第21話 決戦・後編…IT'S SHOW TIME! 20210907・加筆修正
3346文字 → 3614文字
「ミサイル多数接近。艦砲の発射も確認しました。斥力場展開・重力場シールド120%!」
……ドドドド~~ン……ドッドッドン……ドカ~ン………
「全弾、シールドに命中。損傷はありません」
「敵勢力。戦闘ヘリ4機、サイボーグ兵800名がジェットパックで向かってきます」
「派手に行くよヒルド! 対空高エネルギーレーザー・アクティブ、片っ端から打ち落として……」
『了解! 対空レーザー・アクティブ、ポチッとな!』
「っ! ポチッ♪」
「続いて荷電粒子砲・アクティブ、魚雷艇を消し飛ばして……」
『了解。荷電粒子砲・アクティブ、ファイアー!』
……ドッドッドッドッドッドッドッ~ン………
残っていた7隻の魚雷艇は、水柱と同時に蒸発して消えた……。
「どうだ、少しは気が済んだか? スクルド」
「うん、スカッとした~~♪」
静観を決め込んでいた第七艦隊では、血の気の引いた提督や艦橋要員によって無言の伝言ゲームのような異様な雰囲気が流れていた。
一方、豪華客船イリスの艦橋では、目の前で起きた事に唖然とたたずむ面々の姿があった。
『一瞬で航空戦力の全滅と残存ガンシップの消滅を確認しました、高エネルギーレーザーとビーム砲によるものと思われます』
「何なんだね? あれは……、こんな事は聞いていないぞ……」
「アラ~~、これはお手上げネ~♪」
「わっ私の部隊が……一瞬で……シノノメ~!!」
『巨大円盤、ダゴンの方に向かう様です』
「ホッ……」
「……」 ……レオンがホッとしとるし……
宇宙戦艦ヒルドの艦橋では……。
「リーフ直下でエーテル圧の急激な上昇を確認しました。ダゴン及びハイドラの魔力攻撃と思われます。竜巻き発生します」
「リーフ直下に急激な上昇気流の発生を確認しました。重力場シールド正常に作動中」
「急激な上昇気流による雷雲の発生を確認、落雷来ます」
……ドドーン…ガラガラガラ~……ドドド~ン…ガラガラ……ピシャ~ン……
「色々やってくるね~、煩わしいからそろそろ黙らせよう」
「ヒルド。艦首アブサード・アクティブ、目標ダゴンとハイドラ、貫け!」
『艦首アブサード・アクティブ、シュート!』
……ビシューン………ズビッーーシューン……ドッドォ~ン………
「命中シマシタ。標的は沈降シテイキマス……」
「生死は不明ですが、撃退出来たと思われます」
「一応引き続き監視しておいてくれ。それじゃ話を付けに行くとするか」
深きものどもの姿は消えているようだ、宇宙戦艦ヒルドが着水して豪華客船イリスへ接近していく。
今、その場に居る者は息を潜め、宇宙戦艦ヒルドの動向を注視していた。
豪華客船イリスの左舷を併走する様に接近し、宇宙戦艦ヒルドが寄り添い接舷する。
そして、宇宙戦艦ヒルドから光る物体が4つ、空中を横切りイリスに乗り移った。
其の姿は、白き12枚の翼を持った神、着き従うのは6枚の翼をはためかせた3人の女神だった。
「お~い、こっちから出向いたんだ、顔ぐらい見せろよな」
「久し振りだね東雲君、生き返ったと云うのは本当らしい……」
「おかげ様でね一回三途の川を渡って来たよ。生まれ変わったと言った方が正しいかもしれないがな……」
「何なんだお前の姿は? 神を冒涜するにも程がある!」
「もともと親戚だったらしいから仕方がないさ、だがお前の言ってる神ってのは、どっちのことだ?」
「神を親戚とほざくか、傲慢も甚だしい……」
「……」(おい、そちらから東雲を狙えるな? 頭を狙え! 確実に仕留めろよ)
一瞬、瑛が虫を払うように右手を振り、何かを掴んだような仕草をした。
……ドッキューーン………
その時、轟いた銃声。
後から来た銃声からするとかなりの遠距離からの狙撃の様である。
後ろに控えていたスクルドが、トンっと飛び上がり腰の剣を無造作に振るった。
……シュン…………ドドドーン…ゴゴゴッ……
2隻の揚陸艦の内、狙撃したと見られる方が真っ二つにされて沈没してゆく。
瑛は、素手で捕まえたライフル弾を甲板に落したのだった。
「ずいぶんな御挨拶だな~」
「こっ、この化け物め!」
「あ~、これでも神の端くれらしいから、確かに人では無いな~しかし化け物は酷いな~」
「それで東雲君、君は何がしたいんだね?」
「警告に来たのさ。俺にかかわるな! ちょっかいを出してくれば今回のように手痛いしっぺ返しがある事を覚悟するんだな。あと娘を返してもらおうと思う、掛かってる金は後で振り込むから勘弁してくれよ」
