況であることは分かるが、言うに事欠いて『保護してやるから奉仕しろ』だと、……寝言は寝てから言えよな。 


 俺がプルプルしていて切れそうなのが分かったのか、アメリカと日本の外務事務次官が蒼い顔で逃げ出す準備を始めているが、そこに国連事務総長のアレックス・ジョーンズが待ったをかけた。


「各国の意見は、概ね分かりました。では、現在帝政ルシファーが保有する武力に関するデータが有りますのでご覧下さい」


 シーーン! ……ちなみに控えめにしたヒルドの情報を開示した……


「このデータが全てでは無いと思いますが、アメリカと日本より確度の高いデータで有るとの保証が得られています。誹謗中傷が元で戦争をしたいと言うのなら止めませんが、勝てない喧嘩はする物ではありませんよ。ルシファー君も上空から照準しているビーム砲をなんとかしなさい。そんなに気が短い様では、国際社会の仲間に入ろうなんて百年早いって言われてしまいますよ」


「チッ、気付いてやがったか……」


 国連ビルの正面に、光学迷彩で潜んでいた宇宙戦艦ヒルドがその姿を現した。

 マスコミや野次馬のほか国連ビルの職員などが、忽然と空中に現れたヒルドを指さして騒いでいる。

 その一部始終を議場の大型モニターで見ていた各国代表は、ここに来て初めて、自分達が相手にしてる青年の正体に気がついたようだ。

 蒼くなる者、腰を抜かす者、逆ギレして喚き出す者などなど……、やがて静まりかえり事務総長と俺の様子をうかがっている事がわかる。


「帝政ルシファーを独立国として承認するにあたり、各国には不満や意見もあると思います。しかしその技術力と武力だけを見ても国際連合としては、協力関係を結んだ上で世界平和に貢献してくれることを望みます。当面は準独立都市国家として承認し、国際連合の派遣活動などに協力して頂きたいと思っています。ルシファー君に一つ聞きたいのですがよいですか? 君は、個人でこれだけの力を持ってしまいましたが、世界征服を考えたことは有りませんか? それが出来ないとは言わせませんよ」


「俺は、生来の面倒くさがりだからな、世界征服なんて一番一面倒臭い事は、頼まれたってやらね~よ。祭りや遊ぶのは大好きだから年中休みとか経験はしてみて~けど、それも実際退屈で死ねそうだよな。俺はこれでも、自分を研究者の端くれだと思っているから、戦争なんて無駄なことに時間も資源も労力も使うつもりはね~よ。大体そんな無駄なことばっかりしてるから、未だに人類は地球の上にへばり付いて、限られた利権を取り合うようなみみっちい性分が無くなんねーんだ。宇宙(おら)に行こうぜ! 俺は金星に国を創るって決めてるんだ。だからここに来たのは、五月蠅いハエを追っ払うのと一緒に宇宙に出る仲間を捜す為なんだよ。まっ俺は優しいからさ、仲間になれば少しくらいは助けてやってもいいんだぜ」


「ふむっ、ルシファー君の考えは分かった。多分に傲慢が溢れた様に聞こえる部分は有るが君はまだ若い……。しかし、君の主張している事には大いに検討されるべき説得力がある。確かに現在の世界は無駄な戦争や民族紛争に人や資源を浪費しているし、疲弊した国は守るべき国民を飢えさせている。そして、それが更なる戦争の火種と成っているのが実情だ。今のこの世界の矛盾が、少しでも改善されるように君の力を是非とも借りたい。我々に協力してはくれるかね?」


「ああ、いいぜ」


「うむ! では決をとりたいと思います。帝政ルシファーを、独立国家として国際連合への加盟を承認するにあたって決をとります。……賛成多数を持ってこの議案は可決されました。おめでとう」


「ありがとう、これからよろしくな!」




 これらの遣り取りは、世界中に放送され、もの凄い視聴率を叩き出した……らしい。

 たった5人の国家が建国し、国連に認められたのだ。

 これが、話題にならないはずがない。

 そして、世界は新たな局面へ動き出す。


 帝政ルシファーとは?

 皇帝の為人は?

 連れている美人は何者だ?

 どこにあるの?

 あの5人の関係は?

 etc、etc。


 ……マスコミが以前に倍増して五月蠅くなった……

 ……こんなハズではなかったのに、どうしてこうなった……

 ……そしてその晩、瑛は浮かれた4人に絞り尽くされたのだった……。






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