第11話 友とのコンタクト 20210905・加筆修正
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ロバート周辺の通信は監視されているだろう。
メールを送ったとしても、不審なメールが届けば疑われるだろう。
直接届くものにアナグラムを仕込むのも一つの手かな……、イリスが本気になれば時間稼ぎにもならないだろうな、こりゃ八方塞がりか……。
「ロバートに繋ぎを取りたいんだが何か良い方法は無いか? ウルズはどう思う?」
「そうですね……、伝書鳩なんてどうですか? 中身はメカノイドですが通信筒をやり取りする形にすれば自然に情報のやりとりが出来ると思います。最初にこちらを信用させるための合言葉か相手にしか分からない符丁でも在れば完璧だと思います」
「! その手が在ったか、イービルディ~~~」
「ダンナ、どうしたんだい? そんなに慌ててよ~」
「通信用の伝書鳩型ロボットを作ってくれ。仕様データを送っておくから取り合えず10機、ついでだフクロウ型やワシ型も作っといてくれるとありがたい」
動物タイプのプローブなら斥候や偵察にも使えそうだ。
Gは性能は優秀だが、あのビジュアルがやばい……直に掴めるウルズは偉大だ。
序だ、色々なタイプを試作しておくことにしようか。
◆
……米国マサチューセッツ州ケンブリッジ……
大学の研究室で眉間にしわを作り意気消沈している男がいた。
セフィロトの『ホド』こと、ロバート・ブルーサイズである。
30歳でMITの教授にまで成った逸材であり、東雲 瑛の親友だ。
いや、親友であると自負していたが自身の不甲斐なさに落ち込むばかりだった。
……コン、コン、コン……
……コン、コン、コン……
「ンッ!?」
音のする窓に、一羽の鳩が止まってガラスを突いている。
……コン、コン、コン……
「君は、中に入りたいのかな?」
ロバートは窓に歩み寄り、まったく逃げる様子の無い鳩を部屋に招きいれた。
鳩は、戸惑うことなく一直線にロバートの机の上に舞い降り、ここが目的地だとばかりに座り込んでからロバートの方を一度うかがって、小さな筒を落した。
そして鳩は、舞い上がり入ってきた窓から飛び去ったのだった。
今の鳩は何だったのか、不思議な事があるものだ……。
首を捻りながら無言で机に戻り、鳩の落して言った筒を摘まみあげるロバート。
「ンッ!」
その筒には、大学時代に瑛がよく使っていた台詞が彫られていた。
『It's Showtime!!』
急いで筒の中を確認すると……小さなメモに……。
『監視の可能性あり。あんまり落ち込むなよ、俺はしぶとく生きてるぞ! 独立したPCで見るべし』
メモの端には、へばり付く様にマイクロチップのコア(3mm角)が貼り付いていた。
ロバートは、急ぎ足で研究用のシールドブースに駆け込むと外界との情報を全てシャットアウトした。
そこは、一研究者として必須の施設であり、生体工学者としてサイバネティック用擬体の開発なども行うロバートには、こういったマイクロチップの扱いもなれたものである。
そして分析用PC(瑛・謹製)の画面に現れたのは……メディカルポッドに浮かぶ現在の瑛の姿だった。
『ロバート、久し振りだな。お前が不景気な面してんのが想像できて笑えんぞ。俺もこんな姿に成っちまったが何とかしぶとく生きてるから心配すんなよ~。でっ、本題なんだが……カクカクシカジカ……』
……生きていてくれたか、瑛!……それにしても、随分と縮んだな……
瑛の元気な姿に嬉しさを噛み締める暇も無く、その驚異的な情報量のマイクロチップには、瑛の近況とこれまでに調べ上げられたセフィロトの裏の情報が入っており、ロバートを驚嘆させるのだった。