「なんだと? そんな勝手な事が許せるものか、力ずくでも排除するぞ!」
「あ~、ゲイリーそれ無理だから、第七艦隊もう帰り始めちゃってるし……」
「ナッ、そんな筈は……。何故だ、まだ撤退命令は出して居ないぞ!」
「たぶんお前より上の命令じゃないのかな~、アハハハ♪」
「ナニ? ……大統領命令だと? シノノメ~貴様は、いったい何をしたのだ?」
「いや~この間、散歩のついでにホワイトハウスにコーヒー飲みに寄っただけさ。チャンと土産も持って行ったからな、脅したわけじゃネ~し……」
……アメリカに行った時の事であるが、半分脅迫とも取れる行動だろに……
「ッ! 覚えておけよ、シノノメ~……」
……逃げるようにゲイリーの立体映像が掻き消えた。
バーチャル接続を切ったらしい。
「結構オモシロかったのに~、もうお終いかしら~?」
「この様なことを、我が神ダアト様が赦す筈がない……」
「ユリウス。アンタ、奴が何者か解かっててそんな事を言ってるんだったら身の破滅だぞ。それにいい加減、そろそろ出てきたらどうなんだ? ダアト様はよ~」
「東雲君、君はダアト様を知っているのかね?」
「ま~、知ってると言えば知ってるし、知らないと言えば知らね~な~……なあ、スティーブ、いやダアト様よ~」
「フフフ……今回の茶番もここまでかい、しょうがないね~。みんなには消えてもらおう、また新しくやり直すさ♪」
「やっぱりお前がダアトだったのか! どんなに調べても、お前に関する情報が一つも無かったんだ……」
「それはそれは、ご苦労を掛けてしまったようだね~。次があったらそのとき労って上げるとしよう。では去らばだ、東雲瑛いやロキよ」
スティーブの立体映像が掻き消えたのと同時に、豪華客船イリスに振動が響いた。
『ただいま私の動力である2器の核融合炉が暴走を開始いたしました。メルトダウンまで15分です』
「何だと、15分では安全圏まで逃げることも出来んぞ」
「ウヮハハハッ♪ みんな消し飛んでしまえば良いのだ……」
……絶笑とともに、ユリウスの立体映像も掻き消えた。
「あいつ、最低~。何であんなのが法王やってんの?」
「クッ! メルトダウンを止めてる時間はね~な。ミスターゴルトマン、他のメンバーと乗組員をあっちの船に移せ! イリスは、俺達が成層圏まで持ち上げる……」
「そんなことが可能なのか? 分かった全員生き残りは、第二揚陸艦に移乗せよ。シシリーお前もだ行くぞ」
「レオン……、分かりました。シノノメ、貴様覚えて居ろよ!」
「まっ、覚えてたらな。イリス、お前の頭脳体を切り離すぞ。しばらく眠っていてくれ」
『了解しました。後をお願いいたします、お父様……』
イリスの沈黙と共に、竜樹大師、ロバート、ジュリアの立体映像も掻き消えた。
瑛は、艦橋に乗り込むと床にある鍵付きの扉を引きちぎった。
そこにあったのはタッチパネル式の暗証入力パネル、手早くコードを入力すると床がせり上がり、3メートルほどの仄かに光る立方体が出現した。
これがイリスの頭脳体である。
続けてパネルを操作すると、床の爆発ボルトが起動して全てが切り離された。
そして、同時に艦橋全面も吹き飛んだ。
煙の中、軽々とイリスの頭脳体を片手に持った瑛が、甲板に飛び出してくるのだった。
「よし、イリスの頭脳体は回収した。ヒルド、避難が完了次第イリスを抱えて成層圏外まで上がってくれ」
『了解シマシタ』
浮上したヒルドは、イリスだった船体の上に来ると300mを超える船体と一緒に宙に浮き上がった。
レオンのほか避難した人たちは、空に浮き上がった200mの戦艦と釣り上げられてゆく300mの船体を見上げて、ポカーンと口を開けていた。
「メルトダウンまで後3分、重力場推進最大。一気に大気圏抜けるよ!」
「成層圏を抜けました。まもなく安全圏です、船体の切り離しを……」
『切リ離シマス』
「あんな危ないもんを捨てる訳に行かないな、ここで消しちまおう。ヒルド、艦首アブサード・アクティブ、最大出力で撃て」
『艦首アブサード・アクティブ、シュート』
……パァ~~~……と光ってイリスの船体は消滅した。
「はぁ~~、やっと終わったのかな」
「いいえ、これから始まるんですよ、全てが……」
「そうだよ~♪」
「さあ、これから忙しくなりますよ。がんばって下さいね、瑛さま」
「ああ、そうだな」
地球の夜の面から飛び出した事で、暗かった地球に朝日が当たり、青い地球が其の眼下に広がってゆく。
夢だった宇宙に一歩を踏み出した瑛たちの顔は、朝日のように輝いていた。
第一章 完